楽天モバイル元社員に有罪、ソフトバンクから情報持ち出し 今後の影響は?

2022年12月14日 12:14

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 東京地裁で9日、楽天モバイルの元社員に対する有罪判決が言い渡された。15年間勤務したソフトバンクを19年12月末に退職して、翌月の20年1月から、楽天モバイルに転職していた元社員が、ソフトバンクを退職する際に、機密情報を不正に持ち出したという不正競争防止法違反(営業秘密領得)罪の疑いで21年1月に逮捕されていた。

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 当時楽天モバイルは携帯事業への本格参入を宣言しながらも、基地局の整備が計画通りに進展しない苦境にあった。19年10月の本格参入時期を、半年間の延期に追い込まれていた。

 同年12月、元社員は機密情報を持ち出してソフトバンクを退職し、翌月の20年1月に楽天モバイルに入社。2月にソフトバンクが元社員のパソコンを確認して情報の持ち出しが発覚、3月には警視庁に被害を申告した。

 4月、楽天モバイルが携帯事業に本格参入。5月、楽天の決算説明会で3月末時点の基地局建設が当初計画を上回ったと発表された。元社員の転職時期と、楽天モバイルの基地局整備の進展状況がいかにもリンクしているように推移している。

 8月、警視庁が楽天モバイル本社に捜索・差し押さえを実施。12月、ソフトバンクが(楽天に対する)営業秘密の利用停止仮処分命令を東京地裁に申し立て。21年1月12日、元社員が警視庁に逮捕・起訴される。5月6日、ソフトバンクが民事訴訟で「基地局の廃棄と1000億円の損害賠償」を楽天と元社員に請求。

 元社員は刑事事件と、民事訴訟の双方で責任を追求されていたことになり、今回刑事事件で懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の判決が下された。元社員の行為が不当競争防止法に抵触していたと認定されたものの、被害の程度や計画性などを鑑みた判決と言えよう。

 注目されるのは(ソフトバンクから持ち出された情報により開設されたと言う)基地局の廃棄であろう。ソフトバンクが主張するように、基地局の廃棄に追い込まれた場合、楽天モバイルは無傷ではいられない筈だ。だが元社員が転職した20年1月から、楽天モバイルが家宅捜索を受けた8月までの間に、楽天モバイルの関係者に持ち出したデータを提供していた証拠はひとつもないと言う。そもそも何の為に情報を持ち出したのかも分からない。

 ソフトバンクが振り上げた大きな拳の行方は、今はまだ見えない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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