米セールスフォース、ブレイズ買収で合意 約56億6000万ドルでリアルタイムマーケティング強化へ

2026年10月22日 11:05

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記事提供元:Tech Times

SalesforceとBrazeのロゴ。Salesforceは2026年10月20日、Brazeを企業価値約56億6000万ドルで買収する最終契約を締結したと発表した(画像:Salesforceの発表資料より)。

SalesforceとBrazeのロゴ。Salesforceは2026年10月20日、Brazeを企業価値約56億6000万ドルで買収する最終契約を締結したと発表した(画像:Salesforceの発表資料より)。[写真拡大]

米セールスフォース(Salesforce)は米国時間2026年10月20日、顧客エンゲージメントプラットフォームのブレイズ(Braze)を買収する最終契約を締結したと発表した。取引の企業価値は約56億6000万ドル(約8940億円)で、Brazeのリアルタイム配信とAIによる意思決定機能を、Marketing Cloudや顧客データ基盤と組み合わせる計画だ。

取引完了はSalesforceの2028年度中を予定している。日本法人も10月21日に発表し、大量の消費者向けコミュニケーションに対応する機能の強化を掲げた。

■1株47.50ドル、2027年2月からの年度に完了予定

契約に基づき、BrazeのクラスA普通株式の株主には、原則として1株当たり47.50ドルが現金で支払われる。2026年10月19日の終値30.04ドルに対し、約58%のプレミアムとなる。

SEC提出資料によると、合併契約の締結日は10月19日だ。Salesforceの完全子会社Banff Acquisition Sub Inc.がBrazeと合併し、存続会社のBrazeがSalesforceの完全子会社となる仕組みを採る。

完了予定の2028年度は、2027年2月1日から2028年1月31日までに当たる。Braze株主の承認や必要な規制当局の承認などが条件で、Salesforceは2027年度の業績見通しへの変更を見込んでいない。2028年度の業績見通しは未公表としている。

Salesforceの専任財務アドバイザーはJ.P. Morgan Securities LLC、法律顧問はWachtell, Lipton, Rosen & KatzとCovington & Burling LLPだ。Braze側はQatalyst PartnersとDavis Polk & Wardwell LLPがそれぞれ務める。

10月20日の米国市場の寄り付き前取引では、Yahoo Finance掲載のStockStoryの報道によるとBraze株が51.2%上昇した。ロイターは、Salesforce株が同じ寄り付き前取引で約2.6%下落したと報じた。

■顧客行動から配信までをつなぐデータ基盤

Brazeは、モバイルアプリ、Webサイト、メール、SMS、WhatsAppなどを通じた顧客とのやり取りを管理する。顧客の行動をプロフィールへ反映し、その情報に応じてメッセージや配信の流れを変える仕組みだ。

同社の技術資料によると、基盤にはApache Kafka、MongoDB、Redis、Snowflakeを利用している。アプリやWebサイトに組み込むSDKとREST APIなどから、利用状況、カスタムイベント、属性、購入情報を取り込む。SDKは通信効率を考慮してデータを端末内に一時保存し、通信状況などに応じて送信する。

MongoDBはユーザープロフィール、カスタムイベント、属性、購入イベントと、多くのセグメント作成・配信対象選定機能を支える。Snowflakeを使う機能には、SQL Segment Extensions、Prediction Suite、AI Personalized Item Recommendationsがある。顧客データの分類、予測、商品推薦を、それぞれの用途に適した処理基盤で支える構成だ。

Brazeの技術解説では、Kafkaによるストリーミング処理に加え、Redisを分析情報の一時保存や分散処理の同時実行制御などにも利用している。行動データを取り込み、対象を選び、配信を実行する各段階を、複数の技術で分担している。

メッセージの個別化にはテンプレート言語Liquidを用いる。Connected Contentでは、送信時に外部APIの情報を取り込み、商品情報や価格などを内容へ反映できる。取得データのキャッシュ設定も利用でき、用途に応じて更新頻度を調整する。

外部へのイベントデータ出力には、追加機能のBraze Currentsを使う。公式資料では、ユーザー・イベント単位のデータを5分ごと、または1万5000イベントごとのいずれか早い時点で出力するとしている。データウェアハウスとの連携先にはSnowflake、Redshift、BigQueryがあり、取り込みやデータ共有など、目的に応じた機能を提供する。

■OfferFitから発展したAI意思決定機能

BrazeAIは、コンテンツ、オファー、チャネル、送信タイミングなどの最適化を支援する。同社によると、2025年にはプラットフォーム全体で4兆5000億件のメッセージとCanvasのアクションを処理した。Canvasは、顧客との一連のコミュニケーションを設計・実行する機能だ。

AI機能の強化に向け、Brazeは2025年3月27日にOfferFitの買収契約を発表し、同年6月2日に取引を完了した。契約発表時の買収額は、通常の調整を条件に3億2500万ドル(約514億円)だった。OfferFitの技術は、BrazeAI Decisioning Studioとして展開されている。

Brazeによると、Decisioning Studioは強化学習を使い、顧客ごとのメッセージ、チャネル、タイミング、オファーを継続的に最適化する。強化学習は、行動の結果として得られる報酬を手掛かりに、よりよい行動の選び方を学ぶ手法だ。顧客の反応を次の施策へ戻すことで、マーケターが変数ごとに手作業で試験を設計する負担を減らすことを狙う。

データを取り込み、施策を選択し、配信後の反応を学習へ戻す流れは、Brazeの配信基盤とAI意思決定をつなぐ要点となる。Salesforceは、これらを自社の顧客情報やAgentforceと組み合わせ、マーケティングから営業、コマース、サービスまでの顧客対応を充実させる構想を示している。

■約2770社の顧客と、買収後の運営方針

両社の発表によると、Brazeの顧客は発表時点で約2770社だ。Canva、Dairy Queen、Equinox、Instacart、Urban Outfitters、Venmoなどが含まれ、小売、飲食、フィットネス、金融、消費者向けアプリなどに利用が広がっている。

Salesforceでアプリケーションとマーケティング部門を率いるパトリック・ストークス氏は、顧客を理解し、適切な瞬間に応答することの重要性を説明した。Brazeの顧客行動に応じた個別対応を、Marketing Cloud、CRM、Data 360と組み合わせる方針だ。

Brazeの共同創業者兼CEO、ビル・マグナソン氏は、マーケターの創造性をブランドの競争力の源泉と位置付けた。同氏によると、過去1年は同社史上最も速いペースで製品を提供しており、買収後もBrazeとして開発と顧客・パートナーコミュニティーへの投資を続ける。マグナソン氏はCEOを継続し、共同創業者のジョン・ハイマン氏を含む経営陣も加わる計画だ。

SECに提出された顧客・パートナー向けの説明では、取引完了までは両社が独立して事業を運営し、既存契約や担当窓口を継続するとしている。Brazeは、他社のデータ基盤やツールを組み合わせて使える、オープンで柔軟な製品方針への取り組みも表明した。

■Marketing Cloudとの連携をどう進めるか

Salesforceは、Brazeの機能がData 360、Customer 360、Agentforce、SIForceというプラットフォームの4層を補完すると見込む。Customer 360では、特にMarketing Cloudのチャネル横断の個別対応を強化し、大量の消費者向けコミュニケーションへ広げる考えだ。

Marketing Cloud EngagementのJourney Builderは、スケジュールに基づく処理に加え、APIから送られたイベントをきっかけに顧客をジャーニーへ参加させる機能を備える。今回の組み合わせでは、既存のキャンペーン運用とBrazeのモバイル・アプリ向け機能、継続的な顧客データ更新、AI意思決定をどう連携させるかが焦点となる。

TechTargetによると、コンサルティング会社West MonroeのM&A責任者アレックス・トーガーソン氏は、データ、意思決定、配信までを一体で持つ戦略を評価する一方、買収価値を左右する要素として製品統合と顧客移行を挙げた。導入企業にとっても、利用中のデータ連携や配信運用を踏まえた統合計画が重要になる。

Salesforceには、2019年のTableau買収や2021年のSlack買収など、大型製品を取り込んできた経緯がある。契約発表時の評価額は、それぞれ157億ドル(約2兆4800億円)、277億ドル(約4兆3800億円)だった。Tableauでは2020年にEinstein Analyticsとの連携方針と、Einstein Discoveryを組み込む製品構想を公表している。

■AI・データ基盤への投資と競争環境

SalesforceはAIとデータ基盤の拡充に向け、買収を重ねている。2025年11月18日にはInformaticaの買収を完了した。契約発表時の株式価値は既存保有分を除き約80億ドル(約1兆2600億円)で、データ統合、品質管理、ガバナンスなどをAI向け基盤へ取り込む狙いを示していた。

Qualifiedについては2025年12月に買収契約を発表し、2026年4月1日に完了した。2026年6月15日には、顧客対応AIエージェントを提供するFinを約36億ドル(約5690億円)で買収する契約も発表した。2023年10月に買収したAirkit.aiも、AIによる顧客対応アプリケーションの開発機能を提供していた。

2026年8月26日には、Anthropicとの提携拡大としてClaudeforceを発表した。ClaudeからSalesforceのデータや業務機能を利用し、営業案件の更新などを実行できる仕組みと、SalesforceやSlackでのClaude活用を進める内容だ。

Brazeは2011年にAppboyとして創業し、2021年11月にNasdaqへ上場した。2026年1月31日を期末とする2026年度の売上高は7億3820万ドル(約1170億円)で、前年比24.4%増だった。契約済み年間経常収益が7億ドル(約1110億円)を超えたことは、2025年9月の決算説明会で公表している。

顧客エンゲージメント分野では、調査会社MarketsandMarketsが2022年公表の予測で、関連ソリューション・サービスの世界市場を2027年に322億ドル(約5兆900億円)と見積もっていた。Brazeは年次報告書でAdobe、Salesforce、Klaviyoなどを競合に挙げている。HubSpotもマーケティング自動化製品を展開しており、顧客データとAIを施策の実行へつなげる競争が続く。

The Informationは買収発表以前から、BrazeをSalesforceやAdobeの買収候補として報じていた。今回の契約でSalesforceが取り込もうとしているのは、顧客との接点から得るデータ、AIによる施策選択、チャネルを横断した配信を組み合わせる機能だ。その連携を既存顧客の運用へどう届けるかが、今後の製品展開を見極めるポイントとなる。

元記事: Salesforce Buys Braze for $5.66B; Marketing Cloud Lacked Real-Time Consumer Event Processing

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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