後継者難の倒産件数、2022年は過去最多のペースに 東京商工リサーチ調査

2022年9月15日 15:53

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 東京商工リサーチが、「後継者難」倒産の状況調査を発表し、経営者の高齢化が進んでいることもあり、高い水準で件数が増えていることが分かった。

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■後継者難の倒産が増加傾向

 14日、東京商工リサーチが、「後継者難」倒産の状況調査を発表した。2022年8月に発生した、後継者不在を原因とした『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)の件数は27件。前年同月比6.8%減となり、8月としては3年ぶりに減少した。

 ただ2022年で減少した月は6月と8月のみ。例年倒産件数が増える3月には50件となるなど、22年1月から8月までの『後継者難』倒産の累計件数は、前年同期比15.9%増の276件。年間で過去最多の倒産件数だった2021年の381件を上回るペースとなっている。

■経営者の年齢は右肩上がり

 8月の倒産件数27件中、最も多かった要因は代表者の「死亡」が14件(前年同月比:30.0%減、以下同じ)。次いで「体調不良」が8件(33.3%増)、「高齢」が5件(66.7%増)となっている。

 2021年の経営者の平均年齢は62.77歳で、20年の62.49歳から0.26歳の増加。経営者の年齢は、ほぼ右肩上がりが続いているため、「事業を継続していく上の重大なリスク」であり、「事業規模を問わず重い経営課題に浮上」している。

■建設業の倒産件数は約2.3倍に増加

 産業別で倒産件数が増加したのは2産業。発生なしを含めた前年と同数が3産業、減少したのが5産業だった。最も倒産件数が多かったのは建設業の7件(前年同月比:約2.3倍、以下同じ)とサービス業他の7件(前年変わらず)。

 次いで卸売業が5件(28.6%減)、製造業が3件(40.0%減)、農・林・漁・鉱業が2件(前年ゼロ)、小売業が1件(50.0%減)、不動産業が1件(66.7%減)、運輸業が1件(前年変わらず)。金融・保険業(前年ゼロ)と情報通信業(100.0%減)では後継者難の倒産は発生しなかった。

■27件の全てが「破産」

 倒産の形態は27件の全てが「破産」だった。21年8月に2件あった内整理(私的倒産)はゼロとなったが、「破産」が大半を占める状況が続いている。後継者の育成などの準備が整っていない企業で代表者の死亡や体調不良などの不測の事態が起きた場合、消滅型の「破産」を選ぶことが多いという。

 資本金別では、個人企業を含めた資本金1,000万円未満が16件、1,000万円以上5,000万円未満が11件となっている。21年8月に2件あった資本金5,000万円以上の倒産は発生しなかった。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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