【映画で学ぶ英語】『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のキメゼリフを解説

2023年2月28日 11:39

印刷

 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、マーベル・コミックスのアフリカ系スーパーヒーローを主人公にした実写映画。前作でブラックパンサー/ティ・チャラ役を演じたチャドウィック・ボーズマンが急逝したことで、本作は新たなブラックパンサーの誕生物語になっている。

【こちらも】【映画で学ぶ英語】『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』:サリー一家のモットーを解説

 今回はこの映画終盤のキメゼリフを題材に、動詞「consume」の用法を紹介したい。

■映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のあらすじ

 舞台はアフリカ大陸にある架空の王国・ワカンダ。同国の守護者・ブラックパンサーでもあるティ・チャラ王が急に病を得て崩御し、彼の母・ラモンダが王位を継ぐことになった。だが、新たなブラックパンサーとなる人物はまだ出てこない。

 それから1年後、ワカンダでしか採掘できないはずの特殊金属・ヴィブラニウムが大西洋の海底で発見された。実はアメリカのCIAと軍部が密かにヴィブラニウム探知機を開発し、海底調査を行っていたのだ。

 強力な武器に転用できるヴィブラニウムを勝手に採掘しようとする米国の動きに脅威を感じたのは、ワカンダ王国だけではない。何百年も前に植民地征服者を逃れて海底帝国・タロカンを築いた皇帝ネイモアも、米国を阻止すべく乗り出してくる。

 ネイモアはワカンダ王国の防衛網をかいくぐってラモンダ女王たちの前に姿を現した。彼は、ヴィブラニウム探知機を開発した女子大学生・リリ・ウィリアムズを引き渡さなければ、ワカンダを破壊すると脅迫する。

 リリを保護するため、ティ・チャラの妹・シュリとワカンダ王国特殊部隊の隊長・オコエは、リリが在籍するMIT(マサチューセッツ工科大学)に向かう。しかし、そこには彼女を渡すまいとするFBIやネイモアの手下も先回りしていた。

 やがてリリ争奪戦は、ワカンダとタロカンの総力戦にまで発展していくのだった。

■映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の名言

 本作終盤のクライマックスは、ワカンダとタロカンの決戦。前評判通りの展開で、シュリがワカンダの守護者・ブラックパンサーとなってネイモアと対決する。

 死闘の末、ブラックパンサー/シュリに追い詰められたネイモアだがなかなか降参しない。そんな彼にブラックパンサーが放ったのが、以下のキメゼリフだ。

 “Vengeance has consumed us, but we cannot let it consume our people.” - 「私たちの復讐に国の人々を巻き込んでいはいけない」

■表現解説

 このキメゼリフを理解するカギは、動詞consumeだ。

 動詞consumeは元来、「エネルギーや時間などを大量に消費する、飲み食いする、メディアから情報を取り入れる」といった意味がある。

 さらに「使い果たす、消耗する、破壊する」といった否定的なニュアンスでも使われる。感情が関わる文脈では、「ある感情によってすべての行動が支配されている」といった意味になる。

 したがってセリフの前半は、「復讐心が私たちを支配した、破滅させた」と言えるだろう。

 ちなみにこの用法でconsumeは、we were consumed by vengeanceのように受動態になることが多い。激情に支配されることは、個人の主体性を失うことに等しいのかもしれない。

 セリフの後半、「cannot let 目的語+動詞の原型」は「目的語に〜させることはできない」という構文。たとえば「Man Utd cannot let Cristiano Ronaldo go / マンチェスター・ユナイテッドはクリスチアーノ・ロナウドを手放せない」のように使われる。

 Itはvengeanceを指すため、後半の意味は「復讐心によって私たちの国民が破滅することを許してはならない」ということになる。

 シュリが私情を捨て、ワカンダの守護者ブラックパンサーとしての自覚を持ったことを象徴するキメゼリフである。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事