ハリポタ新作キャストがJ.K.ローリングに異議、「出演継続と批判」は両立するか

2026年8月12日 13:30

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記事提供元:Tech Times

HBOが制作中の新作『ハリー・ポッター』ドラマシリーズに出演するベル・パウリーが、原作者J.K.ローリングのジェンダーに関する見解に公然と異議を唱えた。パウリーは作品への愛着を示す一方、出演を続ける意向も明らかにしており、ほかのキャストと同様に「離脱を伴わない発言」という複雑な立場を取っている。社会学と文学理論を手掛かりに、この選択が持つ構造と限界を考える。

■なぜキャスト陣は声を上げ続けるのか

HBOが制作中の新作『ハリー・ポッター』シリーズでペチュニア・ダーズリー役を演じるベル・パウリーは、10日(月)にThe Telegraphに対し、J.K.ローリングのジェンダーに関する見解に「強く反対する」と語り、「トランスジェンダーのコミュニティは、安全、尊厳、敬意、そして全面的な受容に値する」と付け加えた。同シリーズの製作総指揮も務める原作者の見解を共有していなくても、作品を愛することはできると公言するキャストが相次いでおり、パウリーもその一人となった。ただし、彼女の立場は単純な枠組みで説明できるものではない。多くの人が真っ先に思い浮かべる理論も、この状況には完全には当てはまらない。

パウリーは、新キャストの中で特に明確な異論を表明しているジョン・リスゴーやニック・フロストに加わる形となった。アルバス・ダンブルドア役のリスゴーは、2月のロッテルダム映画祭で、原作を「優しさと残酷さ」を巡る考察だと表現したうえで、ローリングの立場を「皮肉で不可解だ」と語った。ハグリッド役のフロストは、以前のThe Observerのインタビューで、自身とローリングは「どの点でも意見が一致しない」とし、彼女の見解を巡る論争について「このまま風化させるべきではない」と述べていた。セブルス・スネイプ役のパーパ・エッシードゥは、さらに踏み込んだ行動を取っている。2010年平等法における「女性」の定義は生物学的な性を指すとした、2025年4月の英国最高裁判所の判決を非難する公開書簡に署名した、400人を超える業界関係者の一人である。

この判決を公に歓迎したローリングは、エッシードゥが降板させられるのではないかとの臆測に対し、Xで次のように回答した。「私にはシリーズから俳優を解雇する権限はないし、仮に権限があったとしても行使しない。私とは異なる、法的に保護された信念を持っているという理由で、人々から仕事や生計を奪うべきではないと考えている」

The Telegraphに対するパウリーの発言には、ほかのキャストとはやや異なる文脈がある。彼女は、この論争を巡る対立的なインタビューで追及されていたわけではない。ロンドンで主に、Skyの新作スーパーナチュラルスリラー『Possession』について語っていた際の発言だった。同作でパウリーは、18世紀のジャマイカに暮らすイギリス人プランテーション所有者の娘、シャーロット・コノートを演じている。話題がローリングに移ると、パウリーは率直に答えた。ローリングの見解には反対している。一方でハリー・ポッターを愛し、本を読んで育ち、この作品への出演も続けると。この組み合わせこそ、一連の発言を個別のコメントとしてではなく、一つのパターンとして検討する価値がある理由だ。

■「作者の死」理論が解決できないこと

この状況に最もよく当てはめられる枠組みは、ロラン・バルトが1967年に発表したエッセイ「作者の死」である。テキストの意味は、作者の意図や経歴によって決定されるべきではないと論じたものだ。バルトは「書くことに未来を与えるには、神話を覆さなければならない。読者の誕生は、作者の死によってあがなわれなければならない」と記した。一度公にされた言語は、それを組み立てた人物の意図を超え、その人物よりも長く残る意味を生み出す。作者は権威ではなく、「書き手」にすぎないという考え方である。

ローリングの著作に、受け継がれたアイデンティティに基づく偏見への抵抗を中心とする世界を見いだした何百万人ものハリー・ポッター読者にとって、この枠組みは一種の許可のように感じられた。マグル生まれと純血のヒエラルキーは、フィクションにおける人種差別の寓話として、長期にわたり一貫して描かれている。作者が作品の外で語ることを支持しなくても、その作品が自分にとって持つ意味を大切にすることはできるというわけだ。

問題は、バルトが論じていたのが解釈の権威であって、経済的な参加ではないことだ。バルトはテキストをどう読むべきか、誰がその意味を決定するのかについて書いていたのであり、商品を買うこと、ストリーミングサービスを契約すること、関連グッズを選ぶことの倫理を論じていたわけではない。ハリー・ポッターの場合、この二つは明確に異なる問題である。

ローリングは、背景に退いた作者でも、亡くなった作者でもない。Forbesによると、彼女はHBOシリーズの現役の製作総指揮であり、HBOから年間約2000万ドル、1ドル=159円換算で約31億8000万円を得ていると推定されている。書籍、映画、テーマパーク、ゲーム、グッズを含むハリー・ポッター・フランチャイズの価値は250億~300億ドル、約3兆9750億~4兆7700億円と推定され、ローリングは自身の知的財産全体から年間およそ5000万~1億ドル、約79億5000万~159億円を得ているとされる。理論上「作者の死」を宣言しても、ロイヤリティーの仕組みは変わらない。HBOシリーズを視聴することは、その作者が創作上の指導的立場にあるプロジェクトへの経済的参加でもある。

ハンナ・ラベルは、「#ripjkrowling」というハッシュタグを扱った2023年の査読付き研究で、ソーシャルメディアがバルトの構図を事実上逆転させたと論じている。作者がテキストの背後に退くのではなく、論争によってローリングは、出版史上のほぼすべての存命作家と比べても、強い存在感を持ち、頻繁に論じられる人物になったという。ローリングの反トランスジェンダー的な発言にハリー・ポッターのファンがどう向き合ったかを調査した2026年の学術的なファンダム研究では、ファンダムが、単純な「消費者倫理」の計算なら選ぶはずの明確な離脱に抵抗する、非常に持続性のある愛着を生み出すことも示された。

ローリングは、出版後も異例なほど積極的に作品世界へ関与しており、そのこともバルトの意味で彼女を「死んだ作者」とみなすのを難しくしている。ソーシャルメディアを通じてダンブルドアがゲイであることを明らかにし、本編の外で「魔法ワールド」の新たな設定を加え、現在は新しい映像化作品の制作にも積極的に参加している。彼女は単に原作を書いた人物ではない。その作品が今後何を意味するのかを形作り続ける存在でもある。

■社会学が示す「発言と忠誠」の構造

パウリー、リスゴー、フロストの行動には、より適した理論的枠組みがある。アルバート・O・ハーシュマンが1970年に発表した『離脱・発言・忠誠』は、もともと企業や組織における経済行動を扱ったものだが、愛着を持つ組織が受け入れ難い行動を取ったときに選べる三つの反応を示している。「離脱(Exit)」は組織を去ること、「発言(Voice)」は内部から状況を変えようと声を上げること、「忠誠(Loyalty)」は問題があっても関与を続けることである。

声を上げたキャストは、「発言」と「忠誠」を組み合わせている。制作から離脱するのではなく、作品にとどまりながら自らの考えを公に述べているのだ。離脱という選択肢がないわけではない。当初、役の候補として検討されていたニコラ・コクランは、自身が出演する可能性を公に否定し、参加を明確に断った俳優もいる。ハーシュマンの枠組みによれば、離脱のコストが高い場合、このような組み合わせは起こりやすくなる。そして、ここでの離脱コストは大きい。8年間の契約、キャリアを決定づける可能性がある役柄、『メディア王 ~華麗なる一族~』に携わったショーランナーのフランチェスカ・ガーディナーや監督のマーク・マイロッドと仕事をする機会が含まれる。リスゴーはこの判断を明確に認めている。Varietyに対し、8年間にわたる仕事を含む「この仕事の魅力的な点のすべて」があるため、離脱は考えられなかったと語り、「そうした問題を無視しているわけではない」と付け加えた。

エッシードゥに対するローリング自身の反応は、彼女が「発言」という仕組みを受け入れていることを示している。異論を唱えた人物を制作から排除することはないという立場だ。HBOのケイシー・ブロイスは、ローリングがクリエイティブチームの選定に「非常に深く関与した」と述べる一方、シリーズに彼女の政治的見解が「ひそかに盛り込まれる」ことはないと主張している。言い換えれば、制度上の構造は「発言と忠誠」を両立できるように設計されている。公に反対し、出演を続け、番組制作を予定通り進めるという形だ。

■過去の事例との決定的な違い

主要な文化作品が、制作者の見解によって複雑な状況に置かれたのは、これが初めてではない。リヒャルト・ワーグナーは反ユダヤ主義者であり、その音楽を、作曲者を形作ったイデオロギーから切り離して評価できるのかを巡って議論が続いてきた。とりわけイスラエルでは、ワーグナー作品の公の場での演奏を避ける暗黙の慣行が何十年も続いた。ロアルド・ダールは反ユダヤ主義的な発言をしており、その遺産管理団体は2020年に謝罪した。ロマン・ポランスキーは未成年者に対する犯罪で有罪判決を受けた後も、2020年のセザール賞を含む業界の主要な評価を受け続け、同年の授賞式では抗議の退席が起きた。これらの事例のほぼすべてでは、制作者がすでに亡くなっているか、実際の制作活動から十分に離れていたため、時間的な距離によって、作者と作品を実務上切り離すことが可能になった。

ハリー・ポッターの事例が過去の例と構造的に異なるのは、ローリングが単にフランチャイズと結び付いているだけではないからだ。彼女は、その最新かつ最も商業的に野心的な展開において、正式にクレジットされ、積極的に関与し、報酬を受け取る参加者である。ベル・パウリーがハリー・ポッターを愛し、本を読んで育ったと語るとき、彼女が示しているのは、トランスジェンダーの権利に関するローリングの見解が広く注目される以前から存在した原作への愛着だ。一方、HBOシリーズでペチュニア・ダーズリーを演じるとき、パウリーは、自身が強く反対すると公言した見解を持つ人物が製作総指揮を務める、新たな作品に参加している。この二つは同じではない。バルトの理論を使って同一視することは、解釈を巡る理論に、経済的参加の倫理を説明させようとするカテゴリー・エラーである。

だからといって、キャストの誰かを非難すべきだということではない。ハーシュマンの枠組みは、「発言」より「離脱」を道徳的に優れた選択とみなしてはいない。パウリーのように、公の場で立場を明確にすることは、沈黙を守るよりも誠実な行動である。この枠組みが浮かび上がらせる問いは別にある。離脱を伴わない発言は、批判の対象となる組織を変えるのか。それとも、その組織が存続するための隠れみのになるのか、という問いだ。この場合の組織とは、数百億ドル規模の価値を持つフランチャイズである。その知的財産の主要な権利者は、作者への反対と作品を楽しむことは両立できると納得した新たな視聴者が増えるたびに、経済的な利益を得る。

■パウリーの新作ドラマが示す文脈

『Possession』のインタビューだったという文脈は、特に注目に値する。パウリーはイギリスと奴隷制の歴史について、「私たちは奴隷制廃止について語り、それを成し遂げたことを自賛するが、奴隷制そのものに自分たちがどう関わっていたかについては、ほとんど語らない」と述べた。この発言は、彼女がプランテーション所有者の娘という悪役を演じるなかでなされた。パウリーはこの人物を、恐ろしくもあり、傷つきやすくもある存在として説明している。個人的なトラウマを抱えながら、構造的な権力とその乱用にも加担する人物だ。害悪から距離を置いていると自賛することと、その構造に実際に関与していることとの隔たりは、パウリーのハリー・ポッターを巡る発言が浮かび上がらせた隔たりそのものでもある。

パウリーにこの問題を解決する義務はなく、本人も解決したとは主張していない。34歳の彼女は、『ミニー・ゲッツの秘密』から『正義の光』、アンネ・フランク一家をかくまったオランダ人女性ミープ・ヒースを演じた作品、そして『マスターズ・オブ・ザ・エアー』へとキャリアを重ねてきたが、俳優としてはまだ初期の段階にある。ペチュニア・ダーズリー役を引き受ける現実的、芸術的な理由は十分にある。The Telegraphに対するパウリーの発言は、真に未解決な状況を可能な限り率直に表現したものだ。私はこの人物に反対している。だが、彼女が書いた作品も愛している。そして私は出演を続ける。理論によって、この隔たりが解消されるわけではない。

■注目ポイントQ&A

●なぜハリー・ポッターのキャスト陣はJ.K.ローリングに対して声を上げているのですか?

HBO版の新キャストは、2020年以降、トランスジェンダーの権利に反対する立場を公に示してきたローリングが共同制作するシリーズに、なぜ参加するのかと繰り返し質問されてきました。原文では、その立場が2025年4月の英国最高裁判所による「For Women Scotland対スコットランド自治政府」訴訟の判決によって、広い意味で後押しされたとしています。パウリー、リスゴー、フロスト、エッシードゥらは、沈黙を守るのではなく、こうした質問に直接答えることを選びました。これは社会学者アルバート・O・ハーシュマンが「発言」と呼ぶ選択肢で、組織にとどまりながら反対意見を公に示す行動です。2026年のクリスマスに予定されている初回放送が近づくにつれ、こうした問いは減るどころか増えています。

●HBO版ハリー・ポッターを視聴しながら、J.K.ローリングに反対することは可能ですか?

解釈の面では可能です。ロラン・バルトの1967年の「作者の死」理論では、テキストの意味を生み出すのは作者ではなく読者であり、読者は作者の意図や信念に縛られないと考えます。しかし、経済的な面では状況はより複雑です。ローリングはHBOシリーズの製作総指揮であり、フランチャイズ全体からのロイヤリティー収入に加えて、映像化への関与から年間約2000万ドル、1ドル=159円換算で約31億8000万円を得ていると推定されています。シリーズの視聴は、彼女が経済的利益を得るプロジェクトの商業的成功に貢献します。解釈の独立性と経済的な結び付きは、論理的に矛盾するものではありません。同じ作品との異なる関係を説明するものです。ただし、一方が他方を打ち消すわけでもありません。

●「作者の死」理論とは何ですか? J.K.ローリングにどう適用されますか?

ロラン・バルトは1967年のエッセイで、テキストの「究極の意味」を決めるために、作者の経歴、意図、政治的見解を使うことに反対しました。一度公にされた作品は作者の支配を超える意味を生み出し、読者がその意味を形成する場になると論じています。この理論は、ローリングのジェンダーに批判的な立場に反対しながら、ハリー・ポッターを楽しみ続けることを説明する際によく持ち出されます。しかし、バルトが論じたのは解釈の権威であり、経済的な消費の倫理ではありません。また、ローリングはソーシャルメディアを通じて「魔法ワールド」の正史を形成し続け、HBOシリーズの製作総指揮としても積極的に活動しているため、理論上の「死んだ作者」とみなすことが特に難しい存在です。2023年の学術研究では、ソーシャルメディアがローリングの場合にはバルトの典型的な構図を逆転させ、ファンダムの議論から存在感を薄れさせるどころか、継続的に意識される存在にしたと分析しています。

●ベル・パウリーの新作ドラマは、彼女のハリー・ポッターに関する発言とどう関係していますか?

パウリーは、Skyのスーパーナチュラルスリラー『Possession』のプレスインタビューでThe Telegraphに発言しました。同作では、18世紀のジャマイカに暮らすイギリス人プランテーション所有者の娘、シャーロット・コノートを演じています。作品について語るなかで、イギリスには、奴隷制への自国の関与の歴史に十分向き合わないまま、奴隷制廃止を成し遂げたことを自賛する傾向があると指摘しました。公に掲げる価値観と、構造への実際の関与との隔たりは、ハリー・ポッターを巡るパウリーの立場にも通じます。パウリーは、この隔たりを解決したと主張しているわけではありません。できる限り率直に、自分の立場を示しているのです。

元記事: Harry Potter’s Bel Powley Calls Out Rowling on Trans Rights: Voice Without Exit Has Limits

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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