Radical Ventures、AI成長企業向けファンドを初回クローズ 10億米ドル超を確保
トロントを拠点とするベンチャーキャピタルのRadical Venturesは15日、後期段階のAI企業を対象とする「Radical Breakouts Fund」の初回クローズを発表した。10億米ドル(約1550億円、1ドル=155円換算)を超える出資約束を確保しており、同社はカナダ史上最大のベンチャーキャピタルファンドとしている。
出資者にはカナダの主要な年金基金や金融機関が名を連ねる。同社が公表している最終的な目標規模は「数十億米ドル」で、具体的な最終目標額やクローズ時期は正式には明らかにされていない。
■後期段階のAI企業に大型資金を供給
Breakouts Fundは、事業を拡大する段階に入ったAI企業へ大型の成長資金を提供するファンドである。Radicalは、将来的に世界有数のテクノロジー企業へ成長する可能性があるAI企業を世界各地で投資対象とし、カナダ企業にも国内から後期資金を供給する方針を示している。
同社は、主要な非公開テクノロジー企業が以前より長く非公開市場にとどまり、大規模な資金調達を繰り返した後、評価額1000億米ドル以上で公開市場に進む例が現れていると説明する。Breakouts Fundは、この成長過程に参加するための資金規模を確保することを狙う。
Radicalの共同創業者兼マネージングパートナーであるJordan Jacobsは、カナダには世界水準のAI企業がある一方、成長企業を国内にとどめるために必要な規模の資本が不足してきたとの認識を示した。カナダを含む世界各地の有力企業へ投資し、その運用収益をカナダの出資者にもたらすことを目指すとしている。
■従来のファンドより後の成長段階を対象
Radicalはこれまで、シードやシリーズAを中心とするアーリーステージ投資に加え、成長段階の企業を対象とするファンドも運用してきた。2024年8月には、AIを中心とする成長企業向けに8億米ドル規模のベンチャー・グロースファンドを立ち上げている。
2025年10月には、初期段階のAI企業を対象とする6億5000万米ドルのファンドを最終クローズした。このファンドにはCPP Investmentsが7500万米ドルを出資し、同機関によるRadicalの各ファンドへの累計出資額は2億8000万米ドルとなった。
Breakouts Fundは、こうした既存の投資戦略よりも成熟したAI企業を主な対象とする。製品や事業の成長性が一定程度確認され、世界展開や商用化の加速に大規模な資本を必要とする企業へ投資する位置付けである。
■カナダの年金基金と金融機関が参加
公表された出資者は、PSP Investments、CPP Investments、Healthcare of Ontario Pension Plan、TD Bank Group、BMO Financial Group、CI Global Asset Management、OPTrustである。このほかにも、名称が公表されていない世界各地の投資家が参加している。
発表は9月14日と15日にトロントで開かれたCanada Investment Summitで行われた。同サミットはカナダ政府がCPP Investments、PSP Investmentsと連携して開催し、世界の投資家やカナダ企業、公共部門の関係者を集め、国内への長期投資を促すことを目的としている。
カナダ政府は今後5年間で総額1兆カナダドルの投資を呼び込む方針を掲げている。Breakouts Fundは政府のファンドではないが、カナダの年金基金や銀行が後期段階のAI投資に大型資金を振り向ける動きとして、サミットの投資促進方針と重なる。
■CohereやWaabiなどに投資実績
Radicalの投資先には、カナダのAI企業Cohereや自動運転技術を開発するWaabiのほか、量子コンピューティング企業Xanadu、創薬支援企業Veeda、バイオプリンティング企業Aspect Biosystemsなどが含まれる。
企業向けAIを手がけるCohereは2025年9月、直前の資金調達ラウンドの追加クローズで1億米ドルを調達し、評価額は約70億米ドルとなった。8月に発表した5億米ドルと合わせ、この一連のラウンドによる調達額は6億米ドルとなった。
Waabiは2026年1月、7億5000万米ドルのシリーズCをクローズするとともに、Uberからマイルストーンの達成を条件とする将来投資を確保した。Uberによる投資枠は約2億5000万米ドルで、Waabiの自動運転システムを搭載したロボタクシーをUberのプラットフォームへ2万5000台以上展開する計画に関連している。具体的な展開時期は公表されていない。
Radicalはこのほか、World Labs、Discovery Loop、Etched、Crusoe、Prime Intellect、Muon Spaceなど、AIモデルから科学研究、半導体、データセンター、宇宙分野まで幅広い企業へ投資している。
■最終目標は「数十億米ドル」
RadicalはBreakouts Fundを「数十億米ドル規模」のファンドとしているが、具体的な最終目標額は公式発表に記載していない。The Globe and Mailは、事情に詳しい関係者2人の話として、同社が40億米ドルの調達を目指していると報じた。
同紙によると、Radicalは当初、将来的に評価額1兆米ドル規模へ成長すると見込む企業12社に対し、1社当たり最大2億5000万米ドルを投資する構想を持つ。いずれも正式な最終クローズ前の計画であり、実際のファンド規模や投資額は今後の資金調達状況によって決まる。
初回クローズで確保した10億米ドル超だけでも、同社発表ではカナダ最大のベンチャーキャピタルファンドとなる。40億米ドルの目標が実現すれば、カナダを拠点とする投資会社が世界の有力AI企業による大型調達へ参加できる余地はさらに広がる。
■カナダで成長資金を拡充する動き
カナダでは、国内テクノロジー企業の後期成長を支える資本を増やす動きがほかにも進んでいる。Royal Bank of Canadaは9月9日、カナダのテクノロジー企業を対象とする総額14億カナダドルの投資構想を発表した。この構想の中核となるRBCx Growth Fund Iには、同行が最大4億1600万カナダドルを出資する計画である。
RBCの資料によると、過去10年間に米国で行われた成長段階の資金調達では約74%を米国投資家が主導したのに対し、カナダで国内投資家が主導した割合は33%にとどまった。同社は、この差をカナダ企業が成長段階で国外資本への依存を強める要因の一つとみている。
Breakouts Fundも、カナダ企業だけに投資する仕組みではなく、投資対象は世界に広がる。それでも、国内の年金基金や金融機関が後期AI企業への大型投資に参加し、カナダ企業が成長資金を国内でも調達できる選択肢を増やすという点に今回の意義がある。
ファンドは初回クローズを終えた段階であり、最終的な規模や投資先、運用成果はまだ定まっていない。今後の追加調達によって、Radicalが掲げる数十億米ドル規模にどこまで近づくかが焦点となる。
元記事: Radical Ventures Closes $1B Breakouts Fund: Pension Giants Back Canadian AI Scaleups
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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