ETHチューリヒ、指で移動するロボットハンドを開発 自重を支えながらキー操作

2026年9月20日 00:48

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記事提供元:Tech Times

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ETHチューリヒのSoft Robotics Labは、5本の指を脚として使い、自らの重量を支えながら移動と操作を行うロボットハンドを開発した。実機では14種類の路面でのケーブルレス移動、転倒からの復帰、キーボード操作、物体を目標位置へ押す動作を実演した。

研究成果は、Amirhossein Kazemipour、Hehui Zheng、Robert Katzschmannによるプレプリント「Fingers as Legs: Learning Self-Supported Locomotion and Manipulation with an Anthropomorphic Hand」として、2026年9月15日にarXivへ投稿された。

■移動機構を持たないロボットハンド

一般的な移動操作ロボットは、車輪や脚を持つ移動機構にアームやロボットハンドを組み合わせる。今回のシステムは、物体操作に使う指そのものを移動にも利用し、独立した移動機構を省いた点が特徴だ。

研究チームは、市販の右手型ロボットハンド「WUJI Hand」を使用した。各指に4関節、合計20の能動自由度を備える。指の構造や内蔵位置制御器は変更せず、背面にバッテリー、慣性計測装置、小型コンピュータを搭載した。

WUJI Hand本体は738g、追加した背面モジュールは80gで、システム全体の重量は818gとなった。制御処理は搭載したRaspberry Pi Zero 2 Wで実行し、移動時の指令は専用のゲームパッドから送る。外部の電源ケーブルや計算機に接続せず動作するが、自律的に経路を判断するナビゲーションシステムではない。

■非対称な指に合わせた強化学習

人間型の手では、親指とほかの4本の指で位置、長さ、可動域が異なる。ある指を持ち上げる間、残りの指で本体を支えなければならず、四脚ロボットのように対称な脚を前提とする学習手法をそのまま適用するのは難しい。

研究チームは、実機で測定した関節の応答、指先の摩擦、制御遅延などを反映したシミュレータを構築した。その中でProximal Policy Optimization(PPO)を用い、移動、転倒復帰、キーボード操作、物体押しの各課題に個別の方策を学習させた。

学習時には4096のシミュレーション環境を並列に動かした。実機で動くアクターネットワークには、関節角度、重力方向、角速度、直前の制御出力、移動指令からなる8時点分の履歴を入力し、20関節の目標位置を調整する出力へ変換する。

一方、学習を補助するクリティックネットワークは、実機の方策では利用しない本体状態、関節トルク、指先の接触力も参照する。この非対称アクター・クリティック構造により、実機で取得可能な情報だけで動く方策を、シミュレーション内の詳細な情報を使って訓練した。

■指ごとの「仮想ばね」で移動を誘導

移動方策の中核となるのが、5本の指の非対称性に合わせた報酬設計だ。研究チームは、基準姿勢における各指先の位置を個別に設定し、そこからのずれを仮想的なばねのようなコストとして扱った。

前後方向のずれに対する重みは0.25、横方向と上下方向はそれぞれ1とした。これにより、横ずれや姿勢の崩れを抑えながら、進行方向には指を動かしやすくする。足運びの順序は指定せず、どの指をいつ持ち上げるかは方策に学習させた。

シミュレーションでは、提案手法と四脚ロボット向け報酬を調整した比較手法を、同じハンドモデルや初期条件の下で評価した。12の学習シードについて各256エピソードを走らせた結果、提案手法の平均移動速度は毎秒1.67cm、比較手法は毎秒1.02cmだった。

毎秒0.65cmの差に対する95%信頼区間は、毎秒0.26~1.02cmだった。ただし、この比較はシミュレーション上の結果であり、提案手法だけが追加学習を経て実機で検証されている。

■14種類の路面でケーブルレス移動

実機では、ゴムマット、カーペット、硬木床、タイル、縞鋼板、金属グレーチング、ハードコート、アスファルト、乾燥コンクリート、切石、風化した石、人工芝、天然芝、砂利の14種類で移動を実演した。これらは対応路面を網羅的に評価した性能試験ではなく、屋内外の異なる路面で動作することを示す定性的な実演である。

方向転換では、前後左右の速度と旋回速度の指令に方策が応答する。直進指令でも毎秒約6度右へ曲がる傾向があり、右旋回と左旋回でも応答が異なった。1.3mのマット上で計測した21軌跡の平均移動速度は毎秒0.093mだった。

搭載する慣性計測装置の方位情報を使った閉ループ制御では、左右15度と右30度の目標方位へ到達した。一方、左30度の試験では目標に届かなかった。研究チームは、指の非対称性を反映した旋回範囲の拡大を今後の課題に挙げている。

■転倒から復帰し、キーを押す

転倒復帰には、移動用とは別の方策を使用する。実機試験では、親指側からの転倒14回のうち11回、手首側からの転倒11回のうち10回で復帰し、合計成功率は25回中21回の84%だった。失敗した4回では、指同士が引っ掛かって動作が止まった。

キーボード操作では、固定したキーボードに対して上下左右の矢印キーを手作業で事前に位置合わせした。ハンドはカメラを使わず、関節角度と本体姿勢を基に、ほかの指で自重を支えながら指定されたキーを押した。

72.5秒間に連続して出した32命令のうち29回で正しいキーを押し、成功した操作の応答時間の中央値は0.25秒だった。3回の失敗はいずれも上矢印キーへの命令で、隣接する右Shiftキーを押していた。

同じ操作方式により、倉庫番パズルの1箱のステージを9手、2箱のステージを12手で完了する実演も行った。各移動命令はオペレーターが出しており、ハンドがパズルを認識して解法を生成したわけではない。

■視覚情報を使って立方体を押す

物体押しでは、作業空間の上方に設置したカメラでハンド背面のマーカーと立方体を追跡した。方策は立方体への接近、接触、目標方向への押し出しを一続きの動作として実行する。

実験に使った立方体は一辺40mm、重さ41.4gのPLA製だった。10~40cm離れた目標への15回の実演で、最終位置の目標からの誤差は平均17mm、範囲は5~37mmとなった。

キーボード操作では事前の位置合わせが必要で、物体押しでは外部の上方カメラを使っている。研究チームは、キーボード位置の視覚的な自動認識や、ハンド本体に搭載したカメラによる物体追跡を、適用範囲を広げるための課題としている。

■狭い空間での移動操作に活用

指を移動と操作の両方に利用すれば、アームや移動台車が入れない狭い空間でも、ロボットハンドだけを対象の近くへ送り込める可能性がある。研究チームは、大型ロボットが狭い開口部の近くにハンドを置き、ハンドが内部へ移動してスイッチや物体を操作した後、回収地点へ戻る利用形態を想定している。

今回の成果は、同じ身体部位で移動と物体操作を行う「ロコマニピュレーション」の研究に位置付けられる。20関節を移動と操作で共用することで、小型の移動マニピュレータを構成できることを示した。

一方、14種類の路面における移動は定性的な実演であり、長距離移動や路面ごとの成功率は示されていない。移動速度や旋回性能に加え、把持用として設計された関節へ歩行時の荷重を繰り返し加えた場合の耐久性も、今後検証する必要がある。

研究チームは、移動可能なロボットハンドが、既存の移動ロボットを置き換えるのではなく、通常のアームや移動台車では到達しにくい場所で操作を行うための小型プラットフォームになり得るとしている。

元記事: ETH Zurich Robotic Hand Walks, Steers, and Presses Keys on Its Own Fingers

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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