『グレイテスト・ショーマン』舞台版、2027年春ロンドンへ 名曲とバーナムの搾取の歴史が映す相克
ディズニー・シアトリカル・グループは、映画『グレイテスト・ショーマン』のミュージカル舞台版を2027年春、ロンドンのウエストエンドにあるシアター・ロイヤル・ドルリー・レーンで開幕すると発表した。劇中歌「This Is Me」は世界的なエンパワーメントの賛歌として広がった一方、主人公P・T・バーナムの実像には、黒人や障がいのある人、先住民などを見世物として利用した興行師という側面がある。歴史ある劇場での上演を通じ、映画が描いた解放の物語と史実との隔たりが改めて注目されることになる。
■原点を超えて広がった賛歌とバーナムの史実
ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが手掛け、ゴールデングローブ賞を受賞した「This Is Me」は、2017年の映画公開後、LGBTQ+コミュニティや障がい者の権利を訴える人々、ニューロダイバージェントの当事者らにも受け入れられてきた。同曲を収録したサウンドトラックは2018年に世界で最も売れたアルバムとなり、60カ国以上のiTunesで1位を獲得した。
パセックとポールによれば、この曲は映画の製作実現につなげるために書かれたものだった。マイケル・グレイシー監督は、「生涯を日陰で生きてきた人々」が表舞台へ踏み出す物語の感情的な核となる曲を必要としていた。その後、この曲は映画の枠を超え、自らの違いを受け入れ、存在を肯定する歌として独自の意味を持つようになった。
1810年に米コネチカット州ベセルで生まれたフィニアス・テイラー・バーナムの興行には、映画で描かれた物語とは大きく異なる歴史がある。1835年、バーナムは高齢で盲目の奴隷女性ジョイス・ヘスを興行に利用し、「ジョージ・ワシントンの元乳母で161歳」と宣伝した。ヘスは長時間にわたって観客の前に出され、1836年の死後には、入場料50セントを徴収した公開解剖まで行われた。
バーナムはこのほか、結合双生児のチャン&エン・ブンカー兄弟を興行に出演させた。黒人男性ウィリアム・ヘンリー・ジョンソンには毛皮を着せ、「What Is It?」と称して人種差別的な見世物にした。また、オーストラリアやフィジーの先住民に架空の「食人儀式」を演じさせ、当時の人種的偏見を利用した興行も展開した。バーナム自身は、人目を引く外観や奇抜な仕掛けによって注目を集める手法を「ハンバグ」と表現していた。
■歴史の再構築と芸術的評価の境界線
歴史学者ニール・ハリスは1973年の研究書『Humbug: The Art of P. T. Barnum』で、観客もバーナムの欺瞞をある程度承知し、その仕掛けを見破る過程を含めて楽しんでいたと論じた。一方、ベンジャミン・レイスは2001年の『The Showman and the Slave』で、そうした「ゲーム」に参加できたのは、自らが商品として展示される立場にはなかった白人観客だったと論じている。
2017年の映画版は、バーナムを社会から疎外された人々に活躍の場を与える人物として描いた。スミソニアン・マガジンは映画公開時の記事で、こうした描写とバーナムの実際の経歴との隔たりを取り上げている。ジョン・ウルフ博士も2019年の著書『The Wonders』で、見世物興行に出演した人々の生涯や扱われ方を検証した。
2026年3月から5月にかけて行われたブリストル・ヒッポドロームでの世界初演は完売したが、開発段階の公演として批評の公開が制限されていた。このため、舞台版がバーナムの歴史をどのように扱っているのかについて、独立した批評に基づく評価はまだ十分に明らかになっていない。
『グレイテスト・ショーマン』が投げかける論点は、歴史的に脚色された物語であっても、観客に切実で本物の感情を呼び起こし得るという点にある。「This Is Me」が人々の心を捉えた背景には、違いを理由に感じる羞恥や孤立、ありのままの自分を認めてほしいという普遍的な感情がある。その共感の力と、作品の題材となった人物の史実をどのように両立させるかは、舞台版でも避けて通れないテーマとなる。
■2027年春のウエストエンド公演の布陣
クリエイティブチームには、ブロードウェイやウエストエンドで数々の作品を手掛けてきたスタッフが集まった。『ブック・オブ・モルモン』やブロードウェイ版『ミーン・ガールズ』のケイシー・ニコローが演出・振付を担当し、脚本はティム・フェデールが務める。音楽監修、劇中音楽・ダンス音楽のアレンジ、オーケストレーションは、『ハミルトン』『ディア・エヴァン・ハンセン』『イン・ザ・ハイツ』などで知られるアレックス・ラカモアが担当する。
舞台版には、「The Greatest Show」「A Million Dreams」「Come Alive」「Rewrite the Stars」「Never Enough」「This Is Me」といった映画版の楽曲に加え、パセックとポールが舞台のために書き下ろした新曲も使用される。新曲が登場人物の心情や関係性をどのように掘り下げ、物語を前進させるのかが注目点となる。
P・T・バーナム役は、ブリストル公演に続いてオリバー・トンプセットが務める。妻チャリティ・バーナム役はサマンサ・バークスが演じる。このほか、ベン・ジョイスがフィリップ・カーライル役、ヴァイエン・ヴァン・デン・ボッシュがジェニー・リンド役、マリンダ・パリスがレティ・ルッツ役で続投する。追加キャストは今後発表される予定だ。
■名門劇場ドルリー・レーンで問われるもの
会場となるシアター・ロイヤル・ドルリー・レーンの劇場用地は1663年から使われており、現在も使用されているロンドン最古の劇場用地とされる。現在の建物は同地で4代目に当たり、ベンジャミン・ディーン・ワイアットの設計で1812年に開場した。
劇場は6000万ポンドを投じた大規模な修復を経て、2021年に再開した。ジョージアン様式の階段やロタンダ、グランド・サルーンなどが往時の姿に近づけて修復され、舞台設備や来場者向け施設も更新された。原記事が示した約8100万ドルを基に、1ドル=159円で換算すると約129億円に相当するが、実際の円換算額はポンドと円の為替相場によって変動する。
サーカス演出・デザインはロレンツォ・ピゾーニが担当する。歴史的な劇場の規模と舞台設備を生かし、音楽、ダンス、サーカス表現をどのように組み合わせるかも見どころとなる。バーナムが活動した19世紀に建てられた劇場で、その生涯を基にした作品が上演されることは、大衆芸術が実在の人物や歴史を描く際の責任を考える契機にもなる。
ブリストル公演で観客の需要の高さは示されたものの、作品の内容は今後も調整される可能性がある。ドルリー・レーン公演で、スペクタクルと登場人物の物語、さらに現代の観客が持つ歴史認識をどのように結び付けるのかが焦点となる。
■「This Is Me」がすでに示したもの
舞台版は、映画から独立して広がった「This Is Me」という楽曲を受け継ぐ。この曲はプライド関連の催しなどでも歌われ、障がいや神経多様性をめぐる場でも自己肯定のメッセージを伝える曲として受け入れられてきた。
こうした文化的な広がりは、作品の歴史的な問題を解消するものではない。むしろ、フィクションが生んだ感情的な意味と、題材となった人物の実像を同時にどう受け止めるかという問いを鮮明にする。2027年のウエストエンド公演は、その二つが実際の舞台上でどのように共存するのかを確かめる機会となる。
■公演概要と今後の情報
2027年春のウエストエンド公演について、正確な上演日程、チケット料金、発売日はまだ発表されていない。優先チケット情報の登録は公式ウェブサイトで受け付けている。シアター・ロイヤル・ドルリー・レーンはロンドンのキャサリン・ストリートにあり、最寄り駅は地下鉄ピカデリー線のコヴェント・ガーデン駅となる。
本作は、20世紀スタジオの映画をディズニー・シアトリカル・グループが舞台化する初の作品となる。映画版の製作に携わったザ・シーリグ・グループも、舞台版のプロデューサーに名を連ねている。
■注目ポイントQ&A
●ミュージカル版『グレイテスト・ショーマン』のロンドン公演はいつ、どこで開幕しますか?
ロンドンのウエストエンドにあるシアター・ロイヤル・ドルリー・レーンで、2027年春に開幕する予定です。正確な公演日程やチケット料金、発売日はまだ発表されていません。
●ウエストエンド公演のキャストは誰ですか?
P・T・バーナム役をオリバー・トンプセット、チャリティ・バーナム役をサマンサ・バークスが演じます。ベン・ジョイス、ヴァイエン・ヴァン・デン・ボッシュ、マリンダ・パリスも、ブリストル公演と同じ役で出演します。追加キャストは今後発表される予定です。
●実際のP・T・バーナムは劇中のように出演者を尊重していたのですか?
歴史的記録は、映画版の描写とは異なる実像を示しています。バーナムは奴隷女性ジョイス・ヘスを虚偽の宣伝によって興行に利用し、障がいのある人や黒人、先住民を有料の見世物として扱いました。2017年の映画版は、バーナムを社会から疎外された人々に活躍の場を与える人物として再構成しています。
●舞台版の注目点は何ですか?
パセックとポールによる新曲が登場人物や物語をどのように深めるか、アレックス・ラカモアによる音楽面の構成、ロレンツォ・ピゾーニによるサーカス演出などが注目点です。また、舞台版がバーナムの史実と映画版の解放の物語との隔たりをどう扱うかも焦点となります。
元記事: Greatest Showman Musical Opens in London: Anthem Built on Exploitation Legacy
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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