世界初、未破裂脳動脈瘤患者の精神的負担を科学的に裏付け
配信日時: 2026-03-25 17:13:29

-血中SITH-1抗体価による客観的ストレス評価-
東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 小関宏和助教、府賀道康講師、石橋敏寛教授、村山雄一教授、疲労医学講座 近藤一博特任教授、ウイルス学講座 岡直美講師、総合健診・予防医学センター 伊藤恭子教授らの研究グループは、ストレス関連タンパク質「SITH-1」の血中抗体価を用いて、未破裂脳動脈溜患者が健常者より有意に高いストレス状態にあることを世界で初めて客観的・定量的に示しました。脳動脈瘤診療におけるメンタルケアの重要性を訴える画期的な成果です。
本研究の成果は、Scientific Reports誌に2026年3月24日付けで掲載されました。
【概要】
背景と課題
慢性的な精神ストレスはさまざまな疾患と関連することが知られていますが、くも膜下出血の主な原因である脳動脈瘤との関連は長らく不明でした。 これまでのストレス評価はアンケートなど主観的な手法に頼るしかなく、客観的・定量的に測定できる指標がありませんでした。
近年注目されているSITH-1タンパク質は、精神的ストレスの客観指標として有力視されており、 SITH-1が高い人はうつ病の発症率が低い人の12倍に上るという報告もあります。 本研究ではこのSITH-1の血中抗体価と脳動脈瘤との関連を、前向き多施設共同研究で検証しました。
方法と結果
2021年6月から2023年9月にかけて、本学附属病院を含む5つの医療機関にて破裂性脳動脈瘤患者、未破裂性脳動脈瘤患者、および健常者を前向きに登録し、血液検体から抗SITH-1抗体価を測定しました。破裂脳動脈瘤患者24名、未破裂脳動脈瘤患者26名、健常者23名の血液検体を解析した結果、未破裂脳動脈瘤群における抗SITH-1抗体価は、他の群と比較して有意に高値でした。また、同群において、脳動脈瘤と診断された時点から本研究への登録までの期間と抗SITH-1抗体価に正の相関が見られました。これらの結果により以下の知見が得られました。
・未破裂脳動脈瘤患者の抗SITH-1抗体価は、破裂患者・健常者と比較して有意に高く、慢性的な精神ストレス状態にあることが客観的に示された。
・未破裂脳動脈瘤と診断されてからの期間が長いほどSITH-1抗体価が高く、「診断後の慢性ストレス蓄積」が大きい。
・慢性的な精神ストレスが脳動脈瘤の破裂に直接的な役割を果たす可能性は低い。
今後への展望
本研究は脳血管疾患でSITH-1の有用性を示した世界初の報告です。ストレスが動脈瘤の増大リスクにどの程度関与するかの解明も期待され、 未破裂脳動脈瘤患者に対するメンタルケアの必要性が強く示唆されます。
さらに、SITH-1による客観的ストレス定量化は、脳動脈瘤に限らずあらゆる疾患患者のメンタルケア指標として、 また「ストレスと疾患の相互関係」を探る新たな研究ツールとしての活用が期待されます。
本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課
メール:koho@jikei.ac.jp
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