【どう見るこの相場】林業関連株は森林環境税・森林環境譲与税見直しで「ニッチ」株人気を期待

2022年12月20日 09:42

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 オーバーキル、政策不況を覚悟しなければならないようである。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、12月14日のFOMC(公開市場委員会)後の記者会見で、物価目標2%の達成に向け金融引き締め策を長期化させるとタカ派発言をしたからだ。米国株価は、利上げ長期化よりもこれによる景気のリセッション入り、企業業績の悪化の先売りに回り、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、前週末3日間で1188ドル安と急落してしまった。

 パウエル議長が口にした物価上昇目標2%は、わが日本銀行が、2013年4月に発動した異次元金融緩和策の政策目標とちょうどイーブンだが、日銀は以来、9年7カ月もの長きにわたってもゼロ金利政策から脱却できずにいる。米国の足元の消費者物価指数の上昇率は、やや下がったといってもまだ7%台にあり、FRBが、日銀に倣ってまさかエンドレスの引き締め策も辞せずとしたのかとも懸念される。NYダウの大幅安は、「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」といわれるだけに、残り10営業日の師走相場も、リスクオフ・ムードを強め、「掉尾の一振」か「掉尾の三振」か大いに悩ませてくれることになる。

 ただマーケットの転んでもただでは起きないしぶとさ、諦めの悪さはいつものことである。東京市場の米国市場離れを期待する一方、先回りして「不況下の株高」と理論武装したり、全般波乱相場の圏外に位置する材料株、好需給株、さらには折からラッシュとなっている新規株式公開(IPO)株を上値にシコリがないとして回転売買するなどあの手この手の次善策、抜け道、裏道などにトライするはずだ。

 そこで今週の当コラムも、この一法としてニッチ株にアプローチすることとした。森林環境税・森林環境譲与税の関連株である。前週末16日に決定された2023年度の与党税制改正大綱では、防衛費増額の財源問題やNISA(少額投資非課税制度)拡充が連日、新聞、テレビの大手メディアに取り上げられてきた。株式市場に密接なNISA拡充は、制度の恒久化、非課税期間の無期限化、投資上限の拡大など金融庁や証券界の要望にほぼ満額回答となった。森林環境税・森林環境譲与税も、林野庁や全国町村会から見直しが要望された税目の一つである。

 森林環境税・森林環境譲与税は、気候変動問題に関する国際的枠組み「パリ協定」の達成に向け2019年3月に成立した。このうち先行施行されたのが森林環境譲与税で、すでに国庫から都道府県、市町村に2019年度200億円、2020年度400億円、2021年度400億円の交付金が配分されている。

 43兆円の防衛費増額に比べて予算額は微々たるものだが、「伐って、使って、植える」森林資源の循環利用により温室効果ガスの吸収量を増大し、保水力を強化して災害防止や水源涵養を図り、さらに生物多様性の保全にも資するための税制であり、政策目標は気宇壮大なのである。また、森林環境税は、2024年度からスタートし、国民一人当たり年間1000円を住民税とともに徴収し、納税義務者は約6200万人とされているから税額は年間600億円となる。

 来年度税制改正要望は、先行実施の森林環境税の譲与基準の見直しである。譲与基準が、各自治体の私有林・人工林の面積、人口、林業従事者数により割り振られ、この交付金が間伐などによる森林整備、植林体験教育、公共施設への木材使用などに使用されている。しかし人口基準から森林のない都市区部にも配分されており、これが交付された譲与税の47%が活用されておらず各自治体に基金として積み立てられたままであることの要因となっていたのである。

 日本は、森林面積が国土の7割を占める森林大国といわれている。しかし新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的感染爆発)とともに米国で発生した木材不足、木材価格高騰の「ウッドショック」が、2020年、2021年に日本にも波及し、住宅価格の上昇、住宅建設の遅延につながったことは記憶に新しい。

 経済安全保障上からも国産材利用は不可欠となるが、高齢化による林業従事者不足、後継者難、外材に押された林業そのもの衰退から日本の森林は荒廃した放置林だらけとなり、温室効果ガスの吸収どころか保水力も失い災害防止にも支障を来す瀬戸際にいるのである。それだけに森林環境税と森林環境譲与税の今後にかかる期待は大きいはずだ。

 株式市場では、林業関連株は少数派でまさにニッチ産業である。当特集では、何回も取り上げてきた木材関連株を含めて「ニッチ・トップ」人気は高望みになるかもしれないが、「ニッチ・セカンド」、「ニッチ・サード」程度の活躍は期待したいものである。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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