アルコニックスは調整一巡、23年3月期は上振れの可能性

2022年10月31日 19:43

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。23年3月期はコロナ禍や地政学リスクに起因する物流の混乱、原材料供給不足などによる生産・出荷の一時的な落ち込みなどを想定して減益予想としている。ただし第1四半期が半導体・電子部品関連の需要好調や市況・為替要因などで大幅増収増益となり、進捗率も高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお11月8日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。さらに商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 18年12月に摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化、19年2月にカーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月に香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月に中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。

 20年3月に子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月に子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月に空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。

 22年4月には精密コネクタ金属端子部品プレス加工のジュピター工業を子会社化した。また、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務・経理・総務・労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。22年7月には各種レーザー機器・装置の製造・販売を手掛ける金門光波を子会社化した。

 22年11月(予定)には、金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化する。EV用バッテリー向けの需要拡大が期待されるほか、グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する戦略だ。

 なお21年12月には、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始している。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。

■製造も収益柱に成長

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は商社流通60%(電子機能材22%、アルミ銅38%)で製造40%(装置材料22%、金属加工17%)だが、経常利益構成比は商社流通57%(電子機能材39%、アルミ銅18%)で製造43%(装置材料11%、金属加工31%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略により、製造(特に金属加工)も収益柱に成長している。

■高水準の投資を継続

 中期経営計画(23年3月期~25年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、25年3月期の目標値に売上高2100億円、営業利益131億円超、経常利益130億円超、当期純利益100億円超、EBITDA175億円超、ROE(株主資本利益率)15%超、ROIC(投下資本利益率)7%以上、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げた。セグメント別経常利益は、商社流通が52億円(電子材料37億円、アルミ銅15億円)で製造が78億円(装置材料24億円、金属加工54億円)としている。製造が全体の60%を占める計画だ。

 商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、財務体質の強化、人的資源の強化、ガバナンスの強化、ESG・SDGsへの取り組み強化を推進し、高水準の投資も継続する方針だ。

■23年3月期減益予想だが上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比8.7%増の1700億円、営業利益が17.4%減の91億円、経常利益が18.3%減の90億円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%減の68億円としている。配当予想は22年3月期と同額の52円(第2四半期末26円、期末26円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比26.8%増の468億37百万円、営業利益が29.0%増の39億31百万円、経常利益が21.9%増の42億51百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が11.6%増の27億18百万円だった。自動車関連が減産の影響を受けたが、半導体・電子部品関連の需要が高水準に推移し、市況や為替要因も寄与して大幅増収増益だった。

 セグメント別の利益(経常利益)は、商社流通の電子機能材事業が77.4%増の18億30百万円、商社流通のアルミ銅事業が4.6%減の9億62百万円、製造の装置材料事業が20.9%増の4億26百万円、製造の金属加工事業が3.8%減の10億37百万円だった。

 商社流通の電子機能材事業では電子部品や二次電池材料の取扱高が増加し、レアメタル・レアアースの市況上昇も寄与した。商社流通のアルミ銅事業では、半導体・電子部品や建設関連のアルミ圧延品や伸銅品が増加したが、自動車減産の影響で銅・アルミスクラップおよびアルミ再生塊の取扱数量が減少した。製造の装置材料事業では米国および中国の拠点でめっき材料の出荷が増加した。製造の金属加工事業では、半導体製造装置向け精密切削加工部品が堅調に推移し、空調機器向け金属加工部品も増加したが、精密研削加工部品が部品調達難の影響で減少、金属精密プレス部品が自動車減産の影響で減少した。

 通期予想は不透明感を考慮して据え置いている。コロナ禍や地政学リスクに起因する物流の混乱、原材料供給不足などによる生産・出荷の一時的な落ち込みなどを想定して減益予想としている。

 セグメント別利益(経常利益)の計画は、商社流通の電子機能材事業が34.5%減の28億円、商社流通のアルミ銅事業が41.0%減の12億円、製造の装置材料事業が3.7%減の12億円、製造の金属加工事業が10.2%増の38億円としている。電子機能材は半導体不足によるIT機器や自動車の生産調整の影響で減益、アルミ銅は前期の市況価格上昇の影響が剥落して減益、装置材料は原材料高の影響で減益、金属加工は半導体製造装置向けを中心とする出荷増で増益の見込みとしている。

 通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高27.6%、営業利益43.2%、経常利益47.2%、親会社株主に帰属する当期純利益40.0%と高水準だった。第1四半期が半導体・電子部品関連の需要好調や市況・為替要因などで大幅増収増益となり、進捗率も高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形だが、一方では大きく下押す動きも見られない。低PER、高配当利回り、低PBRという指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月28日の終値は1331円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS226円14銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1889円53銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約413億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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