ジェネリック大手:日医工の「海外展開」を見守りたい

2020年7月15日 18:53

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 ジェネリック医薬品(以下、ジェネリック)大手の日医工の田村友一社長に「経営者」を痛感したのは、2016年にセージェント社(米国の注射剤のジェネリックメーカー)を約750億円で買収した時のことだった。

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 セージェント社のCEOは契約の成立直後に、「今後とも経営の舵取りは当方に任せてもらいたい」と切り出してきた。これに対して田村氏は即座に「NO」と応じ、14億円の退職金を払い辞めさせた。後任には日本での取引先からスカウトしたドイツ人を当てた。

 田村氏は件のCEOの提案に辞任を即決した理由を「受け入れたのでは統制が取れないと直感した。M&Aの後に最も肝心なのは意思の疎通が図られ、会社が1つになることだ」と断言した。

 現在、日医工は22年3月期を最終年度とする第8次中計を進めている。『「グローバル総合ジェネリックメーカー」へとさらなる進化を遂げる』と目標を掲げている。具体的には「世界トップ10のジェネリックメーカー入り」を果たし、その座を盤石なものにしようという計画だ。

 それには、海外事業の拡充が必須条件となる。22年3月期の「海外売上高600億円(20年3月期実績351億円)」を打ち出したのも、そのためだ。

 足元の環境は、決して容易ではない。政府が目標としている「ジェネリック比率80%」に限りなく近づきつつある。消費税増税による薬価改定(引き下げ)に利益が圧迫されている。また概ね2年に1回だった改定が、20年4月以降は毎年行われる予定となっている。

 だが日医工は、環境を正確に把握している。それは前3月期の収益に顕著に見て取ることができる。「14%の増収、65%の営業減益、23%最終減益」。

 アナリストは「今期は骨粗鬆症薬など新薬の寄与で急回復の計画だが、国内の厳しい環境は基本的に当面引き続こう」とした上で、「となると、やはり要は海外。その意味で日医工が適切な(内外の)M&A戦略を執っている点は評価に値する」とした。

 19年4月にはエーザイから株を買い増しして、付加価値型ジェネリックに強みを持つエルメメッドを完全子会社化。今後の主戦場となるバイオシミラー(細胞培養技術を用いたバイオ医薬品のジェネリック)でも、11月にあゆみ製薬から買収した「エタネルセプトBS皮下注射薬」の販売を開始。またスペインから導入したベバシズバイオシミラーの国内申請に向け準備を進めている。

 特許切れでジェネリックが可能になる薬の推移にもよるが、日医工の海外市場への挑戦をとくと見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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