ビッグバンから10億年以内に誕生した星を発見 ケンブリッジ大ら

2023年7月5日 09:10

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天の川の内側領域にある古代の星のイメージ。左:星の軌道のいくつかの例。右:ゆっくりと回転する太陽を基準とした銀河内のこれらの星の位置。(c) 左の背景画像: ESA/Gaia、画像: Amanda J. Smith、Anke Arentsen、ケンブリッジ天文学研究所(画像: 王立天文学会の発表資料より)

天の川の内側領域にある古代の星のイメージ。左:星の軌道のいくつかの例。右:ゆっくりと回転する太陽を基準とした銀河内のこれらの星の位置。(c) 左の背景画像: ESA/Gaia、画像: Amanda J. Smith、Anke Arentsen、ケンブリッジ天文学研究所(画像: 王立天文学会の発表資料より)[写真拡大]

 英国の王立天文学会は4日、ケンブリッジ大学の科学者らを中心とする国際研究チーム(Pristine Inner Galaxy Survey;PIGS)が、ビッグバンから10億年以内に誕生した最古の恒星を複数発見したと発表した。

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 今回の発見は、口径3.58mのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡 (CFHT)による撮像画像から、特殊フィルターで候補となる星を絞り込んだうえで、口径3.89mのアングロ・オーストラリア望遠鏡 (AAT) による分光観測によって行われたものだ。

 銀河系は、ビッグバンから6億年後の今から132億年前に誕生したが、その中心部付近にはビッグバンから10億年以内に誕生した星が存在していると考えられてきた。

 非常に遠くの宇宙にあるクエーサーのような天体の観測では、過去の姿を捉えることしかできない。だが銀河系の直径は約10万光年しかなく、もしも銀河系の中心付近に存在している非常に古い星を観測できれば、宇宙スケールから見てごく最近の姿を詳細に調べることができることになり、科学者たちにとっては非常に興味深いワクワクするような天体なのだ。

 このような星はほとんどが水素とヘリウムでできており、太陽のような若い星よりも重い元素の量がはるかに少ないため、その原始的な化学組成によって認識できるのだという。銀河系円盤内では明るい天体が多く、このような星を探し出すことが難しいため、円盤面から離れた、銀河系の周りの低密度のハロー内での探索を進め、今回の発見にこぎつけたのだ。

 これらの星は誕生が古ければ古いほどその運動が無秩序なものになるが、運動範囲は銀河の中心の周りである程度の平均的な回転を示しているという。また、これらの星の多くは、生涯のほぼすべてを、銀河の中心と太陽のちょうど中間に達する球体の内側で過ごしていることも明らかになった。

 今回発見された古い星々は、寿命が120億年以上あり、少なくとも質量的には寿命が約100億年とされる太陽よりは小さいものと考えられる。今後このような古い星々の観測データが集積されれば、宇宙誕生直後に輝いていた星々がどんなキャラクターだったのかも明らかにされるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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