『スパイダーマン5』にクレットン監督続投か 『ブランド・ニュー・デイ』の科学設定を読み解く

2026年9月24日 12:29

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記事提供元:Tech Times

デスティン・ダニエル・クレットン氏が、実写版「スパイダーマン」第5作の監督として復帰する方向で協議されている。契約や公開日は発表されておらず、脚本開発も初期段階にあるが、ソニー側は「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」を手掛けた同氏の続投を望んでいる。

前作では、孤独と重圧を抱えたピーター・パーカーの身体的変化、有機クモ糸、ジーン・グレイのテレパシーが物語の軸になった。これらは現実の科学をそのまま再現した設定ではないものの、エピジェネティクス、生体材料、脳と機器をつなぐ技術との共通構造を通じて、登場人物の変化を読み解く手掛かりになる。

■クレットン監督の復帰をソニーが希望

クレットン氏はソニー・ピクチャーズと3年間の包括契約を結び、自身の製作会社Hisako Filmsを通じて映画を開発することになった。この契約自体に「スパイダーマン」第5作の監督就任は含まれていないが、ソニーは同氏の復帰を希望している。

プロデューサーのエイミー・パスカル氏も、続投について「私たちの望みがかなうなら、間違いなく彼です」と語った。ただし、現時点で監督契約は正式に発表されておらず、脚本家チームもまだ編成されていない。

パスカル氏によると、クレットン氏は「ブランド・ニュー・デイ」の構想を説明した際、「この映画では物理法則を尊重したい」と話したという。その姿勢は、超人的な能力にも身体的な負担や距離、運動上の制約を設け、ピーターの感情と身体の変化を結び付ける演出に表れていた。

「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」は2026年7月31日に米国で公開され、世界興行収入は24億ドルを超えた。クレットン氏が続投する場合でも、前作の科学設定がそのまま引き継がれるか、新たな能力や対立へ発展するかは明らかになっていない。

■第5作の公開日は未定

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのラビ・アフジャ会長兼CEOは2026年9月、第5作について「まだ日程は決まっていない。通常なら数年後になる」と説明した。具体的な製作開始時期や公開年は示していない。

ソニーが次に公開する「スパイダーマン」映画は、2027年6月18日公開予定のアニメーション作品「スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース」となる。実写版第5作については、脚本、出演者、物語などの詳細も正式発表されていない。

クレットン氏はライオンズゲートによる実写映画「NARUTO-ナルト-」を次回監督作として予定している。このため第5作の製作時期は同氏や出演者のスケジュールにも左右されるが、2029年公開という見方を含め、現段階の具体的な年次は予測にとどまる。

したがって、「ブランド・ニュー・デイ」の物語から第5作の内容を確定的に導くことはできない。一方で、前作が能力を単なる映像上の効果ではなく、ピーターやジーンの感情、行動、身体的負担と結び付けた点は、シリーズの今後を考えるうえで重要な特徴である。

■ストレスと遺伝子発現を結ぶ物語

「ブランド・ニュー・デイ」のピーター・パーカーは、周囲の人々から自分に関する記憶が消えた後、単独でニューヨークの犯罪に立ち向かってきた。孤立と過労が重なるなか、ピーターの能力には新たな身体的変化が現れる。

作中では、かつてクモにかまれたことでピーターの身体に生じた変化が潜在し、長期的なストレスをきっかけに表面化したと説明される。AIコンパニオンのE.V.は、精神的な負担が変化を加速させ、手首から有機クモ糸を生み出す能力や、周囲の状況を感知する能力を強めたと分析する。

この設定を読み解く補助線になるのが、DNA配列そのものを変えずに遺伝子の働き方を調節するエピジェネティクスである。動物研究や人を対象とした研究では、慢性的なストレスやトラウマと、DNAメチル化を含むエピジェネティックな変化との関連が調べられている。

ただし、こうした研究が示すのは、ストレスが既存の生理機能や遺伝子発現に影響し得るということだ。新しい遺伝情報を作り出したり、別の生物の形質を人間に発現させたりすることを示すものではない。

人間のゲノムの約45%は、進化の過程で蓄積した転移因子由来の配列によって占められている。転移因子の多くは通常抑制されているが、発生、老化、疾患、細胞ストレスなどと関連して、その制御が変化する場合がある。前作は、身体の中に潜在する仕組みが重圧によって表面化するという発想を、ピーターの孤独や自己抑制の物語に重ねている。

■有機クモ糸と生体材料研究

ピーターの変化を最も視覚的に示すのが、手首から直接生み出される有機クモ糸である。ピーターは眠っている間に自らの糸で包まれ、従来使っていた機械式ウェブシューターとの違いに直面する。

天然のクモ牽引糸は、高い引張強度と伸びやすさを併せ持つ。種類や測定条件によって性能は異なるが、破断強度は約1ギガパスカルに達し、破断まで約30%伸びる例が報告されている。強度だけでなく、破断までに吸収できるエネルギーを示す靱性に優れることが、材料研究で注目される理由である。

クモ糸の性能は、MaSp1やMaSp2などのスピドロインと呼ばれるタンパク質だけで決まるわけではない。近年の研究では、別のスピドロインや少量の非スピドロインタンパク質、紡糸時の化学条件、せん断力によって形成される階層構造も重要だと分かってきた。

2024年には、組換えMaSp2を使ったマイクロ流体装置で連続的に繊維を形成する研究が発表された。研究チームは、液液相分離、pH変化、せん断力を組み合わせ、繊維形成には約72パスカル以上のせん断応力が必要だと報告している。これは、天然のクモが体内で行う複雑な紡糸過程の一部を人工装置で再現する試みである。

Kraig Biocraft Laboratoriesは2026年6月、クモ糸タンパク質の遺伝子を導入したカイコから、1回の生産サイクルで約2.5トンの組換えクモ糸繭を採取したと発表した。この数値は同社発表によるもので、完成した繊維そのものの重量ではなく、加工前の繭の生産量を示している。

こうした研究と製造技術は、高性能なタンパク質素材を安定して作ることを目指すものだ。前作の有機クモ糸は、タンパク質の生成から繊維化、射出、身体へのエネルギー供給までを一体化した能力として描かれ、ピーターの発熱や消耗は、その変化が身体に負担を伴うことを印象付けている。

■テレパシーを情報処理の構造から考える

ジーン・グレイの能力には、当初およそ33フィート、約10メートルという有効範囲が設定されている。新しい人物へ意識を移すには、現在操っている身体をその範囲まで近づけなければならず、距離が行動を制約する。

人間の脳活動は電気信号によって成り立ち、それに伴う微弱な磁場は脳磁図で測定できる。ただし測定には、頭部の近くに置く高感度センサーや磁気シールド環境が必要であり、通常の脳活動が10メートル先の人間の思考や行動を直接左右することは確認されていない。

作品設定との共通構造を考えるうえでは、脳活動を読み取り、機器を介して別の出力へ変換するブレイン・コンピューター・インターフェースが参考になる。経頭蓋磁気刺激法は、頭部に置いたコイルが作る磁場によって大脳皮質に電流を誘導し、神経活動を調節する技術である。

米国では、特定の経頭蓋磁気刺激装置が、うつ病や強迫症などの治療用として認可されている。研究環境では、刺激する場所や条件に応じて、運動反応や発話などに一時的な変化を生じさせることもできる。

2014年には、送信者の脳波から読み取った二進情報をインターネットで送り、受信者に経頭蓋磁気刺激で光の感覚を生じさせる実験が報告された。「hola」などの単語を符号化した情報を伝えたもので、思考内容そのものを直接読み取ったのではなく、脳波、コンピューター、通信回線、刺激装置を組み合わせた概念実証だった。

ジーンの能力は、入力、情報の伝送、別の脳への出力という構造を一人の身体能力としてまとめた設定と捉えられる。約10メートルという距離は現実の脳磁場から導ける数値ではないが、能力に測定可能な範囲を設けることで、彼女の移動や判断を左右する明確なルールとして機能している。

■続編を読み解く手掛かり

「ブランド・ニュー・デイ」に登場する3つの科学的モチーフは、ストレスを受けた身体の変化、タンパク質から作られる高機能材料、意図を読み取って別の出力へ変える情報処理という現実の研究テーマを連想させる。

そこに共通するのは、能力に代償や制約を持たせ、人物の感情と身体を切り離さずに描く構成である。ピーターの変化は孤独と過労に、ジーンの能力は恐怖や悲嘆に結び付けられ、科学的な語彙が人物描写を支える役割を果たしている。

クレットン氏が第5作でも監督を務めるか、これらの設定を引き継ぐかは決まっていない。前作で示された遺伝子抑制技術、DODCによるミュータントへの対応、変化を受け入れたピーターのその後は、続編へ発展し得る要素だが、具体的な展開は今後の正式発表を待つ必要がある。

クレットン氏が掲げた「物理法則を尊重する」という方針の意味は、架空の能力を現実の科学で証明することではなく、能力がいつ、どこで、どのように働き、人物に何をもたらすかという規則を物語の中で一貫させることにある。それが第5作にも受け継がれるなら、科学的なモチーフは新たな能力の説明だけでなく、ピーターの選択と成長を描くための補助線になる。

元記事: Cretton’s Return for Spider-Man 5 Signals Brand New Day Biology Carries Forward

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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