「ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ」シーズン2撮影終了、干ばつのロケ地で洪水

2026年9月16日 20:08

印刷

記事提供元:Tech Times

(Hbo.com)

(Hbo.com)[写真拡大]

HBOのファンタジードラマ「ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ」シーズン2の撮影が終了した。干ばつを描くために選ばれたスペイン・カナリア諸島のロケ地が豪雨と洪水に見舞われ、制作はたびたび中断を余儀なくされた。米国では2027年前半の放送・配信が見込まれているが、具体的な開始日や日本での配信予定は発表されていない。

■干ばつを描く「誓約の剣」

第78回プライムタイム・エミー賞のレッドカーペットで、ダンクことサー・ダンカンを演じるピーター・クラフィと、従士エッグ役のデクスター・ソル・アンセルは、シーズン2の撮影が終了したことを明らかにした。

Entertainment Tonightの取材で、クラフィはシーズン2を「難しいセカンドアルバム」と表現し、セットや天候など多くの問題に直面したと振り返った。アンセルも、これまでで最も困難でありながら、やりがいのある仕事だったと語っている。ショーランナーのアイラ・パーカーもThe Hollywood Reporterの取材で、「過酷な、過酷なシーズンだった」と撮影の難しさを説明していた。

シーズン2は、ジョージ・R・R・マーティンによるダンクとエッグの中編シリーズ第2作「誓約の剣」を映像化する。同作は2003年に発表され、日本では「草臥しの騎士」「謎の騎士」とともに原作小説『七王国の騎士』に収録されている。

物語の舞台は、シーズン1で描かれたアッシュフォードの出来事からしばらく後のウェスタロスだ。ダンクとエッグは、リーチ地方の小領主サー・ユースタス・オズグレイに仕えることになる。長期の干ばつが続くなか、ユースタスと近隣の領主レディ・ロハン・ウェバーの間で、小川の水をめぐる対立が起きる。

シーズン2ではピーター・マランがユースタス、ルーシー・ボイントンが「赤き未亡人」の異名を持つロハン、バボー・シーセイがサー・ベニスを演じる。地方の小さな水争いとして始まった対立は、主君への忠誠、領民の暮らし、過去の政治的対立が絡み合う問題へと広がっていく。

■誓いと良心の間で揺れるダンク

クラフィはThe Playlistの取材で、シーズン2について「まったく違う。悲劇的なラブストーリーだ」と語った。馬上槍試合を中心に展開したシーズン1とは異なり、ダンクは主君への奉仕と自らの正義感との間で難しい選択を迫られる。

「誓約の剣」とは、特定の主君に剣と奉仕を誓う騎士を指す。ダンクは生活の糧を得るためにユースタスに仕えるが、その忠誠はロハンの領民の利益や、自身が正しいと考える行動と衝突していく。題名はダンクの職分を示すとともに、誓いがどこまで人を拘束するのかという物語の中心的な問いを表している。

中世ヨーロッパの騎士道には、主君への忠誠、弱い立場の人を守る責務、名誉ある行動といった複数の理想が含まれていた。それらは常に両立するとは限らず、文学作品でも騎士が相反する義務の間で葛藤する姿が描かれてきた。「誓約の剣」におけるダンクの苦悩は、こうした騎士道物語の伝統を読み解く補助線になる。

ダンクは主君への忠誠を軽視しているわけではない。だからこそ、その忠誠が他者への不当な扱いにつながり得ると気付いたとき、葛藤はいっそう深くなる。大規模な戦争やドラゴンではなく、一人の騎士の判断を通してウェスタロスの社会を描くことが、シーズン2の大きな特徴となりそうだ。

クラフィはGold Derbyのイベントで、シーズン2ではダンクが一人で行動する場面が多かったと説明している。登場人物としての孤立と撮影時の経験が重なり、シーズン1とは異なる仕事になったという。

■水をめぐる争いが映す社会

「誓約の剣」の対立は、限られた水を誰がどのように利用するかという問題から始まる。現実の水利制度にも、水路に接する土地の所有者が水を合理的に利用する権利を持つと同時に、ほかの土地所有者の利用を著しく妨げてはならないとする河岸権の考え方がある。

河岸権は英国のコモンローを起源の一つとし、時代や地域によって自然流量の維持を重視する考え方と、各所有者による合理的な利用を認める考え方が発達してきた。水量が減少すれば利用者間の利害が衝突しやすくなり、単純な所有権だけでは解決できない問題が生じる。

物語の舞台であるリーチは、ウェスタロス有数の農業地帯として描かれている。その土地を干ばつが襲い、小川の流れが細くなることで、二つの領地の境界をめぐる争いが人々の生活に直結する。水路をめぐる対立は、領主同士の面子だけでなく、その支配下で暮らす人々に何が起きるのかを示す装置になっている。

こうした構造は、水の不足が土地利用や共同体間の緊張を高めてきた現実の歴史とも重なる。作品設定を特定の法制度にそのまま対応させるのではなく、限られた資源の配分が政治的、道徳的な対立に変わっていく過程に共通点を見いだせる。

■架空の干ばつと現実の洪水

干ばつに見舞われた土地を撮影するため、制作陣はベルファストの撮影拠点を離れ、乾燥した景観を求めてカナリア諸島へ向かった。ところが、現地では2026年春に暴風雨による豪雨と洪水が発生した。

パーカーはThe Hollywood Reporterに対し、「干ばつを撮影するために選んだ場所が、100年に一度の嵐に見舞われた」と説明した。ロケ地は繰り返し雨に見舞われ、洪水や非常事態への対応によって撮影を休止せざるを得なかったという。制作陣は代替案を検討しながら撮影を続け、場所を移して必要な場面を収録した。

カナリア諸島では2026年3月、暴風雨テレーズの影響で洪水や土砂災害、道路の通行止めなどが発生した。グラン・カナリア島やテネリフェ島では洪水リスクを受けた緊急対応が実施され、一部の住民が避難を余儀なくされた。

干ばつから豪雨や洪水へ短期間で移行する現象は、「ウェザー・ホイップラッシュ」や「水文気候ホイップラッシュ」と呼ばれる。Nature Waterに2026年5月に掲載された解説論文は、2024年から2025年にテキサス、メキシコ、ブラジル、スペイン・バレンシアで起きた干ばつから洪水への急激な転換を取り上げた。著者らは、こうした変化が防災計画や土地利用、緊急対応に新たな課題をもたらしていると指摘している。

気温の上昇に伴って大気が保持できる水蒸気量が増えることは、強い降水が激しくなる物理的な背景の一つである。一方、個別の洪水がどのように発生するかは、大気の流れ、地形、土壌の状態、土地利用など複数の条件によって決まる。

この研究はカナリア諸島の洪水を直接分析したものではない。それでも、乾燥した土地が短期間に豪雨へ見舞われ、撮影計画が大きく変わった出来事は、干ばつと洪水という両極端の現象が連続して起こり得ることを考える手掛かりになる。水をめぐる社会的な緊張を描いた物語と、変動の大きな天候に直面した制作現場との間に、思いがけない共通構造が生まれた形だ。

■エミー賞で9部門にノミネート

「ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ」シーズン1は、第78回プライムタイム・エミー賞でドラマシリーズ作品賞を含む9部門にノミネートされた。クリエイティブ・アーツ・エミー賞では、「慈母の名において」でスタント・パフォーマンス賞を受賞している。

シーズン1は、原作の「草臥しの騎士」を全6話で映像化した。王位をめぐる大規模な戦争ではなく、名もないに等しい騎士ダンクと、彼の従士になったエッグの関係を中心に据えた作品である。日本では字幕版と日本語吹替版がU-NEXTで配信され、デジタル販売やブルーレイ、DVDも展開されている。

シーズン2が映像化する「誓約の剣」には、水争いの背後にブラックファイア家をめぐる政治的な歴史がある。ユースタスは、かつてターガリエン王朝に反旗を翻したブラックファイア家を支持していた。一方、エッグは身分を隠して旅をするターガリエン家の王子である。

そのため、ダンクがユースタスに仕えることは、主君と領民の間の道徳的な問題だけでは終わらない。過去の内戦で誰を支持したのか、現在の王権に対する忠誠をどう考えるのかという政治的な緊張も加わる。小川をめぐる地域の争いが、統治の正当性や過去の敗者が抱える記憶へつながっていく。

パーカーによると、シーズン2にはマーティンが保管していた未発表の文章を基にした要素も盛り込まれる。パーカーは、それらをマーティンの設定上、正史に当たる素材だと説明している。原作の読者にとっても、まだ活字になっていない場面や設定が注目点となる。

■米国では2027年前半を予定

「ナイト・オブ・ザ・セブン・キングダムズ」シーズン2は、米国で2027年前半にHBOとHBO Maxで放送・配信される見込みだ。2026年9月16日時点で、具体的な開始日は発表されていない。

日本ではシーズン1が「HBO Max on U-NEXT」の作品として独占配信されたが、シーズン2の国内配信時期や配信方法は正式発表されていない。

原作を先に読みたい場合は、日本語版『七王国の騎士』で「誓約の剣」を読める。同書には、シーズン1の原作となった「草臥しの騎士」と、シリーズ第3作「謎の騎士」も収録されている。

元記事: Knight of the Seven Kingdoms Season 2 Survived Real Floods Filming Fictional Drought

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード