AIクラウドのNscaleがIPO申請、1034億ドルの契約履行へ巨額投資が課題

2026年9月22日 16:46

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記事提供元:Tech Times

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AIクラウドインフラ企業Nscaleは2026年9月18日、米証券取引委員会(SEC)にForm S-1の登録届出書を提出した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)への普通株上場を目指しており、ティッカーシンボルは「NSCL」を予定する。

発行株式数や想定価格帯、公募による調達額は現時点で決まっていない。今後の焦点は、急増した契約価値を実際の売上へ転換するためのデータセンター建設と、その資金を確保できるかどうかにある。

■契約価値1034億ドルに対し、上期売上高は1億4060万ドル

Nscaleの2026年上期の売上高は1億4060万ドルで、前年同期の1040万ドルから1252%増加した。一方、純損失は前年同期の3億6890万ドルから10億2010万ドルへ拡大した。

2026年8月31日時点の稼働中および契約済みの総契約価値(TCV)は1034億ドルに達した。TCVは長期契約の全期間について見込まれる契約額の合計であり、その全額が売上として計上済みという意味ではない。

同日時点で稼働済みの契約価値は26億ドルで、TCV全体の約2.5%だった。残りの多くは今後建設される設備に対応しており、Nscaleが契約した計算能力を顧客へ引き渡して初めて、契約条件に従って売上計上が進む。

会計上の履行義務が残る契約額を示す残存履行義務は564億ドルだった。TCV、残存履行義務、認識済み売上高はそれぞれ性質の異なる指標であるため、単純に同じ「受注残」として扱うことはできない。

■長期契約を基盤に設備を建設するネオクラウド

Nscaleは、CoreWeaveやNebiusなどと同様に、AI向けGPUインフラへ重点を置く「ネオクラウド」と呼ばれる事業者の一つである。Nscaleは電力、データセンター、GPU、クラウドソフトウェアを組み合わせた垂直統合型のサービスを掲げる。

同社は顧客と複数年契約を結び、その需要を基盤にGPUの調達やデータセンター建設を進める。設備の建設、GPUクラスターの組み立て、試験、顧客への引き渡しが完了するまで、契約価値の多くは売上として認識されない。

2026年8月31日時点で、Nscaleが稼働させていたGPUは2万5000基だった。稼働中と契約済みを合わせたGPUは46万1000基に上り、稼働中のデータセンターは5拠点、契約済みの拠点は12拠点だった。

稼働中と契約済みを合わせた設備容量は約1.37ギガワットである。契約規模に対して現在の稼働規模は小さく、将来の売上成長は、多数の設備を予定通り建設して引き渡せるかに左右される。

■AnthropicとMicrosoftが契約価値の大部分を占める

S-1によると、NscaleはAnthropicとのGPUサービス契約について、契約期間中の支払額を最大約446億ドルと見込んでいる。対象となるのは、米ウェストバージニア州メーソン郡のMonarch Compute Campusで整備する計算基盤である。

Anthropic向けには約460メガワットのGPUインフラが予定されている。Monarchは約2250エーカーの敷地を持ち、Nscaleは長期的に8ギガワットを超える総電力容量まで拡張できる計画を示している。

NscaleはMicrosoftとも、ノルウェーやポルトガルなどの設備を対象とする契約を結んでいる。S-1に記載されたMicrosoftからの潜在的な支払額は最大438億ドルで、AnthropicとMicrosoftの契約がTCVの大部分を占める。

一方、単一の最大顧客が2026年上期の売上高の52%を占めた。大型顧客との契約は設備投資の根拠となる半面、契約の変更や解除、設備の引き渡し遅延が業績に大きく影響する顧客集中リスクを伴う。

■Nvidiaへの依存と転換社債

Nscaleの計算基盤はNvidia製GPUに大きく依存している。GPUの供給不足、価格変動、技術世代の移行に対応できなければ、設備の建設時期や採算に影響する可能性がある。

Nscaleは2026年9月15日、複数の投資家を引受先とする総額31億ドル以上の転換社債について契約を結んだ。このうち10億ドル分はNvidiaを引受先とし、所定の条件を満たした場合には上場時に非議決権株式へ転換される。

S-1には、Nvidiaとの間で将来最大100億ドルの追加的な証券発行を可能にする枠組みも記載されている。ただし、これは100億ドルの資金提供が確定したことを意味するものではない。

NvidiaはNscaleにGPUを供給すると同時に、資金面でも同社を支える立場となる。Nscaleにとっては大規模なGPU調達を進める基盤になる一方、特定メーカーへの供給面と資金面の依存が重なることになる。

■契約履行に必要な資金は未確定

Nscaleの2026年6月30日時点の総資産は172億5000万ドル、総負債は123億6000万ドル、株主資本は47億9000万ドルだった。2026年上期の調整後EBITDAマージンはマイナス142%となっている。

データセンター事業では、顧客への提供開始より先に土地、建物、電力設備、サーバー、GPUへ資金を投じる必要がある。Nscaleは設備の稼働と契約利用の拡大に伴い採算が改善すると見込むが、これは建設と引き渡しが計画通り進むことを前提とする。

同社は2026年に、14億ドルのGPU向け融資枠、9億ドルのリボルビング・クレジット枠、ノルウェーのKvandal South向け7億9000万ドル、アイスランド拠点向け3億3190万ドルなどを確保した。

それでもS-1では、大口顧客との契約を履行するために必要なGPUやデータセンター建設について、拘束力のある資金調達契約をすべて確保しているわけではないと説明している。契約価値1034億ドルを売上へ転換するには、既存の資金調達を大きく上回る継続的な資本投入が必要となる。

■内部統制に重大な不備

Nscaleは、財務報告に係る内部統制に重大な不備があることも開示した。上場企業として必要な会計処理、決算、報告体制の整備を進めているが、2026年または2027年中に完全に是正できるとは保証していない。

内部統制の不備は、それ自体が財務諸表の誤りを示すものではない。一方で、急速に拡大する事業や複雑な資金調達を正確かつ期限内に報告できる体制を構築できなければ、将来の財務報告や上場後の情報開示に影響する可能性がある。

Nscaleは2024年に暗号資産関連インフラを手掛けるArkon Energyから分離して事業を開始し、2026年8月末までに従業員数を1000人超へ増やした。短期間で事業と組織を拡大したことから、設備建設だけでなく管理部門の整備も上場に向けた課題となる。

■Anyscale買収でソフトウェア層を強化

Nscaleは2026年7月、AIワークロード管理ソフトウェアを手掛けるAnyscaleを買収する最終契約を結んだ。Anyscaleは、分散コンピューティング用オープンソースフレームワーク「Ray」の開発者が設立した企業である。

Nscaleは、電力、データセンター、GPUにAnyscaleのソフトウェアを組み合わせ、AIモデルの学習、推論、強化学習、データ処理を一つの基盤で提供する方針だ。Anyscaleは買収後も既存ブランドと顧客向けサービスを維持する予定で、約200人の従業員がNscaleへ加わる。

買収金額は公式には公表されていない。取引は規制当局の承認などの条件を満たしたうえで、2026年下期に完了する予定とされている。

Rayは2025年にPyTorch Foundationへ寄贈され、オープンソースかつコミュニティー主導のプロジェクトとして運営されている。したがって、NscaleによるAnyscale買収はRay自体を独占的に取得するものではなく、その周辺の商用プラットフォームと人材を取り込む取引となる。

■IPO条件は今後決定

今回提出されたS-1では、発行株式数、想定価格帯、IPOによる調達額が空欄となっている。NscaleはNYSEへの上場を申請したが、300億ドル規模の上場や30億ドルの調達を正式な目標として示したわけではない。

主幹事はGoldman Sachs、J.P. Morgan、Morgan Stanleyが務める。正式な公募条件は、登録届出書の審査や投資家への説明を経て、今後提出される修正版S-1などで示されることになる。

投資家が評価する中心的な論点は、1034億ドルのTCVそのものだけではない。契約済み設備を予定通り建設できるか、必要な資金を確保できるか、顧客集中とNvidia依存を管理できるか、内部統制を整備できるかが、契約価値を実際の売上と利益へ転換するうえで重要となる。

元記事: Nscale Files $30B NYSE IPO With $1B Nvidia Note and $45B Anthropic Deal

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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