Amazon Leo、Ariane 64を6回追加契約 欧州の宇宙自立構想に弾み
パリで9月9日と10日に開かれた国際宇宙サミットで、Amazon Leoは欧州の打ち上げ事業者Arianespaceと、Ariane 64による6回の追加打ち上げ契約を結んだ。両社の契約は合計24回となり、追加分は2029年から2031年にかけてフランス領ギアナの欧州宇宙港から実施される予定だ。
サミットでは一部の米宇宙企業が出席を取りやめたことも注目された。米政府関係者が参加に否定的な意向を伝えたと報じられる一方、米企業であるAmazonは欧州のロケットへの発注を拡大した。政治的な緊張があっても、衛星事業者が打ち上げ能力や運用計画に基づいて調達先を選ぶという商業上の判断は続いている。
■Amazon LeoがAriane 64を6回追加契約
Amazon LeoとArianespaceは9月9日、Ariane 64による打ち上げ6回分を追加する契約を国際宇宙サミットで発表した。2022年に結んだ18回分と合わせ、契約総数は24回となる。Ariane 64は、Ariane 6に固体ロケットブースター4基を組み合わせた構成である。
Amazon Leoは、低軌道に多数の衛星を配備し、ブロードバンド通信サービスを提供するAmazonの事業だ。Amazonはコンステレーションの構築に向け、Arianespaceだけでなく、United Launch AllianceやBlue Originなど複数の打ち上げ事業者と契約してきた。
Amazon LeoのChris Weberバイスプレジデントは、欧州はサービスの提供地域であるだけでなく、その打ち上げインフラがAmazon Leoコンステレーションの運用構成の一部になっていると説明した。ArianespaceのDavid Cavaillolès CEOは、長期契約がAriane 6の運用拡大と事業基盤の強化につながるとの見方を示した。
Arianespaceは2026年、5カ月に満たない期間に3回のAriane 6ミッションを実施し、Amazon Leo衛星100基を軌道へ投入した。AmazonとArianespaceによると、これは当時までに配備されたAmazon Leo衛星の25%超に相当する。
6月17日の3回目のミッションでは、ArianeGroupが開発したP160Cブースターを備えるAriane 64を使用し、36基を投入した。P160CによってAriane 6の搭載能力は最大2トン増えるとしており、1回の打ち上げに搭載できる衛星数の増加につながった。
追加契約は、Amazon LeoがAriane 6を単なる予備の手段ではなく、コンステレーション配備を支える打ち上げ手段の一つとして組み込んでいることを示す。Arianespaceにとっても、2029年以降の需要を確保し、商業ミッションと欧州の機関ミッションに対応する運用体制を整える材料となる。
■米宇宙企業の欠席と商業契約は別の動き
サミットにはSpaceX、Blue Origin、Stoke Space、Starcloudなどが出席しなかった。PoliticoやReutersなどの報道では、米ホワイトハウス科学技術政策局の関係者が8月下旬、米航空宇宙企業に対し、参加すれば米政府が反対する欧州の政策を支持していると受け止められる可能性があるとの趣旨を伝えたとされる。
企業に対する正式な出席禁止命令が公表されたわけではない。このため、「米企業による一斉の公式ボイコット」と断定するよりも、米政府側の働きかけが報じられる中で複数社が出席を取りやめたと捉えるのが適切だ。
Blue Originが欠席する一方、同社の創業者でもあるJeff Bezosが創業したAmazonはAriane 6の追加契約を発表した。ただし、Blue OriginとAmazon Leoは別々の事業主体として、それぞれの経営判断と運用計画に基づいて行動している。
Amazon Leoによる発注から直接読み取れるのは、政治的な出席判断とは別に、欧州の打ち上げ能力が米国の大規模衛星事業者の配備計画に組み込まれているという点だ。Amazonは多数の衛星を継続して打ち上げる必要があり、複数のロケットを確保することで、打ち上げ頻度や個別事業者の運航状況に伴うリスクを分散している。
Blue Originでは2026年5月、New Glennの燃焼試験中に機体が爆発し、フロリダ州の発射施設が損傷した。同社は施設の再建と飛行再開に向けた作業を進めている。こうした各ロケットの運用状況も、Amazon Leoにとって複数の打ち上げ手段を維持する重要性を高めている。
■欧州が問われる「乗客か、操縦士か」
国際宇宙サミットでは、欧州が宇宙輸送や有人宇宙飛行を域外の事業者に依存し続けるのか、独自の能力を構築するのかも主要な議題となった。
欧州宇宙機関(ESA)のJosef Aschbacher事務局長は9月9日の非公開会合で、欧州は宇宙開発の「乗客」になるのか、それとも「操縦士」になるのかと各国閣僚に問いかけた。欧州が独自の宇宙探査能力を高めるため、10年間で100億ユーロを投資する構想も示した。
Aschbacher事務局長の試算では、欧州の宇宙飛行士を外国の事業者によって10年間輸送する場合、約50億ユーロが必要になる。これに対し、域内の能力へ投資すれば、欧州での雇用や産業基盤を維持し、有人飛行を含むミッションを自ら計画できる余地が広がるとの考えだ。
提案は制度上の決定や資金拠出を終えた計画ではない。ESA加盟国は今後の閣僚級会合などを通じ、投資規模や実施時期、具体的な開発対象を検討することになる。
Emmanuel Macron仏大統領も、欧州独自の有人宇宙飛行能力を10年以内に構築する構想を示した。併せて、欧州企業The Exploration Companyが開発するNyx貨物宇宙船の国際宇宙ステーションへのドッキング、ESAのArgonaut月着陸機による月面到達、フランス領ギアナのクールーからの有人宇宙船打ち上げを段階的な目標として掲げた。
これらは欧州の長期的な方向性を示すものだが、すべてについて必要な予算や開発計画が確定しているわけではない。今後の閣僚級協議は、政治的な目標を具体的な開発事業へ移せるかを測る場となる。
■IRIS2を348基に拡張
欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長はサミットで、宇宙へのアクセスと宇宙で活動する能力が、経済だけでなく安全保障や自立性にも関わると強調した。ウクライナで衛星通信や衛星画像が重要な役割を担っていることにも言及した。
EUは安全な衛星通信網の構築を目的とするIRIS2を進めている。欧州委員会と運営事業体のSpaceRISEは8月7日に実施協定を結び、新たに低軌道衛星66基を追加して、主要コンステレーションを348基に拡大した。
内訳は低軌道衛星330基と中軌道衛星18基で、追加された66基は防衛、安全保障、緊急対応向けの通信能力を強化する。IRIS2は欧州の政府機関向け通信を支えるとともに、域内の通信事業者による商用サービスにも利用される計画だ。
サミットではEutelsatも、OneWebコンステレーションの更新・拡張に向け、Airbus Defence and Spaceに最大229基の衛星を追加発注する手続きを進めた。これとは別に、OroraTechの熱赤外線センサーを将来のOneWeb衛星へ搭載し、山火事の検知に利用する提携も発表された。
こうした案件は、通信衛星を単一用途の設備としてではなく、地球観測用の装置などを相乗りさせる基盤として利用する動きを示している。衛星網の更新が、通信能力の維持だけでなく、新たな観測サービスの展開にも結び付いている。
■AIを衛星上で動かすAltair-Next Gen
サミットでは、アラブ首長国連邦とフランスの企業による地球観測計画Altair-Next Genも発表された。Marlan SpaceとLoft Orbitalが中心となり、計画中のコンステレーションを10基から50基へ拡大する10億ドル規模の事業だ。
各衛星にはレーダーや光学センサーなどを搭載し、観測データの一部を衛星上のAIで処理する。取得したすべてのデータを地上へ送ってから処理する方式に加え、軌道上で必要な情報を選別・分析することで、利用者が結果を得るまでの時間を短縮する狙いがある。
計画ではMistral AIのモデルを衛星上で利用し、地上の利用者が自然言語によって観測内容を指示したり、処理結果を問い合わせたりできる仕組みを目指す。最初の衛星は2026年10月の打ち上げが予定されている。
初期の打ち上げにはSpaceXを利用し、フランスのMaiaSpaceについては、打ち上げサービスが商用化された後の優先パートナーとしている。この構成からも、欧州や中東の事業者が自立性を重視しながら、現時点で利用できる米国の打ち上げ能力も組み合わせていることが分かる。
■欧州の投資拡大と政策上の隔たり
欧州では宇宙関連投資が拡大している。ESA加盟国は2025年の閣僚級理事会で、2026年から2028年を対象とする総額223億ユーロの拠出を承認した。前回の閣僚級理事会で決まった拠出額との比較では、名目で31%の増加となる。
一方、欧州の宇宙政策が一枚岩になったわけではない。フランスはAriane 6やIRIS2を欧州の戦略的自立の中核に据え、欧州の政府衛星を欧州のロケットで打ち上げる方向を重視している。ドイツは欧州の能力強化に投資しながらも、安全保障上の必要性からSpaceXなど米国のサービスも選択肢に残す姿勢を示してきた。
仏独間では、次世代戦闘機を共同開発するFuture Combat Air Systemの中核部分についても、企業間の役割分担を巡る対立を解消できず、共同戦闘機の開発を打ち切った。こうした経緯は、欧州が国境を越えた大型技術計画をまとめる難しさを映している。
ドイツが進める約350億ユーロ規模の軍事宇宙投資は、ESAの追加予算ではなく、ドイツの安全保障政策に基づく投資として区別する必要がある。欧州全体で支出が増えていても、各国が同じ優先順位や調達方針を共有しているとは限らない。
■追加契約が示すAriane 6の役割
国際宇宙サミットは条約を締結する会議ではなく、各国政府、宇宙機関、研究者、企業が政策や投資計画を示す場として開かれた。会場では多数の商業契約や投資案件が発表されたが、政策構想の多くは今後の予算協議と加盟国の決定を必要とする。
その中でAmazon LeoとArianespaceの追加契約は、すでに運用されているロケットと実際の衛星配備を結び付けた具体的な商業案件である。Ariane 6の打ち上げ回数はSpaceXのロケットに及ばないものの、Amazon Leo向けに3回連続してミッションを実施した実績が、追加受注につながった。
Ariane 6にとって、長期契約は打ち上げ頻度を高め、生産と運用を安定させる基盤になる。Amazon Leoにとっては、コンステレーションの構築に必要な打ち上げ枠を複数の事業者から確保し、配備計画を進める手段となる。
欧州が宇宙開発の「乗客」から「操縦士」へ移るという構想には、有人宇宙船や衛星通信網だけでなく、継続的に利用される打ち上げ基盤が欠かせない。Amazon Leoによる6回の追加発注は、少なくとも商業打ち上げの分野では、欧州のインフラが域外の大規模事業者からも選ばれる段階に進んでいることを示している。
元記事: Amazon Leo Signed More Ariane 6 Launches at Paris Summit Blue Origin Boycotted
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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