id Software現役プログラマー「次のAAA級『Doom』開発は不可能」Xboxの人員削減を批判

2026年8月12日 23:53

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記事提供元:Tech Times

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id Softwareの現役リードプログラマーであるChris Hays氏が、Xboxによる大規模な人員削減の影響について実名で公然と批判の声を上げた。同氏は、現在の縮小された体制で新たなAAAクラスの『Doom』を開発することは「不可能」だと指摘している。また、Microsoftの対応がゲーム業界における同社への信頼を永久に損なったと警告しており、匿名証言が相次ぐ中で異例の発言となっている。

■匿名証言とは一線を画す、現役プログラマーの実名発言

id Softwareに在籍する現役のリードプログラマーが実名で、スタジオの公式見解に公然と異議を唱えた。同氏は、新たなAAAクラスの『Doom』を開発することは「不可能」であると述べ、Xboxがスタッフの流出を防ぐため、経営陣に用意された説明内容を伝えさせていると主張した。さらに、Microsoftがゲーム業界における自社への信頼を永久に損なったと警告している。Xboxの組織再編に関して、スタジオ内部から実名でこれほど率直な意見が公に出た例は、これまでの公的な証言にはなかった。

id Softwareに16年在籍し、リードサービスプログラマーを務めるChris Hays氏は、7月下旬に公開されたポッドキャスト番組「Auf ein Bier」の「Well Played」に出演した際、これらの発言を行った。8月10日にはインタビューのクリップが広く拡散され、PC GamerやGame Rantなどが同氏の発言を報じた。Xboxの人員削減に関する報道は匿名の開発者による証言が中心だったが、Hays氏のコメントは、実名を明かした現役従業員が直接語ったという点で一線を画している。

「これまで作ってきたようなAAAゲームを半分の人数で作るのは難しい」とHays氏は語った。「そして、難しいというのは不可能だという意味だ」

■人員削減の規模と、経営陣に渡された「台本」

背景にあるのは、XboxのCEOであるAsha Sharma氏が2026年7月6日に「Xbox史上で最も重大なもの」と説明した組織再編である。この発表により、Xboxでは2027会計年度を通じて約3,200の職が削減され、そのうち約1,600人が直ちに対象となった。テキサス州労働委員会に提出された労働者調整・再訓練予告通知(WARN)によれば、id Softwareでは約185人と推定される従業員のうち、テキサス州リチャードソンのオフィスに勤務する96人とリモート勤務の40人、計136人が削減された。同じ発表では、MicrosoftがDouble Fine Productions、Ninja Theory、Compulsion Games、Undead Labsの4スタジオを売却したことも明らかにされた。

この人員削減は、チームが数カ月かけて完成させた大型有料拡張コンテンツ『Doom: The Dark Ages – Revelations』の発売前日に実施された。複数の証言によれば、発売日に間に合わせるため、通常よりも厳しい長時間労働、いわゆるクランチに耐えた開発者たちは、自分たちが制作した作品の発売を同スタジオの従業員として迎えることができなかった。

その後、スタジオの共同ディレクターであるHugo Martin氏は、7月17日の「Slayers Club Live」配信でファンの不安を和らげようとした。現在のid Softwareは『Doom』(2016年版)を発売した当時とほぼ同じ規模であり、当時ゲームを完成させられたのだから、新たな作品も完成させられると主張した。2016年当時と同程度の人員数だという説明は、数字の上では成り立つ。しかし、Game Developerの取材に応じた情報源とHays氏によれば、その説明では、『Doom』(2016年版)を開発したメンバーが不均衡なほど多く削減されたことが語られていない。

「まず第一に、私たちは以前と同じidではない」とHays氏は指摘する。「同じなのは半分だけだ。重要だったのは人だ。私たちを特別な存在にしていたのは、人と、私たちが築いた関係性だった。IPではない。私たちの名前は重要ではない。私たちが築いた関係性と、共に積み重ねた経験が重要だったのだ」

Hays氏の特に踏み込んだ発言の一つは、レイオフ後の社内コミュニケーションに関するものだった。同氏は、スタジオの経営陣がXboxから承認済みの説明内容を渡され、残ったスタッフに率直に伝えられる内容を制限されていたと主張した。安心させるための説明は、状況に対する率直な評価ではなく、事態の沈静化を目的としたものだったという見方だ。

「社内では、会社が公に発表している内容とよく似たことが数多く語られてきた」とHays氏は言う。「しかし、それが実際にゲーム作りにどう結びつくのかは明確ではない。私には分からない。これがどこへ向かうのかも分からない」

同氏の見方では、この対応は、大規模なレイオフ後に起こりがちな追加の人材流出、つまり転職という選択肢を持つ残留社員が相次いで去る事態を防ぐことが目的だった。その戦略は、スタジオの状況を率直に伝えることではなく、Xboxが必要とする経験豊富な人材が辞めないよう、安定しているように見せることだったと同氏は示唆している。

「必要な部門が丸ごと骨抜きにされている。専門分野全体がなくなっている。これをどう機能させるかについて何らかの新しい計画があるのなら、私たちには伝えられていない。それが何なのか、私たちには分からない」とHays氏は語った。Game Developerの報道によれば、廃止されたか1人にまで縮小された部門には、リードを含む5人からアーティスト1人になったVFXチーム、約90%が削減されたAIおよびゲームプレイデザインチーム、責任者だけが残ったテクニカルアートおよびデザイン部門が含まれる。

すべての職種から比例して人員を減らすのではなく、専門部門全体が失われたことこそが、Hays氏が「不可能」と主張する具体的な根拠である。AAAゲームの開発能力は、人員数に比例して単純に縮小するものではない。スタッフが半分になったスタジオに、以前の半分の開発能力が残るとは限らない。VFXチームが1人になれば、チームとしてのVFX部門は事実上存在しない。AIおよびゲームプレイデザイン担当者の90%がいなくなれば、その機能は規模を縮小して残るのではなく、実質的に失われる。

■Game Passの会計システムがもたらす評価の歪み

Hays氏はまた、Xboxがid Softwareの商業的な成果を評価する際に歪みを生じさせたと同氏が考える、会計上の仕組みにも批判の矛先を向けた。同スタジオはBethesda Softworksの傘下にあり、さらにXboxの傘下にあるため、id Softwareの主要作品は発売初日からGame Passで提供されてきた。つまり、『Doom』をプレイするXboxおよびPCユーザーの圧倒的多数は、ゲームを購入するのではなくサブスクリプションを通じて利用している。それにもかかわらず、Xboxは小売販売本数を用いてスタジオの存続可能性を判断しているとHays氏は主張した。

「idがGame Passの運用方法に深刻な問題を抱えていることは知っている」と同氏は語った。「Game Passがある状況で、売り上げが悪いというのは、販売本数が少ないという意味なのか。もちろん販売本数は少なくなる。そもそも『ゲームを販売する』ビジネスモデルではないのだから」

この会計上の問題は新しいものではないが、Hays氏の指摘は、それがスタジオ単位の評価にもたらす具体的な歪みを明確にしている。加入者が月額料金を通じてゲームを利用した場合、その収益はコンテンツを制作したスタジオではなく、Game Pass自体の損益に計上される。このため、スタジオが過去最多級のプレイヤーを集めるタイトルを生み出しても、Microsoftの社内報告では商業的な存在感が小さく見える可能性がある。加入者による利用実績は、仕組み上、スタジオ側の帳簿には反映されないからだ。英国競争・市場庁(CMA)は2023年、Microsoftの社内分析において、タイトルをGame Passへ追加した後にベースゲームの販売本数が測定可能な水準で減少していたことを確認している。

Xboxの最高戦略責任者であるMatthew Ball氏は2026年6月、2025年10月に月額料金を約20ドルから30ドルへ引き上げた後、Game Passが数百万人の加入者を失ったことを公に認めた。日本円では約3,180円から約4,770円への値上げに相当する(1ドル=159円換算)。Asha Sharma氏のメモでは、Xbox部門がゲームスタジオ全体に投資した1ドルにつき約64セントの損失を出していることも明らかにされた。

■「彼らは根本的にアートを理解していない」

Hays氏の発言の中で最も辛辣だったのは、ゲーム開発に必要なものに対するXboxの理解に向けられた批判であり、その対象はより広いパブリッシャー層にも及んだ。

「これらの決定は先を見通して下されたものではない。健全なゲームスタジオを今後も存続させるという考えに基づいて下されたものでもない」と同氏は述べた。「彼らは根本的にアートを理解していない。ゲームを理解していないし、そのビジネスモデルも理解していない」

同氏はさらに、たとえスタジオ経営陣に善意があっても、Microsoftが企業レベルで生み出した組織的な不信感を補うことはできないと主張した。「私たちがMicrosoftの傘下にいる限り、誰も何も信じないと思う。スタジオの経営陣が何かを保証しても、誰も信じないだろう。経営陣自身に決定権がないことを、皆が知っているからだ」

その不信感は、現在の従業員だけでなく、業界全体に広がっているとHays氏は主張する。Microsoftは既存の人材を引き留めることだけでなく、新たな人材を採用することも難しくした。かつてid Softwareの文化を支えていた長期雇用の約束は、Hays氏の言葉を借りれば「退職まで働いてもらうために採用する」というものだった。しかし、Xboxの実際の意思決定者より下の立場にいる人物には、もはやその約束を信頼できる形で示すことができないという。

「彼らは多くの関係を壊してしまった。影響を受けたのは私たちだけではない。誰もMicrosoftを二度と信用しないだろう。その結果、スタジオの経営陣も信用されなくなる」と同氏は語った。「たとえスタジオレベルに最高の経営陣がいたとしても、スタジオを閉鎖すれば株価が0.1%上がると彼らがある年に判断すれば、何の意味もない」

この指摘は、『Baldur's Gate 3』の開発元であるLarian Studiosの代表Swen Vincke氏が、ゲーム業界全体に広がるレイオフの波について示した見方とも重なる。長く勤めた従業員に蓄積された組織的知識の喪失は「些細な問題ではない」ため、代わりの人員を雇うだけでは解決できないというものだ。対照的に、任天堂は日本で平均勤続年数14.4年、離職率1.9%を維持している。この数字は、過去作品で築いた基盤を生かし、一貫して次の作品を開発する同社の能力と直接対応している。

■開発者を失った独自エンジン「id Tech」の行方

Hays氏の「不可能」という主張の根底にある技術的な問題は、組織的知識そのものに関係している。『Doom: The Dark Ages』(2025年)に使用され、第8世代のメジャーバージョンを迎えた「id Tech」は、外部向けのドキュメント整備体制も、コミュニティによるサポート環境も、外部の技術者へ委託するための市場もない、独自の社内エンジンである。その能力に関する知識は、それを構築し、改修し、製品を完成させてきた人々の中に蓄積されている。

その人々の多くが、今ではいなくなった。Game Developerの取材に応じたid Softwareの匿名開発者は、人員削減について「id Techで新たなゲームを作る将来の道筋を想像できない」と述べ、チームは「エンジンを修正、維持、変更できる人々を全員排除してしまった」と付け加えた。Xboxは、複数の拠点で「数十人」がid Techに携わっているとして、この主張の最も極端な部分には反論した。一方で、特定の部門が廃止されたという点については否定しなかった。

Hays氏も自身の立場から同じ問題を指摘している。「スカイボックス担当のアーティストを解雇したら、誰がスカイボックスを作るのか。インフラチームを解雇したら、どうやってインフラを維持するのか。エンジンチームの多くが解雇されたのに、どうやってエンジンを維持するのか」

これは、単純な人員数の比較では説明できない、人員数と開発能力の関係をめぐる問題である。Unrealのようなライセンス提供されているエンジンには、外部向けのドキュメント、業務を委託できる技術者の層、コミュニティによるサポートがある。id Techにはそのいずれもない。その継続性を支えていた唯一の仕組みは、エンジンを構築した人々だった。そうした人材を削減する決定は、Xboxを2027会計年度までに成長軌道へ戻すというMicrosoftの目標に照らして意味のある期間内には、取り返すことができない。

1991年にid Softwareを共同設立し、スタジオの技術的な歴史を語るうえで現在も高い信頼を得ているJohn Carmack氏は、7月にソーシャルメディアで慎重な反応を示した。「『Microsoftはおそらくブランドの良き管理者になるだろう』という私の発言は、今となっては見通しが甘かったようだ」と同氏は記した。同氏は悲しみを表明する一方、Microsoftの財務的な観点から見ると、id Softwareは重要性の低い事業になっていた可能性があるとの見方を示した。また、ほかにどのような選択肢があったのかを断定できるほど、会計の全体像を把握しているわけではないとも認めた。

■注目ポイントQ&A

●現在のチームでid SoftwareはAAAクラスの『Doom』を開発できますか?

現在も同スタジオに在籍し、実名で発言しているChris Hays氏は、不可能だと述べています。同氏の主張は単なる人数の問題ではなく、VFXやAI、ゲームプレイデザインなどの専門部門が丸ごと廃止、または大幅に縮小され、開発能力そのものが失われたというものです。一方、Xboxは残ったチームの規模に関する最も極端な見方には反論しており、共同ディレクターのHugo Martin氏も、将来のゲームを開発するために必要な体制は維持していると述べています。ただし、Hays氏が指摘する個別部門の廃止について、公式声明では具体的に説明されていません。

●Chris Hays氏の実名での発言はなぜ重要視されているのですか?

同氏はid Softwareに16年在籍するリードサービスプログラマーであり、スタジオの開発能力と内部文化の双方を詳しく知り得る上級技術職に就いています。これまでid Softwareに対するXboxの人員削減の影響について公に語った開発者の証言は、Game Developerの取材に匿名で応じたものだけでした。現役従業員が実名で公式見解に異議を唱え、社内向け説明や開発体制について具体的に主張したことで、発言者自身が証言への責任を負っている点が重要視されています。

●Game Passのシステムはスタジオの評価にどのような影響を与えていますか?

ファーストパーティーの新作が発売初日からGame Passで提供されると、加入者はゲームを単品購入するのではなく、月額料金を通じて利用します。プレミアムゲーム1本当たり約70ドル、約1万1,130円に相当する単品販売の収益は、ゲームを制作したスタジオには計上されず、Game Pass全体の収支に組み込まれます。このため、サービス内で特に多く遊ばれている作品を持つスタジオでも、利用実績ではなく販売本数を指標にすると、商業的に低調であるように見える可能性があります。Hays氏は、Xboxがid Softwareの評価にこうした指標を用いたと主張しています。

●Xbox傘下のスタジオで働くことについて、どのような懸念が示されていますか?

Hays氏の警告は、個々の経営者ではなく、意思決定の構造に向けられています。Xbox傘下のスタジオでは、スタジオの存続を決める権限を現場の経営陣が持っていないため、長期雇用について信頼できる約束をすることができないという指摘です。かつてid Softwareを特徴づけていた「退職まで働いてもらうために採用する」という文化も、個々の経営陣ではなく、その上にある企業がスタジオの将来を決定する状況によって成り立たなくなったとHays氏は主張しています。

元記事: Chris Hays, id Software Programmer, Says Next Doom Is ‘Impossible,’ Still Employed

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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