米メタ、無議決権のClass C株を2027年導入へ AI投資の資金調達と創業者支配を両立

Photo by Mariia Berezovsky on Unsplash[写真拡大]
Meta Platformsは2026年10月21日、第3四半期決算とともに、議決権のないClass C普通株の新設計画を発表した。関連する定款変更は2027年1月19日に発効する予定で、既存のClass A株とClass B株の保有者に、保有1株につきClass C株1株を交付する。
新株式は、AIインフラ投資の資金調達、従業員への株式報酬、買収などに利用する方針だ。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)の議決権支配を維持しながら、株式による資金調達の選択肢を増やす制度となる。
■株式配当と追加発行で異なる影響
Metaの取締役会は10月19日に資本再編を承認し、翌20日には必要な議決権を持つ株主が書面同意で承認した。Class C株の株式配当は、定款変更の発効を条件に、その後5営業日以内に実施する取り決めとなっている。基準日と支払日は取締役会が別途決定する。
現在の上場株式であるClass A株には1株につき1票、主としてザッカーバーグ氏が保有するClass B株には1株につき10票の議決権がある。Class C株は原則として議決権を持たず、発行後は3種類の普通株が併存する。Metaは株式配当による発行時に、Class C株をNasdaqへ上場させる計画だ。
既存株主全員に同じ比率でClass C株を配れば、普通株の総数はおよそ2倍になる。Metaは、その後のClass A株の市場価格に2対1の株式分割に相当する調整が生じると説明している。株主は従来株と新株を合わせて保有し、配当前と同じ割合の経済的持ち分を維持する。
その後、資金調達や株式報酬などのために追加発行すれば、既存株主の持ち分比率は低下する。投資家にとっては、発行によって得られる資金や事業上の利益が、1株当たりの利益や価値をどれだけ高めるかが判断材料になる。株式調達には、借入金のような満期や約定利息がない一方、将来の利益を分け合う株数が増えるという特徴がある。
新定款が定めるClass C株の発行可能株式数は1000億株である。発行には適用法令やNasdaqの規則が関わり、公募以外で一定の価格を下回る大規模な発行や株式報酬制度の設定・重要な変更などには、条件に応じて株主承認が必要となる。
■創業者の支配と売却制限
MetaのSEC提出資料によると、ザッカーバーグ氏は2026年10月1日時点で、経済的持ち分の約13.4%に対して議決権の約60.6%を保有していた。議決権比率は経済的持ち分比率の約4.5倍に当たる。Class C株の配当は各株主の議決権比率を変えず、同氏が株主総会での意思決定を支配する構造が続く。
資本再編は、議決権の過半数を持つ株主の書面同意によって承認された。Class A株主の過半数による賛成を成立条件とする仕組みは採用されていない。このため、一般株主の意向が資本再編の可否を左右する余地は限られていた。
同社とザッカーバーグ氏が10月20日に締結したFounder Alignment Agreementは、同氏と関係保有者が最初の配当で受け取るClass C株の80%に売却制限を設ける。対象株の売却時には、契約で算定される比率に応じてClass A株またはClass B株を売却するか、Class B株をClass A株へ転換する必要がある。先行する売却や転換で蓄積したクレジットを充当する仕組みもある。
同氏が常勤の経営幹部または取締役会の執行会長として勤務するなどの条件を満たした四半期ごとに、当初受領したClass C株全体の2.5%に相当する株数が制限から解放される。解除は配当後最初の完全な暦四半期の末から始まり、32回の適格四半期で残る対象株の制限が解ける。継続して条件を満たせば、およそ8年をかけた解除となる。
Metaは、この契約を創業者の継続的な経営関与と経済的持ち分の維持を促す仕組みと位置付ける。一方、会社によるClass C株の追加発行は別の資本政策であり、一般株主には、調達額、発行条件、資金使途を追うことが重要になる。
■増収の一方、四半期のフリーキャッシュフローは赤字
Metaが10月21日に発表した2026年第3四半期の売上高は、前年同期比26%増の646億ドル(約10兆1000億円)だった。AP通信によると、アナリスト予想の633億4000万ドル(約9兆9400億円)を上回った。広告収入は26%増の630億6000万ドル(約9兆9000億円)で、広告表示回数は10%、広告単価は14%それぞれ増加した。
費用・経費は68%増の516億1000万ドル(約8兆1000億円)となった。若年層の精神的健康とソーシャルメディアを巡る州司法長官らとの和解に関連し、98億9000万ドル(約1兆5500億円)を計上したことが大きく影響した。営業利益は37%減の129億9000万ドル(約2兆400億円)、営業利益率は前年同期の40%から20%へ低下した。
純利益は264%増の98億6000万ドル(約1兆5500億円)、希薄化後1株利益は3.83ドルだった。前年同期には159億3000万ドル(約2兆5000億円)の一時的な税金費用が利益を押し下げており、増益率にはその反動が含まれる。Metaによると、今回の和解関連費用とその税効果を除いた1株利益は7.40ドルとなる。
営業キャッシュフローは327億9000万ドル(約5兆1500億円)だったのに対し、ファイナンスリースの元本返済を含む設備投資は349億1000万ドル(約5兆4800億円)に達した。設備投資は第2四半期の310億8000万ドル(約4兆8800億円)、前年同期の193億7000万ドル(約3兆400億円)から増加した。両者を差し引く同社定義のフリーキャッシュフローは、前年同期の106億3000万ドル(約1兆6700億円)の黒字から21億2000万ドル(約3330億円)の赤字へ転じ、127億5000万ドル(約2兆円)悪化した。
2026年1〜9月累計のフリーキャッシュフローは110億4900万ドル(約1兆7300億円)の黒字だった。9月末の現金、現金同等物、有価証券は824億5000万ドル(約12兆9000億円)で、6月末の902億6000万ドル(約14兆2000億円)から減少した。投資拡大によって、事業が生む現金と設備投資のバランスが変化している。
■借入と株式を組み合わせる資金調達
Metaは第2四半期に社債発行で249億1000万ドル(約3兆9100億円)の手取り資金を調達し、6月末の長期債務は836億6000万ドル(約13兆1000億円)となっていた。借入による調達は既存株主の持ち分比率を維持できる一方、利払いと返済義務を伴う。Class C株は、こうした債務調達に加えて活用できる手段となる。
10月26日には、AIインフラとパーソナル超知能への投資を支える具体的な株式調達計画も発表した。Class A株225億ドル(約3兆5300億円)分を先渡し売却契約に関連して公募するほか、強制転換型優先株を裏付けとする預託株式2億5000万株の公募を開始する計画だ。発表時点では、いずれも募集条件の確定と実行を控えている。
さらに、Class C株の取引開始後に約600億ドル規模の市場売却プログラムを設ける意向を示した。市場売却は、市場価格に応じて随時株式を売却する方式である。同社は開始を2027年第1四半期以降と見込み、発表時点で契約は未締結、実施時期や条件などは未確定としている。
ロイター通信によると、決算翌日の10月22日にはMeta株が取引中に7%超下落した。同通信は、その時点の下落幅が続けば時価総額が約1140億ドル減ると報じた。同日の5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は114.79ベーシスポイントの過去最高水準で取引され、設備投資と資金調達への関心は株式・信用市場の双方に広がった。
MetaはS&P 500とNasdaq-100の構成銘柄でもある。これらの指数に連動するファンドを通じて保有する投資家にも、株価や1株当たり価値の変化が運用成績として及ぶ。米国の401(k)やIRAなどの退職資産口座で該当ファンドを保有する人も、その影響を間接的に受ける。
■ガバナンス研究とGoogleの先例
議決権と経済的持ち分の隔たりは、複数種類株式を巡る長年の論点である。創業者が長期的な投資を続けやすくなる一方、外部株主が取締役の選任や資本配分に及ぼせる影響は小さくなる。Metaの制度も、AIへの大規模投資と創業者主導の経営を併せて支える設計だ。
ISSとIRRC Instituteによる2012年の研究は、2012年8月末までの10年間を対象に、複数種類株式による支配企業の平均総株主リターンを7.52%、単一種類株式による支配企業を14.26%、非支配企業を9.76%と報告した。比較対象には株式構造に加えて、支配株主の有無という違いもある。
同研究は、支配企業の内部統制上の重要な不備なども調べた。IRRC Instituteの2016年の分析では、複数種類株式による支配企業で取締役会の独立性が低く、CEO報酬が高い傾向も示された。ジョン・ルコムニク氏は、こうした構造を業績より経営側の「居心地の良さ」を重視するものと評している。
資本配分を考える理論的な背景には、マイケル・ジェンセン氏が1986年に示したフリーキャッシュフローのエージェンシー問題がある。経営者と株主の利害が異なると、余剰資金が収益性の低い投資にも向かい得るという議論だ。Metaについても、調達手段の拡大とともに、投資計画や成果の開示が株主の判断を支える。
Googleは2012年に無議決権のClass C株を計画し、2014年4月に株式配当を実施した。計画に対する株主訴訟は発行前の2013年に和解し、その条件として発行後1年間のClass A株とClass C株の価格差に応じた調整措置が設けられた。Googleは2015年に5億2200万ドル(約820億円)相当の調整支払いを行っており、異なる議決権を持つ株式の市場評価を考える先例となる。
■業界全体で膨らむ投資と信用市場の関心
大規模なAI投資はMetaに限らない。ベンチャーキャピタルのCRVが2026年9月に公表した集計では、Amazon、Microsoft、Alphabet、Metaの2026年の設備投資計画は合計約7250億ドルで、2025年の約4100億ドルから約77%増える規模となっていた。各社の設備投資には、AI以外の事業向け支出も含まれる。
Moody’s Ratingsは、米国の主要6社の2026年の設備投資が7850億ドル(約123兆円)に近づくと推計している。対象はMicrosoft、AmazonのAWS、Alphabet、Meta、Oracle、CoreWeaveで、AWS分は同社の推計値だ。対象企業や会計上の集計範囲によって、業界全体の投資額にも違いが生じる。
Yahoo Financeが2026年7月に報じたGoldman Sachsの分析は、2027年の主要ハイパースケーラーの設備投資を約1兆1400億ドルと見込んだ。Alphabetの2026年第2四半期決算でも、設備投資の増加によって四半期のフリーキャッシュフローが赤字となった。事業収入に加えて、債券、リース、株式などを組み合わせる資金調達が重要になっている。
J.P. Morgan Asset Managementは2026年7月、主要5社の年間社債発行額について2500億ドル(約39兆3000億円)という予測が上方修正される見通しを示した。その後、Yahoo Financeが9月に伝えた同行のマイケル・センバレスト氏の推計では、主要5社とNvidiaの資金調達は、データセンターのリース義務を支える特別目的事業体を含め、約3200億ドルに達していた。
信用市場では、資金需要の大きい事業者への警戒も表れている。ロイター通信は10月16日、CoreWeaveの一部社債の利回りが約15〜16%、債務不履行に備えるCDSのスプレッドが約1200ベーシスポイントになったと報じた。Moody’sも、AIインフラの資金調達ではプライベートクレジットやプロジェクトファイナンスなど、多様な資金源の利用が広がっていると説明している。
■和解費用と継続する訴訟
第3四半期に計上した98億9000万ドル(約1兆5500億円)の費用は、2026年8月に合意した若年層の精神的健康とソーシャルメディアを巡る和解に関連する。Metaの開示によると、合意相手は州、準州、コロンビア特別区の計52人の司法長官で、支払総額は最大約185億9000万ドルとなる。ロイター通信によると、Metaは不正行為を認めずに和解した。
和解には10年間の分割払いと、同業他社による保護措置の導入や支払いなどを条件とする部分が含まれる。Metaは9月末時点で条件が満たされていない約53億ドルを未計上としている。費用の認識と実際の現金支払いには、それぞれ異なる時期と条件がある。
別件では、ニューメキシコ州の裁判所が10月21日、Metaに250億ドル(約3兆9300億円)の民事制裁金を科した。AP通信によると、Cambridge Analyticaによるデータ取得を背景に、Facebookの個人情報の扱いに関する説明が利用者を欺いたかが争われた。MetaはSEC提出資料で、この件に関連する損失見込額を計上しており、控訴する意向を示している。
同社の開示では、若年層に関する訴訟の公判が2026年10月末と2027年にも予定されている。訴訟対応や和解の支払いは、インフラ投資と並ぶ資金需要となる。支払時期や最終的な負担額は、各案件の条件と司法手続きによって変わる。
■広告事業とMuse、AIグラスの展開
投資を支える広告事業では、利用者規模も拡大している。Metaの主要アプリ群の1日当たり利用者数は、2026年9月平均で前年同月比3%増の36億4000万人だった。同社は第2四半期の決算説明会で、900万の中小企業が少なくとも一つのAI広告クリエイティブツールを利用していると説明していた。
消費者向けAIエージェントのMuseは8月に提供を開始した。ザッカーバーグ氏は第3四半期の決算説明会で、米国とカナダで最初の約6週間に1000万人超がアカウントを設定したと説明した。また、今後1年間で計算処理のコスト効率を10倍超に高め、収益規模の拡大に伴って採算を確保することを目指すと述べた。
基盤モデルのMuse Sparkは4月に発表され、その後も更新が続いている。Metaは10月12日、AIエージェント向けモデルのMuse WonderとMuse Wonder Fullを発表した。日本語の公式案内では、Muse WonderはMeta Model APIとMuse Code、Muse Wonder FullはMuse Codeのサブスクリプション登録者向けに提供するとしている。
AIグラスも製品展開が進む。Metaは9月のConnect 2026でRay-Ban Metaの新世代モデルなどを発表し、日本ではソフトバンクが9月25日にRay-Ban Meta(Gen 3)の取り扱いを開始した。Metaの日本語発表によると、Ray-Ban Meta Audioの日本展開は2027年を予定し、Museとのグラス連携は当面、米国を対象としている。
拡張現実・仮想現実関連のReality Labsでは営業損失が続いている。Metaは、主にAIなどの優先領域へ投資を振り向けることで、2027年の同部門の年間営業損失を約150億ドルに縮小する見通しを示した。消費者向けAIの成長と、機器・サービスを含む事業全体の採算改善を並行して進める構えだ。
■2027年に向け、投資額と1株当たりの成果が焦点
Metaは2026年第4四半期の売上高を730億〜760億ドル(約11兆5000億~11兆9000億円)と予想している。AP通信が伝えたアナリスト予想は736億5000万ドル(約11兆6000億円)だった。2026年通年の設備投資見通しは1350億〜1450億ドル(約21兆2000億~22兆8000億円)に絞り込み、従来の1300億〜1450億ドル(約20兆4000億~22兆8000億円)から下限を引き上げた。
年初の設備投資見通しは1150億〜1350億ドル(約18兆1000億~21兆2000億円)で、その後、第1四半期決算で1250億〜1450億ドル(約19兆6000億~22兆8000億円)、第2四半期決算で1300億〜1450億ドル(約20兆4000億~22兆8000億円)へ見直してきた。2027年については予算と設備能力の計画を策定中とし、既存事業と新たなAI事業への積極投資を続ける方針を示している。
ザッカーバーグ氏は8月10日公表の論考で、個人が自分の目標や価値観に沿って使うAIと、オープンソースモデルの普及を重視した。同時に、モデル公開の安全基準と、その基準を満たすかの判断について、独立取締役による監督を取り入れる方針も述べた。AI製品の普及と安全性の管理が、大規模投資を進める戦略の両輪となる。
Class C株の導入は、こうした戦略を支える資本政策となる。既存株主にとっては、2027年1月の株式配当と、その後の資金調達で生じる持ち分の変化を追うことが重要だ。広告事業の成長、Museの利用と採算、設備投資の成果が、増加する株数に見合う1株当たり価値を生むかが問われる。
元記事: Meta Class C Shares Let Zuckerberg Fund AI; Shareholders Cannot Vote Against It
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
