ボリビアの小型野生ネコ「ティルカヨ」、100年以上ぶりのネコ科新種に

2026年9月22日 17:06

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記事提供元:Tech Times

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ボリビアのユンガスに生息する小型の野生ネコが、新種Leopardus tilcayoとして記載された。地域で受け継がれてきた呼び名から「ティルカヨ」と命名された。現生のネコ科で、既知の亜種の格上げではない新種が記載されるのは100年以上ぶりとなる。

研究チームは、南米に分布するLeopardus属38個体の全核ゲノムを解析した。その結果、分類をめぐって議論が続いてきたタイガーキャット種群を5種に整理し、ペルーのユンガスに生息する個体群を新亜種Leopardus tigrinus antisuyoとして記載した。

■外見だけでは分からなかった新種

研究のきっかけとなったのは、ボリビアのセンダ・ベルデ動物保護区で飼育されている雄の個体「ティグリノ」だった。パオラ・ノガレス=アスカルンスは、この個体が既知のタイガーキャットとは異なる特徴を持つことに気付き、調査を進めた。

ティルカヨは淡い褐色の毛に、大きく不規則な暗色のロゼット模様を持つ。詳しく調べられた飼育個体は頭胴長約46センチ、体重約1.4キロで、平均的なイエネコより小さい。ただし、確認された個体が少ないため、これらを種全体の平均的な体格とみなすことはできない。

研究チームは、ティルカヨをタイガーキャットの近縁種から独立した進化系統と判断した。ゲノム解析では、その系統が近縁のタイガーキャット類から約140万年前に分岐したと推定されている。

ティルカヨのように外見がよく似ている一方、遺伝的に異なる系統は隠蔽種と呼ばれる。タイガーキャット類は体色や斑紋に地域差と個体差があり、写真や遠隔カメラの映像だけでは種を特定するのが難しい。

■全ゲノムと博物館標本で系統関係を解析

研究成果は2026年9月17日、学術誌「Current Biology」に掲載された。解析対象はLeopardus属の38個体で、このうち26個体が分類上の検討対象となったタイガーキャット種群に属していた。

研究チームは、特定の遺伝子領域だけを調べるDNAバーコーディングではなく、核ゲノム全体の情報を比較した。多数の遺伝的変異を横断的に調べることで、タイガーキャット各集団の系統関係や分岐の時期、過去の交雑を分析した。

38個体のゲノムには、現在の個体から得た試料や既に公表されていたデータに加え、欧米の自然史博物館に保存されていた8標本のデータも含まれる。骨や皮、歯などの博物館標本からゲノム情報を取り出す研究手法は「ミュージオミクス」と呼ばれる。

博物館標本の利用により、現在は試料を得にくい地域の個体群も比較対象に加えられた。特に、Leopardus tigrinusが最初に記載されたギアナ楯状地のタイプ産地周辺について、研究チームは初めてゲノムに基づく評価を行った。

■タイガーキャット種群を5種に整理

タイガーキャット類の分類は長く議論が続いており、近年の遺伝学的、形態学的研究では、従来まとめて扱われていた地域個体群を複数の種に分ける案が示されていた。今回の研究は全ゲノムに基づき、種群を5種として整理した。

5種は、Leopardus tilcayo、L. guttulus、L. emiliae、L. pardinoides、L. tigrinusである。このうちティルカヨはボリビアのユンガスで確認された新種で、L. tigrinusにはギアナ楯状地の基亜種と、ペルーのユンガスに生息する新亜種L. tigrinus antisuyoが含まれる。

新亜種名の「antisuyo」は、インカ帝国の東部地域を指した「アンティスユ」に由来する。ボリビアとペルーのユンガスは地理的に近いが、今回の系統解析ではティルカヨとL. tigrinus antisuyoは互いに最も近縁な分類群ではなかった。

分類の整理は、各地域の個体群がどのような進化史を持つかを理解する基礎になる。研究チームは、種間交雑の痕跡、各分類群の過去の個体数変動、遺伝的多様性の変化についても分析した。

■地域で受け継がれた呼び名を採用

「ティルカヨ」は研究者が新たに作った言葉ではなく、ボリビアのユンガスで地域住民がこのネコを指すために使ってきた呼び名である。研究チームは、地域に受け継がれてきた知識と動物との関わりを尊重し、その名称を学名に採用した。

語源や本来の意味は明らかになっていない。ノガレス=アスカルンスが住民に由来を尋ねたところ、祖父の世代がそう呼んでいたため自分たちも同じ名称を使っている、という趣旨の答えが返ってきたという。

センダ・ベルデで飼育されているティグリノは、新種を定義する基準となったホロタイプである。生きた個体をホロタイプに指定することは珍しいが、研究では個体を生かしたまま計測や撮影、遺伝試料の採取を行い、識別情報を記録している。

研究に含まれた遺伝的に確認済みのティルカヨは2個体に限られる。このほかにも野外で撮影、記録された個体はあるが、生息数や分布範囲を推定できるだけの情報はまだ得られていない。

■個別の保全評価に向けた基礎資料

ティルカヨはこれまでのところ、アンデス山脈東斜面に広がるボリビアのユンガスで確認されている。個体数、正確な分布域、繁殖、生態の多くは未解明である。

遠隔カメラなどの限られた記録からは、夜間や薄明薄暮時に活動する可能性が示されている。糞から小型げっ歯類の残骸も見つかっているが、食性の全体像を示すには、さらに多くの試料が必要となる。

IUCNレッドリストでは、今回の再分類以前から認められていたL. tigrinusとL. guttulusが、いずれも危急種に分類されている。ティルカヨを含む今回の分類単位については、2026年9月時点で個別のレッドリスト評価は公表されていない。

広い範囲を一つの種として評価した場合と、狭い分布域を持つ複数種に分けて評価した場合では、個体数や生息域に関する見積もりが変わり得る。今回の研究は、5種それぞれの分布、個体数、脅威を調査し、個別に保全方針を検討するための分類学的な基盤となる。

ユンガスでは森林伐採、農地の拡大、火災、採掘などによる生息地の改変が進んでいる。研究チームは、残された森林の保護、火災で損なわれた場所の再生、分断された生息地をつなぐ回廊の維持が重要だとしている。

全ゲノム解析と博物館標本の組み合わせは、外見だけでは区別しにくい動物の進化史を解明する有力な方法となる。ティルカヨの記載は、十分に研究されてきたと考えられているネコ科でも、地域の資料や歴史的な標本を詳しく調べることで、未解明の多様性が見つかる可能性を示している。

元記事: Whole-Genome Analysis Names First New Wild Cat Species in Over 100 Years

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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