クアルコムとアマゾン、AWS向けAI推論半導体を共同開発―購入連動型ワラントは最大2500万株

2026年9月10日 00:31

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記事提供元:Tech Times

Photo by Daniel Mainye on Unsplash

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米クアルコム(Qualcomm)と米アマゾン(Amazon)は、AWSの大規模AIデータセンター向けに、カスタムAI推論半導体と高速光接続技術を複数世代にわたって共同開発する。クアルコムはAmazonの関連会社に最大2500万株を取得できるワラントを発行したが、広く報じられた「最大600億ドル」は確定した購入額や売上高ではなく、ワラントの段階的な権利確定に関係する購入額の上限である。

■AWS向けAI半導体と光接続を共同開発

クアルコムは2026年9月8日、Amazonと複数世代にわたる製品開発で協力すると発表した。両社はAWSの大規模AIデータセンターを対象に、AI推論向けのカスタム半導体を共同開発する。

提携には、高性能な光接続技術の開発も含まれる。両社はクアルコムの高速SerDesと光デジタル信号プロセッサー(DSP)を活用し、最大毎秒1.6テラビット(1.6T)に対応する接続技術と、その後継世代のソリューションに取り組む。

SerDesは、チップ内部で並列に処理されるデータと、高速接続で使われるシリアル信号を相互に変換する技術である。AIデータセンターでは、演算装置だけでなく、サーバーやラック間で大量のデータを効率よく移動させるネットワークもシステム全体の性能を左右する。

クアルコムは提携の一環として、電子設計自動化(EDA)関連の処理にAmazon Bedrockを含むAWSのAIインフラをこれまで以上に利用し、半導体の設計サイクル短縮を目指す。

■最大600億ドルは確定受注ではない

クアルコムが米証券取引委員会への提出書類で開示した契約では、Amazonの関連会社に対し、クアルコム株を最大2500万株取得できるワラントが発行された。行使価格は1株当たり161.26ドルで、期限は2036年9月3日となっている。

全2500万株を行使価格で取得した場合の支払額は約40億ドルとなる。ただし、これはワラント自体の価値を示すものではない。実際の経済的価値は、権利が確定した株式数、行使時のクアルコム株価、行使方法などによって変わる。

発行時点では最大株式数の15%に当たる375万株について権利が確定した。残る株式の権利は、商業契約や拘束力のある注文、クアルコムのサーバー向け半導体、技術、システム、製造サービスなどの実際の購入に応じて段階的に確定する。

600億ドルという数字は、こうした権利確定条件に関係するAmazon側の支払額の上限である。Amazonが600億ドルの購入を確約したことを意味せず、クアルコムの確定受注や売上高として計上された金額でもない。当初の購入コミットメントの具体的な金額は公表されていない。

クアルコムのアカシュ・パルキワラ最高財務責任者(CFO)は、Amazonとの取り組みによる売上高がクアルコムの2027年度第1四半期、すなわち2026年12月を含む四半期から発生するとの見通しを示した。また、関連する半導体はすでに生産段階に入っていると説明している。

■LPDDRでメモリ容量を重視するAI200

クアルコムがデータセンター向けに展開するDragonfly AI200は、AI推論に特化したラックスケールのアクセラレーターで、カード1枚当たり768GBのLPDDRメモリを搭載する。もう一つの次世代製品であるAI250は、2027年の提供が計画されている。

生成AIの推論処理は、ユーザーの入力をまとめて処理するプリフィルと、その後にトークンを順次生成するデコードに大別できる。モデルの規模や処理方法によって、必要な演算性能、メモリ容量、メモリ帯域幅のバランスは異なる。

AI200は、高いピーク帯域幅を持つHBMではなく、大容量のLPDDRを採用することで、モデルの重みや推論中のデータをメモリ内に保持しやすくする設計を取る。クアルコムは、メモリ容量とコスト効率を重視することで、生成AIやエージェント型AIの推論におけるトークン当たりのコスト低減を狙っている。

AI250には、演算機能をメモリの近くに配置するニアメモリ・コンピューティング方式が採用される予定だ。クアルコムは、従来型のDRAM構成と比べて実効メモリ帯域幅を10倍超に高め、消費電力も削減できるとしている。これらは同社が公表した設計上の目標であり、AWS向けカスタム半導体の具体的な製品名や構成、独立した性能評価は明らかになっていない。

■Alphawaveの接続技術をデータセンター戦略に活用

クアルコムは2025年6月、Alphawave Semiを企業価値約24億ドルで買収することで合意し、同年12月18日に手続きを完了した。Alphawave Semiは、高速有線接続向けのIP、カスタム半導体、接続製品、チップレットを手掛けてきた。

今回のAmazonとの提携には、Alphawave Semiが強みを持つSerDesや光接続関連の技術が活用される。AIデータセンターでは、アクセラレーターを増やすだけでなく、それらを結ぶネットワークの帯域幅や消費電力も重要になる。演算用半導体と接続技術を一体的に設計することは、クラスター全体のデータ経路を最適化するうえで重要な意味を持つ。

クアルコムが2025年に発表したAI200とAI250も、複数世代にわたるデータセンター向けAI推論製品のロードマップに位置付けられている。今回の提携により、同社は演算処理だけでなく、ラックやサーバー間のデータ転送を含むAIインフラ全体へ事業領域を広げる。

■AWSの既存半導体との関係は未公表

AWSは、AIモデルの学習向けにTrainium、推論向けにInferentiaという独自アクセラレーターを提供している。一方、今回の公式発表では、クアルコムと共同開発するカスタム半導体がTrainiumやInferentiaを置き換えるとは説明されていない。

共同開発品の具体的な名称、AWSでの提供形態、対応するワークロード、導入規模、一般顧客が利用できるサービスとして提供されるかどうかも公表されていない。このため、現段階ではAWSのAIインフラに新たな半導体の選択肢を加える提携として捉えるのが適切である。

■ソフトウェア基盤も強化

データセンター向けAI半導体では、ハードウェア性能だけでなく、既存のAIモデルやフレームワークを効率よく動かすソフトウェア環境が普及を左右する。NvidiaはCUDAを中心とする開発基盤を持ち、クアルコムにとってソフトウェアの整備はデータセンター市場へ参入するうえで重要な課題となる。

クアルコムは2026年6月にAIソフトウェア企業Modularの買収契約を発表し、同年7月に買収を完了した。Modularは、CPU、GPU、NPU、カスタムASICなど、異なる種類の演算装置でAIモデルを展開するための統合ソフトウェア基盤を開発している。

クアルコムはModularの技術を通じ、特定の半導体だけに依存しないオープンなAIソフトウェア環境の構築を目指す。AWSとの共同開発品でModularのソフトウェアがどのように使われるかは公表されていないが、同社のデータセンター戦略では、AI半導体、接続技術、ソフトウェア基盤を組み合わせる体制が整いつつある。

■評価は今後の製品仕様と購入実績が焦点

今回の提携により、クアルコムはAWSのAIインフラを対象とした複数世代のカスタム半導体開発に参加する。最大1.6Tの光接続技術も共同開発の対象となり、演算とネットワークの両面を扱う点が特徴である。

一方、600億ドルは将来の購入可能額に連動したワラント条件の上限であり、Amazonによる確定発注額ではない。AWS向け半導体の仕様、導入規模、提供形態、実際の性能やコスト効率もまだ明らかになっていない。

提携の事業規模を判断するうえでは、今後公表される製品仕様やAWSでの導入方法に加え、Amazonによる実際の購入額と、それに伴うワラントの権利確定状況が焦点となる。

元記事: Qualcomm Wins First Western Hyperscaler: AWS Deal Pays Up to $60B for Inference Silicon

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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