OpenAI、人型ロボット開発へ アルトマン氏が2027年のデモを展望

OpenAIのアルトマンCEOが人型ロボット開発と2027年のデモへの見通しを示し、実機データ収集や独自部品の開発を進めている。(写真:kovop58 © 123RF.com)[写真拡大]
OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が、人型ロボットを開発する意向を明らかにした。2027年にはデモを披露できるとの見通しも示しており、ロボット企業への出資やAI開発での協業に加え、自社の機体を手掛ける取り組みを進めている。
■人間のために作られた世界で働くロボット
アルトマン氏は、2026年9月1日公開のポッドキャスト「Sources」で、人型ロボットとデータセンター向けの機械のどちらを開発するのかと問われ、両方に取り組むと答えた。「間違いなく人型ロボットを作る。他の形態も手掛ける」と述べている。
人型を選ぶ理由として同氏が挙げたのは、人間に合わせて整えられた生活・作業環境だ。ドアを開ける、コンピューターに入力する、機械を操作する、台所を掃除するといった仕事には、人間に近い身体の形が適しているという考え方である。
一方、同氏が開発の核心に据えるのは、ロボットを働かせる「頭脳」だ。周囲の状況を読み取り、指示を理解し、適切な動きを選ぶAIを重視している。データセンターでは、用途に合わせて人型以外の形態も使う構想を示した。
同氏はFortuneの9月のインタビューで、2027年には印象的なデモを示せると見込んだ。街中でロボットが歩くようになるまでには、さらに数年を想定している。
■視覚と言語を動作につなぐAI
ロボット向けAIの有力な研究分野が、視覚・言語・行動(VLA)モデルである。カメラ画像や言葉による指示を入力し、ロボットの動作を出力する。画像の内容を説明する能力を、物をつかむ、運ぶといった行動につなげる仕組みだ。
Google DeepMindの研究チームが発表したRT-2では、ウェブ上の画像や言語から得た知識を、ロボット制御に生かす手法が示された。OpenVLAの研究でも、事前学習済みの視覚言語モデルをロボットの動作データで追加学習し、新しい作業に適応させる方法が検討されている。
こうした研究に共通するのは、視覚と言語の知識を、実機で集めた観測と動作のデータにつなぐ構造である。例えば物を持ち上げる場合、対象の識別だけでなく、手を近づける方向やつかむ位置、動作後の状態まで扱う必要がある。
実世界との相互作用を重視する考え方には、長い研究の蓄積がある。ロドニー・ブルックス氏は1991年の論文「Intelligence Without Representation」で、知覚と行動を通じて環境と直接やり取りするロボットの構成を論じた。身体性認知とも関わるこの議論は、環境とのやり取りを知能の設計に組み込むという点で、現在の取り組みを考える手掛かりになる。
OpenAIでWorldsimを率いるアディティヤ・ラメシュ氏は、自身のウェブサイトで、動画生成モデルの知能を物理世界へ持ち込むため、新たなロボット研究の立ち上げに取り組んでいると説明する。同氏はDALL-Eの開発者で、Soraのモデルと製品を作ったチームも組織した。
動画の次の状態を予測・生成する研究と、状況や目標に応じてロボットの行動を生成する研究には、時間とともに変わる世界を扱うという接点がある。機体の動作によって周囲がどう変化するかを捉えることが、物理世界での作業を支える重要な課題となる。
■遠隔操作で実機データを集める
Business Insiderが2026年1月に報じたところによると、OpenAIはサンフランシスコのラボで、人間によるロボットアームの遠隔操作を通じて学習用データを収集している。スタッフは「GELLO」と呼ばれるコントローラーでFrankaのアームを操作し、洗濯物を畳むなどの作業を教えているという。
GELLOは、操作者が動かす小型の機構とロボットアームの動きを対応させる遠隔操作システムだ。実演中の映像と機体の動作を記録することで、ある状況でどのように動けばよいかを学ぶための材料を得られる。
施設の拡張も報じられている。San Francisco Chronicleは2026年3月、OpenAIがカリフォルニア州リッチモンドで約20万2000平方フィートの建物を賃借したと伝えた。Portside Commerce Centerにある物件で、電気設備の容量は1万4000アンペアを超えるという。
実機データと並んで重要なのが、シミュレーションで学習した動作を現実の機体へ移す「シム・ツー・リアル」の研究だ。照明、摩擦、機体の特性、センサーの誤差などの違いに対応する必要がある。OpenAIは2018年のロボットハンド研究や2019年のルービックキューブ操作で、シミュレーション条件を多様に変え、現実の違いに対応する手法を示していた。
Business Insiderによると、同社は初期のロボット研究を2020年に終了し、他の研究へ人員を振り向けた。その後、共同創業者のボイチェフ・ザレンバ氏は、ロボット学習で必要なデータを十分に得る難しさを説明している。実演データを継続的に集める現在の取り組みは、こうした課題に向き合うものだ。
■出資先も独自の「頭脳」を開発
OpenAIが自社の人型ロボットを開発すれば、出資や協業を通じて関係を築いた企業と、製品分野が重なる可能性がある。ロボット企業にとっては、機体の性能とAIの学習方法をどこまで自社で管理するかが、競争戦略の重要な要素になる。
Figure AIは2024年2月、6億7500万ドル(約1070億円)のシリーズB資金調達と、OpenAIとのAIモデル開発での協業を発表した。出資者にはOpenAI Startup Fundも含まれた。2025年2月には協業を終了し、自社モデルの開発へ軸足を移している。
Figureのブレット・アドコックCEOは当時の投稿で、大規模言語モデルは賢くなる一方でコモディティ化が進んでいると説明した。同氏は、より難しい課題は実世界でロボットを高速に制御するAIの設計にあり、AIはアクチュエーターや電子回路と同様に性能を左右する重要部分だとして、自社開発を重視した。
家庭向け人型ロボット「NEO」を開発する1X Technologiesも、独自AIの研究を進めている。OpenAI Startup Fundは2023年、同社の2350万ドル(約37億1000万円)のシリーズA2資金調達を主導した。1Xは2025年にRedwood AIと世界モデルを公表し、2026年1月には動画で事前学習した「1X World Model」をNEOの制御に組み込む手法を発表した。
さらに1Xは2026年6月、身体を持つAIの基盤モデルを事前学習する研究組織「1X World Model Lab」を設立した。動画、遠隔操作、シミュレーション、実機の経験などを組み合わせる方針で、機体とデータ収集、モデル開発をつなぐ体制を整えている。
■市場拡大と、異なる事業化の道筋
調査会社Smart Analytics Globalが2026年8月に公表した推計によると、同年上期の世界の人型ロボット出荷台数は約1万9100台で、前年同期比272%増だった。中国メーカーが97%超を占め、企業別の出荷シェアはAGIBOTが44%、Unitreeが31%だった。
この推計は、全身型の二足歩行ロボットに加え、小型の二足歩行型や車輪型なども対象としている。同社によると、産業・商業用途は出荷の70%超を占めた。工場や物流の仕事に加え、研究・教育・パフォーマンスなど、用途の異なる製品が市場を構成している。
Figureは2025年9月、シリーズCで10億ドル(約1580億円)超の出資約束を確保し、調達後評価額が390億ドル(約6兆1600億円)になったと発表した。2026年6月には「Figure 03」がBMWのスパータンバーグ工場に入り、部品の順序付けなどの物流作業を実演したと公表している。前世代のFigure 02による板金部品の搬送から、作業内容を広げる取り組みだ。
テスラもOptimusの生産体制を整えている。2026年7月の決算説明でイーロン・マスクCEOは、部品や供給網を新たに構築する必要があるため、同社が手掛けた製品の中でも製造規模の拡大が最も難しくなると述べた。ソフトウェアの開発に加え、部品供給と組み立て工程を成立させることが課題になる。
現代自動車グループ傘下のBoston Dynamicsは、2026年1月にAtlasの製品版を発表し、製造を開始する方針を示した。同年の納入先として現代自動車側の研究・実証施設とGoogle DeepMindを挙げ、2027年初めには顧客を追加する計画を公表した。
Google DeepMindは2026年7月30日、全身制御を扱うVLAモデル「Gemini Robotics 2」を発表した。Boston Dynamicsとの協業も進めており、独自モデルと機体を一体で開発する企業に加え、AI研究機関と機体メーカーが組む形でも開発が進んでいる。
■チップから機器へ広がる開発範囲
ロボット開発は、OpenAIがソフトウェア以外の領域へ活動を広げる動きの一つだ。同社は2025年10月、Broadcomと共同で独自設計のAIアクセラレーターとネットワークシステムを開発・展開する提携を発表した。計画規模は10ギガワットで、2026年後半から2029年末までの展開を目指すとしている。
AIインフラ計画「Stargate」も進めている。2025年1月の発表では、米国のAIインフラへ4年間で5000億ドル(約79兆円)を投資する構想を掲げ、ソフトバンクが財務、OpenAIが運営を主導する体制を示した。
個人向け機器では、ジョニー・アイブ氏らが共同創業したio Productsのチームが、2025年7月にOpenAIへ合流した。AP通信によると、この取引の評価額は約65億ドル(約1兆300億円)だった。アイブ氏と独立したデザイン会社LoveFromは、OpenAIの機器開発などで設計・創造面を担う。
モデル、計算基盤、機器を自ら設計する範囲が広がれば、それぞれを用途に合わせて調整しやすくなる。ロボットでも、AIが必要とするセンサーや機構を機体に反映し、実機から得たデータを学習へ戻す循環を作ることが、開発上の狙いとなる。
■2027年のデモへ、機体開発と実用性を磨く
OpenAIの公式求人には、独自モーターやアクチュエーターの製造工程、治工具、試作、検査を担当する職種が含まれる。2026年10月時点で掲載されている内容からは、AIの研究とともに、機体の部品を設計・製造する能力を整えていることが分かる。
コスト面でも、駆動部は大きな比重を占める。McKinseyが2026年4月に公表した分析では、モーター、減速機、関節機構などのアクチュエーターは、人型ロボットの部品コストの40〜60%を占めると推計した。必要な力や精度を満たしながら、耐久性と製造しやすさを確保することが重要になる。
人材の採用も進む。The Next Webが2026年9月に確認した求人では、ロボット向け分散データシステムを担当する機械学習技術者の基本年俸は38万〜50万ドル(約6000万~7900万円)だった。2026年10月時点の公式求人では、ロボティクスソフトウェア技術者に25万5000〜32万5000ドル(約4030万~5140万円)の基本年俸が示され、株式報酬も別途用意されている。
Business Insiderの求人調査に協力したコーネル大学のガイ・ホフマン氏は、募集職種の広がりから、OpenAIが独自ロボットの設計チームを構築していると分析した。組織では人の入れ替わりもあった。ロイターによると、2024年後半にMetaから加わったロボット向けハードウェア責任者のケイトリン・カリノウスキー氏は、国防総省との契約で監視や自律兵器に関する歯止めを十分に検討したかへの懸念を示し、2026年3月に辞任した。
アルトマン氏は2025年6月のエッセイ「The Gentle Singularity」で、2025年の知的作業を担うエージェントに続き、2026年には新たな知見を得るシステム、2027年には実世界で作業するロボットが登場する可能性を描いた。最初の100万台を人間が従来の方法で作り、その後はロボットが採掘、輸送、工場の運営を担うという長期的な構想も示している。
2027年のデモは、こうした構想に向けて、AIと機体を組み合わせた成果を示す機会になる。実用化に向けて問われるのは、作業を繰り返し成功させる能力、人の介入頻度、稼働時間、保守や製造にかかる費用だ。OpenAIは、基盤モデルの研究で培った能力を、現場で継続して働く機械へつなぐ段階に入っている。
元記事: OpenAI Confirms Humanoid Robot With 2027 Demo, Competing With Companies It Once Backed
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
スポンサードリンク
