ロールス・ロイス、UltraFan 30に英政府支援の合意間近と報道 単通路機市場への復帰狙う

(rolls-royce.com)[写真拡大]
ロールス・ロイスが、単通路機向けのUltraFan 30実証エンジンの開発・地上試験に向け、英政府から1億〜2億ポンド(約210億~420億円)の支援を受ける合意に近づいている。Financial Timesが2026年10月22日、交渉について説明を受けた2人の話として報じた。発表は早ければ翌週にも行われる可能性があるという。
UltraFan 30は、同社が次世代の単通路旅客機用エンジン市場への復帰を目指す技術実証計画だ。政府との交渉は続いており、支援は実証機の開発と試験に充てられる見通しである。
■単通路機市場への復帰とエンジン選定の時期
ロールス・ロイスは2011年10月、エアバスA320ファミリー向けのV2500エンジンを手がけるInternational Aero Engines(IAE)の持ち分を、プラット・アンド・ホイットニーへ売却することで合意した。取引は2012年6月29日に完了した。
売却後も同社は、高圧圧縮機やファンブレードなどの製造、技術支援、V2500エンジンの50%の最終組立を担うと発表していた。UltraFan 30への取り組みは、こうした部品供給などの関与を経て、次世代機向けのエンジン供給者として市場に戻ることを目指すものだ。
現在の単通路機向け市場では、GEエアロスペースとサフランの合弁会社CFMインターナショナル、プラット・アンド・ホイットニーが有力な供給者となっている。代表的なエンジンは、それぞれLEAPとGTFである。ロールス・ロイスにとっては、既存の供給者が強い地盤を持つ市場への挑戦となる。
米航空宇宙学会の専門誌Aerospace Americaによると、トゥファン・アーギンビルギッチ最高経営責任者(CEO)は2026年7月、エアバスとボーイングが約2年以内にエンジン供給者を決めるとの見方を示した。エアバスは次世代単通路機の開発計画を2030年に立ち上げることを目標としており、ボーイングは市場、技術、財務面の準備状況を踏まえて新型機を発表する方針だ。
機体メーカーの選定に向けて技術を成熟させることが、復帰の鍵を握る。2028年に予定するUltraFan 30の地上試験は、そのための重要な節目となる。
■推力3万ポンド級、燃料消費量20%削減を目標
UltraFan 30は、ファンの駆動に減速機を用いるギヤード・ターボファンの実証機だ。ロールス・ロイスは、単通路機向けのUltraFan 30と、より大型の双通路機向けUltraFan 80に、拡張可能なUltraFanの技術群を展開している。
専門メディアLeeham Newsによると、アーギンビルギッチCEOは2026年2月、UltraFan 30を最大3万ポンド重の推力を持つ実証機として説明した。地上試験は2028年を予定しており、大型旅客機やビジネスジェット向けエンジンの開発で培った技術を単通路機向けに生かす。
同社の公式資料では、現在運用されているエンジンに対して燃料消費量を20%削減することを目標に掲げている。燃料消費量の低減は、航空会社の燃料費と運航時の二酸化炭素排出量を抑えるうえで重要な要素となる。
UltraFan 80では、2023年に英ダービーの専用施設で試験を実施し、同年11月に最大出力での運転を達成した。同社によると、この試験では100%の持続可能な航空燃料(SAF)を使用した。UltraFan 30も、当初から100%SAFに対応する設計方針を示している。
将来の燃料や推進方式に向けた研究も進む。ロールス・ロイスは水素を燃料とするガスタービン技術の研究に取り組み、Pearl 15を基にした実証エンジンで燃料供給系や運転制御を試験している。燃料消費量の削減と代替燃料への対応を並行して進めることが、同社の長期的な技術戦略となっている。
■実証機への公的支援と英国の雇用構想
今回報じられた1億〜2億ポンド(約210億~420億円)は、実証機の開発・試験に向けた初期支援に当たる。ロイターが2026年2月に伝えたFinancial Timesの報道では、新型エンジンの開発計画全体は約30億ポンド規模とされていた。実証段階の支援は、より長期にわたる開発投資の一部となる。
開発は国際的な研究協力も活用している。ロールス・ロイスは2026年3月、EUのClean Aviation共同事業体から、同社が主導するUNIFIED計画に6400万ユーロ(約113億円)の資金を確保したと発表した。UltraFan 30の2028年の地上試験と、その先の飛行試験に向けた技術成熟を支える計画だ。
英紙The Telegraphによると、アーギンビルギッチCEOは2026年7月、競合企業が自社より多くの政府支援を受けていると主張し、英国にも開発への資金拠出を求めた。同紙は、同社が新型エンジンを共同開発する産業パートナーの確保に向け、複数の相手と協議していることも報じている。
英国では、キア・スターマー氏の後任としてアンディ・バーナム氏が2026年7月20日に首相に就任した。バーナム首相は就任演説で、公共調達を活用して英国の産業を支え、再工業化を進める方針を示した。新型エンジンの開発・生産を国内に呼び込む構想は、こうした産業政策とも重なる。
ロイターによると、アーギンビルギッチCEOは7月、政府が計画を支援し、新型エンジンが単通路機に採用されれば、英国で4万人の雇用を生み出せるとの見通しを示した。同氏はまた、ドイツや米国を含む他国政府とも計画への支援について協議していると説明している。
■収益拡大を背景に次世代市場へ投資
開発投資を進める同社では、収益力も高まっている。2026年7月30日の上期決算発表によると、基礎営業利益は前年同期比46%増の約25億ポンド(約5250億円)となった。同社は同時に、2026年通期の基礎営業利益見通しを47億〜49億ポンド(約9870億~1兆300億円)へ引き上げた。
株主還元では、2026〜2028年の3年間で総額70億〜90億ポンド(約1兆4700億~1兆8900億円)の自社株買いを行う計画を進めている。2026年分として予定する25億ポンド(約5250億円)のうち、7月30日時点で14億ポンド(約2940億円)を実施済みとしていた。収益の拡大を背景に、株主還元と将来の成長に向けた投資を並行して進める構えだ。
航空専門メディアAeroTimeによると、ロールス・ロイスは、航空機生産が今後25年間で倍増するとの予測を市場復帰の機会として挙げている。UltraFan 30は、現在注力する大型旅客機向け事業で蓄積した技術を、単通路機という成長市場に広げる取り組みとなる。
今後の焦点は、公的支援の条件、共同開発体制、実証試験の進展、機体メーカーによる採用判断だ。英政府との合意が実現すれば、次世代単通路機向けの技術開発を前に進める足掛かりとなる。
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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