がん悪液質の仕組みの一端を解明 進行がんでの生存率やQOL向上に期待 理研

2023年5月20日 08:43

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ショウジョウバエ幼虫のがん組織から分泌され、遠隔の脂肪体組織に作用するネトリン(緑色)のイメージ(画像:理化学研究所の発表資料より)

ショウジョウバエ幼虫のがん組織から分泌され、遠隔の脂肪体組織に作用するネトリン(緑色)のイメージ(画像:理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 理化学研究所は16日、がんが進行すると全身が衰弱するがん悪液質に、がん細胞が分泌するタンパク質の1種ネトリンが関係していることを突き止めたと発表した。これまでよく解っていなかったがん悪液質の基本的な仕組みを理解し、患者の生活の質や生存率の向上につながる可能性があるという。

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■がん悪液質とは?

 がんが進行すると、食欲不振や体重の減少を伴いながら、全身が衰弱していき、やがて死に至る。これががん悪液質だ。

 がん悪液質は、進行がん患者の80%以上に認められ、患者の生活の質や生存率に重大な影響を与える。しかし通常の栄養サポートでこれを完全に回復することは、難しいとされている。

 進行がん患者の生活の質や生存率を向上させるためには、がん悪液質の仕組みを解明する必要があるが、その詳しい仕組みについてはよく解っていない。これは、がん悪液質には全身に及ぶ生理的異常が複雑に絡み合っているためだ。

 そこで研究グループは、これを解析しやすいショウジョウバエを使ってがん悪液質の仕組みの解明に挑んだ。

■がん細胞がカルニチンを減少させエネルギー不足に

 研究グループは、ショウジョウバエの幼虫の将来眼になる組織にがんを発生させ、「がんそのものではなく、がんが分泌する物質が全身に悪影響を与えている」という仮説の下に、詳しい解析をおこなった。

 その結果、がん細胞が分泌するタンパク質の1種ネトリンが、ショウジョウバエの幼虫の哺乳類における肝臓や脂肪に相当する組織で、カルニチンの産出を抑制。カルニチンは、脂肪酸からエネルギーをつくるのに欠かせないために、全身がエネルギー不足に陥り、衰弱していくことを突き止めた。

 さらに、ネトリンの働きを抑制したところ、がん細胞自体には影響がないものの、ショウジョウバエの生存率が著しく向上することが確認された。またカルニチンを補うなどすることで、ショウジョウバエの生存率が回復することも確認された。

 ネトリンの増加とカルニチンの減少はヒトのがん患者にもみられるため、研究グループでは今後、ネトリンを標的とした新しいがん治療法の開発につながる可能性が期待されるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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