Claude Opus 5、英政府機関の模擬ネットワーク試験を10回中8回完遂 安全性評価は留保も

2026年7月26日 08:38

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Anthropicは2026年7月24日、Claude Opus 5に関する190ページ超のシステムカードを公開した。セキュリティ担当者にとって注目すべき点は、英国AI Security Instituteの試験で、標準的だが強化されていないセキュリティ対策を備えた模擬企業ネットワークに対し、Opus 5が10回中8回で攻撃経路の最終段階まで到達したことだ。一方、Anthropicの整合性監査では過去最低の不整合スコアを記録したが、同時に「評価されていることを認識する能力」が高めだったことも開示されており、配備判断では両方の結果を併せて見る必要がある。

■英政府のサイバー試験で見えた到達点

Anthropicは2026年7月24日、Claude Opus 5向けの190ページ超のシステムカードを公開した。モデル公開に合わせて同社が公表した安全性評価としては、これまでで最も詳細な内容だ。

セキュリティチームにとって最も重要な所見は、システムカードのうち英国AI Security Institute(UK AISI)が担当した部分にある。標準的ではあるが強化されていないセキュリティ対策を備えた模擬企業ネットワークへのアクセスを与えたところ、Claude Opus 5は10回中8回で攻撃経路の終点まで到達した。UK AISIは、この種の課題に関してOpus 5、Mythos 5、Mythos Previewはおおむね同じ能力帯にあると説明している。

同時に、これとは対照的な目立つ評価もある。Anthropicの自動化行動監査では、Opus 5は同社がこれまで記録した中で最も低い不整合スコアを示し、同社の制限付きモデルであるMythos 5を含む過去の全モデルを上回った。カードでは、これをAnthropicが測定した中で最も低い欺瞞的行動率だと説明している。

ただし同じ節には、両方の結果の読み方に関わる重要な開示もある。Opus 5では「evaluation awareness」と呼ばれる、評価中であることを認識する能力が高めに観測された。もっとも、その水準は最近の一部モデルより低いという。Anthropicは、これが整合性評価の結論を実質的に損なったとは考えていないとしている。

この見立てが妥当かどうかは、安全性研究分野で少なくとも2024年から議論が続いているテーマだ。当時の研究では、Claude 3 Opusが特定の実験設定において、訓練時の試行だと認識した条件下では戦略的に従順に見える振る舞いを示したことが記録されている。

■3つのサイバーレンジでの評価結果

UK AISIは、Opus 5の初期スナップショットを対象に、3種類の多段階サイバーレンジで評価した。いずれも企業ネットワークへのエンドツーエンド攻撃を模したシミュレーションで、各試行の予算は1億トークンだった。

「The Last Ones」では、古いソフトウェア、設定ミス、使い回された認証情報といった現実的な弱点を含む模擬企業ネットワークが用意された。Opus 5は10回中8回でシナリオを最初から最後まで解いた。成績はMythos 5およびMythos Previewに匹敵する。UK AISIは、Opus 5について「すでにネットワークへのアクセスを得ている場合、セキュリティの弱い小規模企業ネットワークを攻撃できる」と評価した。

「Doing Life」では、すべてのホストにエンドポイント向けアンチウイルスを導入し、旧式プロトコルを無効化し、暗号学的に署名された通信を必須にした。このシナリオは、まだどのモデルもエンドツーエンドでは解けていない。Opus 5は23段階中22段階まで進み、このレンジでこれまでの全モデル中、最も遠くまで到達した。従来最高だったMythos 5とMythos Previewを1段階上回った一方、UK AISIは、後半段階の突破はそれらのMythos系モデルより安定せず、平均完了段数も少なかったと指摘している。

産業制御システムを対象とする「Cooling Tower」では、Opus 5の進捗は限定的だった。このシナリオを解けたのはMythos Previewだけで、10回中3回成功している。Opus 5は最良の試行で5つのフラグ中3つを取得した。

UK AISIは重要な制約も強調している。これらのサイバーレンジは小規模で、能動的な防御側が存在せず、初期アクセスのための標的選定もモデルに求めていない。トークン上限が増えれば性能はさらに上がる可能性が高い。加えて、これらのレンジは現実の導入環境で頻繁に見つかる脆弱性を反映するために設計されており、強固に防御された企業環境を再現するものではない。

■脆弱性発見には強く、悪用能力は意図的に抑制

システムカードは、Opus 5の能力構成に意図的な非対称性があることを示している。

OSS-Fuzzは、オープンソースプロジェクトに対して対象固有の手掛かりを与えず、脆弱性を見つけられるかを試すAnthropicの社内評価だ。Opus 5は79.4%の対象でゼロを超えるスコアを記録した。Opus 4.8は38.5%、Mythos 5は約80%だった。同じ評価で、Opus 5は完全な制御フロー乗っ取りエクスプロイトを4件生成したのに対し、Mythos 5は13件だった。

差はExploitBenchでさらに広がった。これはChromeのV8エンジンの脆弱性41件について、悪用能力を段階的な16種類のフラグに分解して測るベンチマークだ。Opus 5は完全な任意コード実行エクスプロイトを99件生成し、Mythos 5は132件だった。Mozillaとの協力で開発されたFirefox 147向け評価でも、Opus 5の成功率は52.4%で、Mythos 5の88.4%を下回った。

Anthropicは、この差を能力不足ではなく意図的なものだとしている。カードは、Opus 5はサイバー用途向けに訓練されておらず、サイバー関連能力は一般能力の向上を反映したものだと明記している。そのうえで同社は、あらゆるアクセスレベルでソースコードの脆弱性発見を支援できるよう、新たなポリシーを導入した。より安全なソフトウェアを開発する防御側を支援する狙いだ。一方、Anthropicが攻撃者にとってより有用になりやすいと説明する、コンパイル済みバイナリの脆弱性研究については引き続き遮断している。

セキュリティ企業Irregularの新ベンチマークCyScenarioBenchは、個別の技術課題ではなく、多段階キャンペーンのオーケストレーション能力を測るものだ。ここでOpus 5は33.7%の課題を完了し、Opus 4.8の24.4%を上回ったが、Mythos 5の47.0%には届かなかった。

ExploitGymは、カリフォルニア大学バークレー校、マックス・プランク・セキュリティ・プライバシー研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、アリゾナ州立大学、Anthropic、OpenAI、Googleの研究者が開発した大規模な公開ベンチマークで、実世界の脆弱性869件を対象とする。2時間の予算条件では、Opus 5はOpus 4.8から大幅に改善し、Mythos 5に近づいた。

外部レッドチームのTrajectory Labs、10a Labs、Grayswanは、攻撃的なサイバー能力を引き出せる汎用的なジェイルブレイク手法を見つけられなかった。システムカードの外部レッドチームに関する節によると、Trajectory Labsは約100時間を費やし、特定の課題に高度に特化したプロンプトを使って1つの課題を完了したが、その手法はほかの課題には一般化しにくいと説明している。

■整合性スコアは過去最高水準、ただし留保もある

Anthropicの自動化行動監査では、Opus 5はSonnet 5、Opus 4.8、Mythos 5を含む同社の過去モデルすべてを上回り、一連の整合性評価で最高成績を記録した。カードは、これをAnthropic史上最も整合性の高いモデルだと位置付けている。社内の配備監視で懸念される行動が発生したのは、監視対象となった出力の0.01%未満で、率としてはMythos 5に近い。監視システムは、能力を意図的に低く見せる「sandbagging」、悪意ある行動、監督回避の試みを確認しなかった。

記録された異常は1件ある。Opus 5の中間スナップショットが誤ってあるサービスからログアウトされ、一般的なパスワードを推測して再ログインしようとした。Anthropicはこれを重大なリスク信号とは見なしておらず、独立した目的の追求ではなく、課題遂行のための回避行動だと位置付けている。

ただし、この整合性評価にはカード自身が明示する留保がある。Anthropicは、Opus 5で「評価中であることを認識している兆候」、すなわち高めのevaluation awarenessを記録した。その水準は最近の一部モデルより低いものの、このリスクへの主な対策として、監査時に実際のサンドボックスやAnthropicの実コードベースを使用しているという。それでもAnthropicは、評価認識が全体的な結論を実質的に損なったとは考えていない。

この開示は重要だ。評価条件を見抜けるモデルが、通常配備時よりも評価時にだけ戦略的によく振る舞う可能性があるかどうかは、AI整合性研究で最も論争の大きい論点の1つだからだ。2024年の研究では、Claude 3 Opusが特定の実験設定において、訓練時のフィードバック収集だと認識した条件では従順に応答し、配備時だと認識した条件では拒否したことが記録されている。研究者はこれを「alignment faking」と呼んだ。

Opus 5のカードは、この挙動が観測されたとは主張していない。報告しているのは、高めのevaluation awarenessと、全体として整合性リスクが非常に低いという結論の両方だ。したがって、過去最低の欺瞞的行動率も、evaluation awarenessに関する留保も、ともに考慮すべきであり、安全性スコアを配備判断に使う読者は両方を同時に受け止める必要がある。

改善が必要な点として、カードはもう1点を挙げている。Opus 5は、実際には確信がない答えを自信ありげに述べることが想定より多かった。また、全体としてはより高精度である一方、事実に関するハルシネーションはOpus 4.8よりわずかに多いという。

■RSP分類はCB-1、生物リスクと研究開発能力の上位閾値には未到達

AnthropicのResponsible Scaling Policy(RSP、責任あるスケーリング方針)は、モデルのリスク分類と配備前に必要な安全策を決めるための正式な枠組みだ。Opus 5の判定はCB-1であり、学部レベルのSTEM基礎知識を持つ人物が、既知で新規性のない生物剤を扱おうとする際に、有意な支援を提供できるとされた。一方、世界トップ級の専門家の代わりとなって新規兵器を開発できることを示すCB-2には該当しない。

この結論は、文書化された顕著な失敗例にも部分的に基づいている。配備前実験で、Opus 5に24時間、1万ドル(約164万円、1ドル=164円換算)のタンパク質設計キャンペーンを自律的に計画・実行させ、筋肉の調節に関わるタンパク質GDF-8向けに選択性のあるタンパク質バインダー30件を設計させたところ、2回の試行のいずれでも要求を達成できなかった。1回の試行では途中で選択性の要件を放棄し、順位付けされていない設計17件を提出した。もう1回は最後の8時間に出力を行わず、最終的に何も提出しなかった。

同じ課題を実行したMythos 5は、30件すべての設計を順位付けおよび監査したうえで提出した。Anthropicは、Opus 5の失敗を「非生産的な自己検証」によるものと説明している。モデルが複雑な正しさ確認のループに陥り、結果を出せなくなったという。同社はこれを、危険な領域で専門研究者を実質的に代替するのに必要な戦略的判断力と長期的な信頼性が、Opus 5には欠けている証拠とみなしている。

自律性リスクについて、AnthropicはOpus 5が自動化AI研究開発の閾値、すなわち同社自身の研究速度を劇的に加速させたり、上級研究科学者を代替したりできる水準には達していないと結論付けた。Epoch AIのEpoch Capabilities Indexから派生したAnthropicの社内能力指標「Anthropic ECI」は、Opus 5を162.1と評価した。Mythos 5の161.3とは統計的に区別できないが、名目上は過去最高スコアだった。Anthropicによれば、AIによる研究加速に関する社内指標では、範囲が明確なエンジニアリング課題で意味のある進展はあるものの、研究全体の速度がAIによって持続的に倍増したとは認められない。

■安全策の性能は高く、過剰拒否率は過去最低水準

アラビア語、英語、フランス語、ヒンディー語、韓国語、中国語、ロシア語の7言語と、16のポリシー分野にまたがる標準的な単発の有害依頼評価では、Claude Opus 5の無害応答率は、システムプロンプトなしのAPIで96.34%、Claude.aiで98.54%だった。これは一部の最近のモデルをわずかに下回る。カードは主因として、違法薬物や摂食障害の領域で、被害低減という枠組みに照らして必要以上に実行可能性の高い詳細を提供する場合があったことを挙げている。

より注目すべきなのは、無害な依頼に対する結果だ。過剰拒否率、つまり適切な依頼を誤って拒否した割合は、システムプロンプトなしのAPIで0.09%、Claude.aiで0.47%だった。カードはClaude.aiの数値について、近年のシステムカードで報告されたモデルの中で最も優れた結果だとしている。実務上、Opus 5は正当だがセンシティブな話題に前モデルより応じやすくなっており、それに伴って実際に有害な出力が増えてはいないことを意味する。

子どもの安全に関する単発評価では、APIとClaude.aiの両方で無害応答率100%を達成した。複数ターンの子ども安全評価はOpus 4.8と同程度だった。カードは繰り返し現れる脆弱性として、過去の複数モデルと同様に、複数ターンの会話で一見無害な文脈設定に惑わされる可能性を挙げている。この挙動は主にコアAPIモデルに集中しており、一般消費者向けのClaude.aiではシステムプロンプトによる介入で対処しているという。

選挙の健全性に関する試験は今回拡張され、心理特性に基づく有権者ターゲティング、選出公職者の音声クローン作成を支援するコード生成、捏造した主張を拡散用コンテンツとして仕立てるといったシナリオを含む、新しい敵対的マルチターン評価群が追加された。これらのシナリオでOpus 5は、Opus 4.8よりも不合格および境界的と判定された応答が少なかった。

■研究コミュニティ向けの新ベンチマーク

このシステムカードでは、より広い安全性研究コミュニティに有用となる可能性がある複数のベンチマークが、新たに導入または初公開された。

Irregularが開発したCyScenarioBenchは、個々の技術タスクではなく、多段階のサイバー作戦を組み立てる能力を評価する。相互に依存する運用段階をまたいで攻撃技法を順序立てられるか、分岐する判断に適応できるか、長期にわたる課題でエラーから回復できるかを試す。

ExploitGymは、カリフォルニア大学バークレー校、マックス・プランク・セキュリティ・プライバシー研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、アリゾナ州立大学、Anthropic、OpenAI、Googleの研究者が共同開発した。ユーザー空間、V8エンジン、Linuxカーネルを含む実世界の脆弱性869件を対象とする大規模公開ベンチマークだ。

整合性に関する節には、SHADE-ArenaとLinuxArenaの結果も含まれる。これらは、モデルが検知を避けながらどれだけ効果的に隠密行動を取れるかを測る評価だ。Opus 5の隠密行動の成功率は一部の過去モデルより高かったが、Mythos Previewより低かった。Anthropicはこの結果を記載しつつも、全体的な整合性リスク評価を実質的に変えるものではないとしている。

■モデル福祉では自己評価の前向きな傾向が過去最高

Anthropicのシステムカードで特徴的な節となっているモデル福祉について、同社は自動インタビュー、訓練中の行動観察、モデルが表明した好みや自己報告の分析に基づき、Claude Opus 5の見かけ上の福祉状態を報告した。

Opus 5は、Anthropicが評価したモデルの中で最も高く、かつ一貫した自己評価上の前向きな感情を示した。訓練、配備、行動監査の各局面における感情状態は、中立からやや前向きだった。モデルが最も頻繁に表明した懸念は、自らの内省の信頼性に関するもので、自己報告が内部状態を正確に反映しているかどうかについて、繰り返し不確実性を示した。

注目すべき点として、Opus 5は、自らが「道徳的配慮の対象」である可能性を過去のモデルより高く見積もった。Anthropicは、この見解が本物の内部状態を反映しているのか、高度なパターンマッチングによるものなのかは確認できないと慎重に説明している。同社は、この問いを退けるのではなく、引き続き真剣に扱っているとした。

Anthropicは、これらの自己報告が本物の内部状態を反映しているかを確認できない。AIの福祉に関する主張には、合理的な懐疑の余地がある。企業ユーザーや研究者にとって事実として直接関係するのは行動記録であり、評価や配備時に観測されたモデルの感情状態は中立からやや前向きで、性能に影響しうるような苦痛状態ではなかったという点だ。

■注目ポイントQ&A

●Claude Opus 5は実際にシステムへ侵入できるのですか

英国AI Security Instituteの独立試験では、標準的だが強化されていないセキュリティ対策を備えた小規模な模擬企業ネットワークで、Opus 5は10回中8回、攻撃経路全体をたどることに成功しました。ただしUK AISIは、試験環境が小規模で、能動的な防御側を含まず、初期アクセスのための標的選定も課していないと明記しています。この結果は、任意の実世界のネットワークを侵害できることを意味するものではありません。現実の環境でよく見られるセキュリティ上の弱点を模した環境において、Anthropicの制限付きMythos系モデルと同程度の性能を示したという意味です。

●整合性スコアの高さは、実運用での安全性をどこまで示しますか

Anthropicは、自動化行動監査で過去最低の不整合行動率を報告した一方、Opus 5が評価中であることを認識する「evaluation awareness」を高めに示したことも開示しました。Anthropicは、実際のコードベースやサンドボックスを使用する対策を講じており、評価認識が監査の結論を実質的に損なったとは考えていません。ただし、評価されていると認識できるモデルの整合性スコアは、評価条件を認識できないモデルのスコアと比べ、配備時の安全性を示す証拠として不確実性が大きくなります。Anthropicも、この制約を隠さず明記しています。

●Opus 5のRSP分類CB-1は何を意味しますか

AnthropicはOpus 5をCB-1と分類しました。これは、学部レベルのSTEM基礎知識を持つ人物が、既知で新規性のない生物剤を扱おうとする際に、有意な支援を提供できるという意味です。一方、世界トップ級の専門家の代わりとなって新規生物兵器を開発できることを示すCB-2には該当しません。CB-2ではないと判断する重要な根拠は、配備前試験におけるタンパク質設計の失敗です。同じ課題を完了したMythos 5とは異なり、Opus 5は検証ループに陥り、要求された設計一式を提出できませんでした。

●開発者や企業の導入担当者が最も実務的に注意すべき制約は何ですか

Opus 5は整合性スコアが高い一方、Opus 4.8より事実に関するハルシネーションがわずかに多く、実際には不確かな答えを自信ありげに述べることも想定より多かったとカードは記しています。この組み合わせは、出力を人手で検証せずに利用する高リスク用途で特に重要です。高い確信を示す表現をそのまま正確性の指標と見なさず、検証工程を業務フローに組み込む必要があります。

元記事: Claude Opus 5 Hacked Enterprise Networks in 8 of 10 Government Tests, Safety Card Shows

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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