トヨタ、欧州の運用会社からの気候変動に関する提案に反対を表明

2023年5月14日 16:39

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 トヨタは10日、気候変動関連の活動に関する定款の変更について、欧州の運用会社からの株主提案に反対する方針を表明した。6月14日の株主総会で本件は付議されることになる。

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 株主提案は、ストアブランド・アセットマネジメント、APGアセットマネジメント、デンマークの年金基金の3主体からの共同提案で、気候変動に関する渉外活動がリスク減少にどのように寄与したか、パリ目標に整合しない場合にどのように是正策をとるのか、報告書に毎年記載するように定款の変更を求めるものである。

 これに対しトヨタは、2050年のカーボンニュートラル達成を経営目標として様々な取り組みを行っており、2021年から株主の意見を聞きながら年次報告書を開示していることを、今回の株主提案に反対する理由として述べている。

 気候変動に関する欧米の株主からの日系企業に対する株主提案は増加しており、直近ではJパワー(電源開発株式会社)に対しても、HSBCアセットマネジメントや環境NGOから提出されている。

 気候変動の取り組みに対する株主や投資家の目は厳しくなってきている。そうした要求に対応しない場合、資本調達が機動的にできなくなるだけでなく、欧米で活動するグローバル企業にとってはレピュテーションリスクにも晒されることになる。つまり、気候変動に後ろ向きな企業という烙印を押され、収益獲得機会を失う可能性がある。

 一方で、対外向け報告書の作成をはじめ、気候変動対応にはコストも時間もかかるため、企業にとっては重荷となる側面があり、何をどこまで実行するかはバランスが難しい経営課題である。

 ESGという観点では、気候変動だけでなくガバナンスに関する要求水準も高まっている。それに呼応して、三井住友信託銀行はボードアドバイザーズと資本提携し、コーポレートガバナンスに関するコンサルティングビジネスを拡充する動きを見せている。

 経済産業省のレポートでも、企業と投資家の対話の促進やコーポレートガバナンスコードとの紐付けは課題として提起されており、現時点では企業と投資家間の対応水準に関する意識差があることを裏付けている。

 気候変動への取り組みは、対応を間違えれば損失にも繋がりかねないリスクで、コストもかかる。だが今後その対応が緩和されることはなく、厳しくなる一方であることは明らかだ。これを好機と捉え対応を先導するポジションを築ければ、先行者利得を得られる可能性もある。

 トヨタのようなグローバルな大企業がその先鞭をつけることで、後続の日系企業の足掛かりになることが期待される。(記事:Paji・記事一覧を見る

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