Metaが初の有料AI API提供へ、独自チップ「Iris」9月生産開始とクラウド参入報道で株価急反発

2026年7月14日 14:31

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記事提供元:Tech Times

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Meta Platforms(メタ)の株価が2026年7月10日までの1週間で約15%急騰し、過去2年以上で最大の週間上昇率を記録した。この背景には、競合他社を大幅に下回る価格で提供される初の有料AIモデルAPIの発表や、独自AIチップの生産スケジュール、そしてクラウドコンピューティング事業への参入計画がある。これまで「巨額のコスト負担」と見なされていた1450億ドル(約23兆4900億円)規模のインフラ投資が、収益を生み出す資産へと転換する道筋が見えたことで、市場の評価が急変している。

■株価急反発をもたらした「投資のストーリー」の変化

Metaの株価は2026年7月10日までの1週間で約15%上昇し、2024年初頭以来で最強のパフォーマンスを示した。金曜日のセッションだけで6%上昇し、株価は約669ドルに達した。これにより、年初からの13%の株価下落分を帳消しにし、時価総額は約1.7兆ドル(約275兆4000億円)に回復している。

ウォール街はこれまで、同社が4月に発表した2026年の設備投資(capex)見通しを最大1450億ドル(約23兆4900億円)へと引き上げたことを、回収の目処が立たないAIインフラへの無謀な賭けとして嫌気していた。しかし、今週起きた変化は支出額の縮小ではなく、「その支出が何のために行われているのか」というストーリーの具体化だった。

同社の2026年第1四半期決算では、売上高が前年同期比33%増の563億1000万ドル、純利益が同61%増の267億7000万ドルと、本業の広告事業が極めて堅調であることが示されていた。しかし、投資家は業績よりも設備投資の軌跡を注視しており、「この巨額投資をどうやってマネタイズするのか」という疑問を抱き続けていた。今週の相次ぐ発表が、その疑問に対する具体的な回答となった。

■初の有料API「Muse Spark 1.1」と競合を圧倒する価格戦略

最大の注目イベントは、Meta Superintelligence Labsが開発した第2のモデル「Muse Spark 1.1」の発表と、米国でのパブリックプレビューとして開発者向けに開放された「Meta Model API」の提供開始だ。Metaが最先端のAIモデルへのアクセスに対して企業に課金するのは、同社の歴史上初めてのことである。

Muse Spark 1.1は、自律的なツール利用、コンピュータ操作、マルチエージェントの調整、コード開発などのエージェントタスク向けに構築されたマルチモーダル推論モデルである。コンテキストウィンドウは100万トークンに及び、不要な情報を破棄しつつ重要なステップを保持する圧縮メカニズムを備えている。入力はテキスト、画像、動画、ドキュメントに対応し、APIはOpenAIおよびAnthropicのSDKフォーマットと互換性があるため、開発者はベースURLとAPIキーを変更するだけで簡単に移行できる。

価格は100万入力トークンあたり1.25ドル(約202.5円)、100万出力トークンあたり4.25ドル(約688.5円)に設定されている。これは競合他社のフラッグシップモデル(Claude Opus 4.8:入力5ドル/出力25ドル、GPT-5.5:入力約5ドル/出力30ドル)を大幅に下回る。マーク・ザッカーバーグCEOはX(旧Twitter)で3年ぶりの沈黙を破り、「他社の一部の価格設定は非常に極端でマージンが高すぎる。我々は、最先端のインテリジェンスをはるかに手頃なコストで提供できると考えている」と投稿した。

ただし、開発者にとって重要な注意点がある。Muse Spark 1.1は推論モデルであるため、モデルが回答を出力する前に内部で行う「思考プロセス(Chain-of-Thought)」のトークンに対しても、出力レートと同じ100万トークンあたり4.25ドルが課金される。そのため、複雑な推論ワークロードにおける実質的なタスクあたりコストは、表面上の価格よりも高くなる可能性がある。

■ベンチマーク評価におけるベンダー発表値と第三者検証の乖離

Metaが公表したベンチマーク結果によると、Muse Spark 1.1はツール利用の「MCP Atlas」で88.1、「JobBench」で54.7、「Humanity's Last Exam」で62.1、「Terminal-Bench 2.1」で80.0を記録し、Google、OpenAI、Anthropicのモデルを上回るとされている。

しかし、独立検証企業のVals AIが独自の環境で「Terminal-Bench」を評価したところ、スコアは69.29にとどまり、Metaの発表値と10ポイント以上の開きが見られた。また、第三者ベンチマーク機関のArtificial Analysisは、同モデルのインテリジェンス指数を51と評価し、タスクあたりの推定コストを約0.26ドルとした。なお、同社はMetaとリリース前に商業関係があったことを開示している。ベンチマークの数値はあくまで出発点として捉えるべきであり、実際の業務への導入判断には慎重な検証が必要であるとみられる。

■独自AIチップ「Iris」が9月に生産開始へ

ロイター通信はMetaの内部メモの情報として、同社のカスタムAIチップ(コードネーム:Iris)が2026年9月に製造を開始する予定であると報じた。Irisは、FacebookやInstagram、ジェネレーティブAI製品全体のトレーニングおよび推論ワークロードを処理するために設計された「MTIA(Meta Training and Inference Accelerators)」プログラムの一環である。

このチップは、約6週間のバグテストフェーズを重大なアーキテクチャ上の問題なしにクリアした。Metaは設計面でBroadcom(ブロードコム)と提携し、製造はTSMCに委託、メモリはサムスン、ストレージはサンディスク、光ファイバー部品は住友電気工業から供給を受ける合意を交わしているという。

Irisは、NvidiaやAMDから購入するGPUを代替するものではなく、補完するものとして位置づけられている。戦略的な目標は、ランキングやレコメンデーション、推論などのワークロードを内製チップに移行することで、長期的に計算の限界コストを削減することにある。Metaは2027年にかけて約6ヶ月ごとに新しいMTIA世代を投入する計画を立てている。

■カナダ・アルバータ州に130億カナダドルの巨大データセンターを建設

Metaは7月8日、カナダのアルバータ州スタージョン郡に1ギガワット規模のAIデータセンターキャンパスを建設すると発表した。同社にとってカナダ初の施設であり、米国以外では最大規模となる。投資額は130億カナダドル(約92億米ドル、約1兆4904億円)を超える。

このキャンパスは、ピーク時に3000人以上の建設労働者を雇用し、300人以上の恒久的な運営雇用を創出する見込みである。Metaは、大規模な産業ユーザーが公共グリッドを介さずに直接電力を調達できるアルバータ州の規制枠組みを、立地選定の主な要因として挙げている。冷却システムには、運用水を必要としないクローズドループ式の液冷ドライシステムが採用される。

■クラウド事業へのピボット:余剰インフラを収益源へ

ザッカーバーグCEOは木曜日のブルームバーグのインタビューで、MetaがAI計算リソースを外部顧客にリースする計画(クラウドコンピューティング事業)を開発中であることを認めた。これにより、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、あるいはCoreWeaveなどの新興クラウドプロバイダーと直接競合することになる。

この動きが実現すれば、Metaのインフラ支出はコストセンターから収益源へと変貌する。ジェフリーズのアナリストは、このアプローチを「Amazonが自社の余剰技術を収益化してAWSを構築したプロセス」に例えている。Metaが自社製品の需要を超える規模で計算能力を構築したとしても、その余剰分は「埋没資本」ではなく、新事業の「在庫」として機能することになる。

■EUのデジタルサービス法(DSA)違反による120億ドルの罰金リスク

市場がMetaの好材料に沸く一方で、欧州委員会は同じ金曜日、InstagramとFacebookの「中毒性のあるデザイン」がデジタルサービス法(DSA)に違反しているとする予備的な見解を公表した。これにより、最大120億ドル(約1兆9440億円)に達する可能性のある罰金手続きへの道が開かれた。

欧州委員会の調査によると、無限スクロール、動画の自動再生、プッシュ通知、高度にパーソナライズされたレコメンデーションアルゴリズムなどの機能が、未成年者や脆弱な大人の身体的・精神的健康に及ぼすリスクをMetaが十分に評価していないと判断された。最終決定で違反が確定した場合、Metaは世界年間売上高の最大6%に相当する罰金を科される可能性がある。同社の2025年の売上高(約2010億ドル)を基準にすると、罰金額は約120億ドルに達する。

Metaは「十代の若者を保護するために講じた重要なステップが正確に考慮されていない」として、この予備的見解に同意しない姿勢を示している。しかし、指摘されたレコメンデーションエンジンや無限スクロールは、ユーザーをプラットフォームに引き留めて広告を表示するための核心的な仕組みであり、これらの再設計を義務付けられれば、同社の広告ビジネスの構造そのものに影響を与える可能性がある。

■7月29日の第2四半期決算発表が試金石に

市場の関心は、Metaが第2四半期決算を発表する7月29日に集まっている。アナリストは売上高を580億ドルから610億ドルの間と予想している。決算説明会では、設備投資のさらなる引き上げの有無と、ザッカーバーグCEOが開発中であることを認めたクラウド事業「Meta Compute」に関する具体的な開示があるかどうかが焦点となる。

■注目ポイントQ&A

●Metaの株価が1週間で15%も急騰したのはなぜですか?

主に4つの発表が好感されたためです。1つ目は有料APIを備えた「Muse Spark 1.1」の発表(7月9日)、2つ目は独自AIチップ「Iris」の9月生産開始報道(7月9日)、3つ目はカナダでの130億カナダドル規模のデータセンター建設発表(7月8日)、4つ目はマーク・ザッカーバーグCEOによるクラウド事業参入計画の表明(7月10日)です。これらにより、巨額のインフラ投資が将来的に収益化される道筋が具体的になったと市場に受け止められました。

●Metaの新しいAI APIの料金は競合と比べてどのくらい安いですか?

100万入力トークンあたり1.25ドル、100万出力トークンあたり4.25ドルに設定されており、競合であるAnthropicのClaude Opus 4.8(入力5ドル/出力25ドル)やOpenAIのGPT-5.5(入力約5ドル/出力30ドル)の約4分の1の価格です。ただし、Muse Spark 1.1は推論モデルであるため、モデルが回答を出力する前の「思考プロセス」のトークンにも出力レート(4.25ドル)が適用されるため、複雑なタスクでは実質的なコストが表面上の価格より高くなる点に注意が必要です。

●Metaの独自チップ「Iris」とは何ですか?

MetaがBroadcomと共同設計し、TSMCで製造するカスタムAIチップです。FacebookやInstagramなどのレコメンデーションや推論ワークロードを処理するために設計されており、NvidiaやAMDのGPUを補完する役割を持ちます。自社ワークロードを安価な独自チップに移行することで、将来的に外部へ提供するクラウドサービスのコスト競争力を高める狙いがあります。

●EUのデジタルサービス法(DSA)違反の指摘は、Metaにどのような影響を与えますか?

欧州委員会からプラットフォームの中毒性のあるデザイン(無限スクロールや自動再生など)がDSAに違反しているとの予備的見解が出されており、最終決定で違反が確定した場合、最大で世界年間売上高の6%(約120億ドル)に上る罰金が科される可能性があります。また、これらの機能は広告表示回数を増やすための核心的な仕組みであるため、再設計を余儀なくされた場合は広告収入に構造的な打撃を与えるリスクがあります。

元記事: Meta Launches Paid AI API at One-Quarter Rival Cost as Stock Posts 15% Weekly Surge

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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