コラーゲンマイクロファイバーを基材とした人工靱帯に関する研究成果が第7回 世界獣医整形外科会議にて発表されました

プレスリリース発表元企業:新田ゼラチン株式会社

配信日時: 2026-10-26 18:46:02



ゼラチン・コラーゲンペプチドの製造販売を行う新田ゼラチン株式会社(代表取締役社長:竹宮秀典、本社:大阪府八尾市)は、断裂したイヌの前十字靱帯を再建するための「コラーゲン人工靱帯」の製品化を目指し、日本大学生物資源科学部獣医学学科の枝村一弥教授らの研究チームと共同研究を行っています。この取り組みには、北海道大学と進めているヒト用の医療技術開発と相互に連携することで、人医学と獣医学の相乗効果により開発を効率化・加速させる「ワンヘルス(One Health)」のアプローチを取り入れています。
この度、この度、イヌ膝関節組織を用いた生体力学的評価において、この人工靱帯を用いた解剖学的再建術が、天然の前十字靱帯と同等の張力および膝関節安定性を示すことが実証されました。なお、本研究成果は2026年9月に開催された世界獣医整形外科会議(WVOC:World Veterinary Orthopedic Congress)にて、日本大学生物資源科学部により発表されました。

[表: https://prtimes.jp/data/corp/77613/table/40_1_d785192eec623b7736075d35b9d58366.jpg?v=202610262015 ]

■ 背景と課題
前十字靱帯(CrCL)は、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぎ、膝関節を安定させる靱帯です。イヌの前十字靱帯が切れてしまった場合、切れた靱帯を直接つなぐのではなく、すねの骨を少し切って角度や位置を調整し、歩くときに膝がずれない仕組みを作る手術(TPLO*1やTTA*2など)が広く行われています。一方、人間の医療では、患者さん自身の腱を移植して本来の形を再現する「関節内解剖学的再建術」*3(図1)が一般的です。イヌの医療でも人工靱帯を使った再建手術が研究されていますが、実はコラーゲンだけで作られた人工靱帯の性能を詳細に評価した研究は、これまでありませんでした。
もともと腱や靱帯は「細いコラーゲン繊維の束」でできています。そのため、コラーゲンから人工的にこの繊維を作って新しい人工靱帯を生み出そうという試みは、世界中で行われてきました。しかし、これまでの作り方では大量生産が難しく、イヌの膝に生じる張力に耐えられるほどの強度も作れなかったため、前臨床における機能検証が困難な状況が続いていました。

*1: 脛骨高台水平化骨切り術のこと。脛骨(すねの骨)の一部を切って関節面の傾斜を平らに調整する手術です。これにより、歩行時に太ももの骨が後ろへ滑り落ちるのを防ぎ、膝関節を安定させることができます。
*2: 脛骨結節推進術。脛骨(すねの骨)の前側を切り出して前に押し出すことで、膝蓋腱(膝のお皿と脛骨を繋ぐ太い腱)の角度を変える手術です。太ももの筋肉が引っぱる力を利用して膝関節にかかる負担の向きを調整し、歩行時に膝が前にずれるのを防ぎます。
*3: 傷ついた靱帯を切り取り、代わりに自分の腱などを関節の中に通して、本来の靱帯があった場所や形(解剖学的な構造)を元通りに作り直す手術です。移植された腱はいったん構造が壊れ、強度が低下した後、徐々に靱帯へと変化(リモデリング)すると考えられています。



図1.ヒトの膝前十字靱帯(ACL)の「関節内解剖学的再建術」の模式図(Google Geminiにより作成)
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-fb829c6e5f057e05ea77c22187305ed6-2375x2545.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]





断裂したACLは除去され、ACLのあった場所に患者さん自身の腱が移植され(図中の矢印)、ACL本来の形が再現されます。イヌの前十字靱帯(CrCL)でも同様の治療が待望されていますが、いまだ実現されていません。


■ 研究目的
本研究の目的は、CrCL断裂イヌの膝関節モデルにおいて、コラーゲンマイクロファイバー(CMF)(図2)で作製した人工靱帯による関節内解剖学的再建術を行い、そのバイオメカニクス的特性を評価することです。CMFは当社の独自技術である「延伸紡糸法」で作製しました。関節内解剖学的再建術を成立させるには、留置初期の耐荷重強度と、その後のリモデリングによる靱帯化プロセスが不可欠です。本研究は、従来のコラーゲン製素材では達成が難しかった「十分な関節安定性の獲得」を実証するものであり、製品化に向けた開発フェーズの第一段階(概念実証)にあたります。


図2.当社独自の延伸紡糸法で作製されたコラーゲンマイクロファイバー(CMF)(2026年9月に国内特許登録)
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-8ea7e31b70e45fd2add2e7edf240410d-1072x637.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]




■ 実験方法
1. CMF製人工靱帯の作製(図3)
当社独自技術であるコラーゲンの延伸紡糸法(2026年9月 特許登録)により、直径約25µmのCMFを紡糸しました。紙管に巻き取ったCMFをループ状に回収し(図3A)、化学処理によりCMFを強化しました(図3B)。強化後のループ状CMFを撚ることにより緻密化し、CMF製人工靱帯を作製しました(図3C)。


図3.CMF製人工靱帯の作製工程
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-346128aa88ed980ae3594fedca7b4677-3325x2045.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]



2.イヌ関節組織を用いた力学機能評価
(1) 供試標本および群分け
本研究にあたっては、新たな動物実験は行っておらず※、他用途にて適切に処置されたイヌの関節組織(計6標本)を有効活用して供試標本としました。評価対象として、以下の計4群を設定しました。
・対照群: CrCLが無処置の正常膝(図4A)
・完全断裂群: CrCLが切れた膝(図4B)
・一重束再建群(一重束群)*4: 1本のCMF製人工靱帯を用いて再建を行った膝(図4C)
・二重束再建群(二重束群)*5: 2本のCMF製人工靱帯を用いて再建を行った膝(図4D)
※本評価は、動物福祉における「3Rの原則」に基づき、新たな実験動物の犠牲を生じさせないよう、他用途で採取された組織標本を再活用して実施いたしました。


図4.計4群の供試標本(イヌ膝関節モデル)および固定されたCMF製人工靱帯の模式図(Google Geminiにより作成)
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-cfba0a504b864369c38a56f0dd15ff28-1024x833.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


(A) 対照群 (B) 完全断裂群 (C) 一重束再建群。図中の黒矢印は留置された1本のCMF製人工靱帯
(D) 二重束再建群。図中の黒矢印は、前側に位置する靱帯(前内側帯という)の位置に留置されたCMF製人工靱帯。白矢印は、後側に位置する靱帯(後外側帯という)の位置に留置されたCMF製人工腱
(EおよびF)それぞれ、一重束再建群において大腿骨側と脛骨側へ固定されたCMF製人工靱帯

*4、*5: ヒトの膝前十字靱帯(ACL)と同様、CrCLは解剖学的に「前内側束(AM束)」および「後外側束(PL束)」という2つの線維束で構成されています。人医療では、ACLを1本の束とみなして1本の自家腱を移植する「一重束再建」と、本来の解剖学的構造を再現するために2本の自家腱を移植する「二重束再建」が行われています。

(2) 骨トンネル作成および移植片の固定
大腿骨および脛骨の前十字靱帯が付着していた位置に骨トンネルを作製しました。CMF製人工靱帯を骨トンネルに通し、大腿骨側および脛骨側でそれぞれ固定しました(図4Eおよび4F)。

(3) 生体力学的評価
再建後の生体力学的評価を以下の3つの手法で実施しました。なお、試験時の膝関節の角度は、イヌが四つ脚で立っている状態での自然な膝関節の角度(140°)、座っている状態での角度(80°)、およびその内分値を反映させています。
靱帯張力の測定:大腿骨-脛骨の膝関節角度を140°~80°に設定し、デジタルフォースゲージを用いて張力を計測しました。「人工靱帯が正常な前十字靱帯と同じような自然な張りを再現できているか」を調べる実験です。
脛骨前方変位量の測定:膝関節の角度140°および80°において、太ももからすねへ荷重をかけるテストを行い、すねの骨(すねの出っ張り部分)の前方向へのズレを測定しました。「膝関節の前後方向の安定性」を調べる実験です。
内旋時変位量の測定:膝関節角度140°および80°においてすねの骨を内側にひねり、そのときに、すねの出っ張り部分がどれくらい動くかを測定しました。「膝関節のひねりに対する安定性」を調べる実験です。


■ 結果と考察
1.靱帯張力
膝関節の角度140°において、一重束再建群は、対照群(正常膝)と同等の靱帯張力を維持していました。二重束再建群は、対照群よりも高い張力を示しました。膝関節の角度が小さくなる(立っている状態から座っている状態へと膝が屈曲する)につれて、どの群も靱帯張力が低下する傾向を示しましたが、特に二重束再建群で強い低下傾向が観察されました。関節の角度80°において、一重束再建群および二重束再建群ともに、対照群と同等の高い靱帯張力を維持していました。以上の結果から、CMF製人工靱帯による一重束再建は、膝関節角によらず健常なCrCLと同等の張力を示すと考えられました。二重束再建は、イヌが立っている状態において特に高い張力保持を示すと考えられました。


図5.各試験群の靱帯張力の測定結果(完全断裂群は試験実施不可)
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-e3678d3034f54fb81ebc6273e645c07e-3900x2841.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]





2.脛骨前方変位量
膝関節の角度140°において、一重束再建群は頭側への脛骨の変位量(すねの骨の前方向へのズレ)が完全断裂群よりも明らかに小さく、対照群と同等レベル(約3.5 mm)まで変位量が減少(関節安定性が改善)しました。二重束再建群においても、完全断裂群より変位量が明らかに減少しました。変位量の減少幅は二重束再建群の方が一重束再建群よりも小さく見えますが、二重束再建群との統計学的な違いはありませんでした。
また、膝関節の角度80°においても、一重束再建群および二重束再建群ともに、対照群(約3.8 mm)と同程度のレベル(約3.5~3.8 mm)まで変位量が減少しました。


図6.脛骨前方変位量測定の結果
[画像6: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-8deca7091bb8823a5dde09b37206731e-3900x1493.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


図中の*は、群間の差が単なる偶然により得られた可能性が5%未満(100回試験して5回未満)であり、「偶然ではなく、明確な差や効果がある」(統計的に有意な差である)と判断できたことを示します。

3.内旋時変位量
膝関節の角度140°において、一重束再建群および二重束再建群ともに、内側への脛骨の変位量は完全断裂群(約6.5 mm)よりも明らかに減少しました。変位量は対照群(約3.2 mm)と同等であったことから、イヌが立っている状態において正常膝と同等の関節安定性が獲得されたと考えられました。
また、膝関節の角度80°において、一重束再建群および二重束再建群ともに、完全断裂群(約6 mm)から有意に変位量を減少させ、対照群(約2.5 mm)と同等レベルまで回復しました。イヌが座っている状態において正常膝と同等の関節安定性が獲得されたと考えられました。


図7.内旋時変位量測定の結果
[画像7: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-cea5747ca7bcf4dd7d5af26d41771252-3900x1529.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


※図中の*については図6の説明をご参照ください。


■ まとめと今後の展望
コラーゲン製バイオマテリアルは吸水状態での機械的強度が極めて低いことが課題でしたが、CMFを骨格材料として応用することで、優れた機械的特性の獲得が可能となりました。CMF製人工靱帯を用いた解剖学的再建術は、イヌのCrCL断裂に対する新たな治療アプローチとして高い応用可能性を有していると結論付けられました。
膝関節の解剖学的再建術の実用化に向けては、本研究で示された留置初期の関節安定性に加え、組織リモデリングを介した靱帯化の達成が鍵となります。日本大学生物資源科学部との連携のもと、今後は、前臨床段階としての生体内における中長期的な靱帯化プロセスおよび生体適合性の詳細な検証に取り組んでまいります。


[画像8: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77613/40/77613-40-761906762e62c655213cd29e0e43f32a-1053x161.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]新田ゼラチン株式会社
市場   :東証スタンダード(証券コード4977)
代表者  :代表取締役社長執行役員 竹宮 秀典
本社所在地:〒581-0024 大阪府八尾市二俣2丁目22
創業   :1918年(大正7年)1月
設立   :1945年(昭和20年)2月
事業内容 :
  ゼラチン(製菓用、総菜用、カプセル用、医療素材用、写真用ほか)
  コラーゲンペプチド(美容用・健康食品用ほか)
  コラーゲン(医療素材用ほか)
  食用ゲル化剤・安定剤(デザートゼリー用、総菜用、飲料用ほか)
URL   :https://www.nitta-gelatin.co.jp/ja/index.html

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