養命酒製造、国内養命酒が堅調に推移し増収増益 新中計は次の100年に向けて「両利きの経営」を推進

2022年6月7日 07:25

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記事提供元:ログミーファイナンス

目次

塩澤太朗氏:養命酒製造株式会社、代表取締役社長の塩澤でございます。本日はお忙しい中ご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日は、ご覧の内容をご説明します。

損益計算書(P/L)

2022年3月期の決算概要について、まず損益計算書のご説明をします。2022年3月期の業績については、前期に対して増収増益となりました。売上高は、国内養命酒が堅調に推移したことにより、前期比1.9パーセント増の105億7,700万円となりました。

売上総利益は、前期比4.7パーセント増の66億8,400万円となりました。営業利益は、売上原価率の改善および一部経費の節減により、前期比53.7パーセント増の9億9,600万円でした。当期純利益は、前期比17.6パーセント増の9億4,900万円となりました。

商品・サービス別売上高

続いて、商品・サービス別売上高についてです。主力の「養命酒」は堅調に推移し、前期比4.8パーセント増の84億400万円となりました。「その他商品・サービス」については、前期比10.2パーセント減の17億8,900万円となりました。

セグメントに属さない不動産賃貸・太陽光発電の「その他」の売上高は、前期比2.2パーセント増の3億8,300万円となりました。

貸借対照表(B/S)

次に、貸借対照表についてです。資産合計は、2021年3月末比で7億4,400万円増加し、486億1,400万円となりました。これは、主に保有株式時価評価額の増加によるものです。負債合計は1億2,900万円増加し、64億3,400万円となりました。

純資産合計は6億1,500万円増加し、421億7,900万円となりました。なお、自己資本比率は86.8パーセントであり、健全な財務基盤を維持しています。

キャッシュ・フロー計算書(C/F)

キャッシュ・フロー計算書についてです。営業活動の結果、増加した資金は18億600万円となりました。投資活動の結果、減少した資金は13億9,900万円となりました。これは主に債券購入および固定資産の取得による支出によるものです。

財務活動の結果、減少した資金は5億5,100万円となりました。これは主に配当金の支払いによるものです。結果として、現金及び現金同等物の期末残高は、1億4,200万円減少し、24億3,200万円となりました。

養命酒(国内)

続いて、商品別の状況についてお伝えします。国内養命酒については、プロモーションとして、新規顧客の獲得と継続飲用者の維持に向け、季節に合わせて疲れ・冷えをテーマとする草刈正雄さん出演のテレビ・新聞広告を実施し、年間を通じて好評を得ました。

店頭では、卸店やドラッグストア等、主要販売チャネルである小売店と協働し、プロモーションと連動した店頭展開や購入促進施策等を継続して実施しました。結果、コロナ禍において「養命酒」の価値が再認識されたこともあり、売上が堅調に推移し、前期比4パーセント増の80億5,200万円となりました。

養命酒(海外)

海外養命酒については、地域に合わせた広告・販促活動を実施しました。販売については、上期は船便の遅れを見越し、輸出を前倒しで実施しました。売上がコロナ前の水準へ回復傾向であることから、売上高は前期比29.3パーセント増の3億5,100万円となりました。

酒類

酒類については、取扱いアイテムの拡大に向けた販促活動やクラフトジンの販売拡大に取り組みました。結果、クラフトジンの売上がスーパーなどで増加した一方、コンビニエンスストア等で「フルーツとハーブのお酒」の売上が減少したことから、売上高は前期比15.8パーセント減の5億3,400万円となりました。

IWSC2022 銀賞受賞

クラフトジン「香の雫」と「はちみつのお酒」が、国際的な酒類品評会「International Wine&Spirit Competition(IWSC)2022」において銀賞を受賞しました。このような賞をいただけたことに感謝し、今後もよりよい商品づくりを目指してまいります。

食品

食品については、引き続き「養命酒製造クロモジのど飴」の取扱店舗数の拡大に注力しました。コンビニエンスストアでの販売が減少したことや、「食べる前のうるる酢」の郵便局でのカタログ販売が減少したことにより、売上高は前期比26.8パーセント減の5億7,800万円となりました。

リテール

リテールについては、ギフトやテイクアウト商品の販売など、引き続き各店で柔軟な営業形態の確立を進めてまいりました。「くらすわ駒ヶ根店」のリニューアルオープンがあったことや通販チャネルが堅調に推移したこと等により、売上高は前期比19.1パーセント増の6億7,600万円となりました。

前中期経営計画の振り返り

続いて、新中期経営計画についてお伝えします。まず、前中計の振り返りです。当社は、2018年4月から2022年3月までの4年間、「持続的成長に向けた事業基盤の構築」を基本方針と定め、売上高と営業利益率を重要な経営指標として取り組んでまいりました。

結果として、前々回の中期経営計画最終年度と比べ、売上高は0.3パーセント増加、営業利益率は4.4ポイント増加、売上高販管費率は4.6ポイント減少しています。なお、ただ今お伝えした増減率は、2022年3月期の各数値を収益認識会計基準適用前に直して比較したものです。

前中期経営計画の振り返り

「養命酒」については、2017年の改正酒税法の施行に伴って店頭販売価格が上昇したことによる販売数量下落傾向を下げ止めることができました。一方、成長分野として注力してきた酒類・食品については、成長性、収益性に課題を残しました。また、リテールについては、前中計期間中に店舗数を5店舗へ増加させ、既存店舗の売上についても回復傾向となっています。

外部環境認識

中長期的な環境認識としては、国内の少子高齢化の進行と人口減少、新型コロナウイルス感染症の拡大によるニューノーマルな世界への変化、世界的な不確実性の高まり等により、これまでと異なるさまざまな社会的課題の解決が企業に求められていると認識しています。

新中期経営計画(2022年4月~2027年3月) 主要方針

このような経営環境を踏まえ、新たな中期経営計画を策定しました。新中期経営計画は、計画期間を2022年4月から2027年3月までの5年間とし、当社が2023年6月に創立100周年を迎えることから、基本戦略を「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」と定めました。

「養命酒」および酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業の収益力強化による「深化」と、これまで取り組んできた「くらすわ」ブランドを中心とした新たな事業基盤の構築による「探索」を同時に行う「両利きの経営」を推進し、収益性を確保しつつ成長投資を行い、新たな企業価値の創造に取り組んでまいります。

戦略課題としては、「効率を重視した既存事業の収益力強化」「『くらすわ』ブランドを軸としたダイレクトチャネル事業の構築」「サステナビリティ経営の推進」「事業領域の拡大に向けた多様な人材活用と人的資本・知的財産等の無形資産への投資」の4つを設定しました。個別にご説明してまいります。

戦略課題-①

戦略課題の1つ目として、効率を重視した既存事業の収益力の強化を推進してまいります。「養命酒」および酒類・食品の卸売販売を中心とする既存事業においては、開発、製造、流通、プロモーションの一貫したマーケティング戦略立案部署を設置し、生活者視点に基づくマーケティング戦略の展開強化を図ります。また、デジタル技術を活用した事業展開と生産性の向上を推進してまいります。

戦略課題-②

戦略課題の2つ目として、「くらすわ」ブランドを軸としたダイレクトチャネル事業の構築を進めてまいります。商業施設を中心に展開してきた「くらすわ」について、ブランド化に重点を置き、実店舗でのお客さまとのコミュニケーションを通じて、通信販売やギフト向け販売と一体となった事業化を図ります。

その取り組みとして、駒ヶ根工場敷地内にブランドシンボルとして新たに体験型施設の建設を予定しているほか、ブランド強化とビジネスモデルの構築を目的に企業買収、業務提携の検討も進めてまいります。

戦略課題-②

今中計期間中の「くらすわ」事業化方法とステップです。第1ステップとして、まずは基盤を構築します。駒ヶ根工場敷地内への体験型施設の建設着手、M&A、提携候補先の検討の開始、商品・サービスの強化を行ってまいります。

第2ステップとして、中計3年目となる2025年3月期からを目安に体制の構築を進めます。新規店舗の出店や通販物流体制の強化を行うほか、順次行う新施設の開業もこの期間に予定しています。

第3ステップとして、中計最終年度に向けて事業の拡大を進めます。「くらすわ」をブランドとして確立させ、新施設の来場者目標を年間30万人以上といたします。また、財務目標としては、売上高100億円の達成を目指してまいります。

以上のステップを達成するため、総投資額は60億円から70億円程度を予定しています。

戦略課題-③

戦略課題の3つ目は、サステナビリティ経営の推進です。長期的な企業価値向上にとって持続可能な社会の実現は、重要な経営課題と認識しています。サステナビリティに関する基本方針及び「健康」「環境」「地域社会」「人権・ダイバーシティ」「ガバナンス」の5つの重要課題を定めました。

「養命酒」を中心とした当社商品・サービスを通じた社会的な健康の増進、駒ヶ根工場を中心とした環境負荷の低減、ゆかりある長野県を中心とした地域との共生と自然環境保全活動として、駒ヶ根工場敷地内に建設予定の体験型施設を通じた地域社会への貢献等を推進し、SDGsの理念に基づく持続可能な社会の実現と事業活動の両立を目指してまいります。

戦略課題-④

戦略課題の4つ目は、事業領域の拡大に向けた多様な人材活用と人的資本・知的財産等の無形資産への投資です。既存事業を深化させ、新たな事業領域への探索に進むためにも、人的資本は重要な経営資本であると認識しており、事業戦略に基づく人材開発と多様な人材の積極的起用による活力ある企業文化の醸成を進めてまいります。また、長い歴史の中で蓄積してきたブランド、ノウハウ、顧客基盤を含めた知的財産は、当社の企業価値を支える重要なものと認識し、より一層の価値向上と活用の強化に努めてまいります。

中計最終年度(2027年3月期)定量目標

定量目標としては、中期経営計画最終年度において売上高200億円以上、営業利益率10パーセント、ROE4パーセントを目指してまいります。売上高の内訳としては、既存事業(養命酒関連事業)で100億円以上、新規事業(「くらすわ」関連事業)で100億円としています。

財務方針

財務方針です。既存事業の深化として、養命酒関連事業の収益力強化を図りながら政策保有株式の縮減も行ってまいります。これらにより創出した資本を新規事業の探索のための成長投資に活用し、配当性向・配当下限を引き上げ、株主のみなさまに還元してまいります。

具体的な成長投資としては、ダイレクトチャネル事業構築に向けた体験型施設の建設、企業買収、業務提携等を計画しております。

通期業績(予想)

2023年3月期の見通しです。通期業績予想については、売上高は前期比3.1パーセント増の109億1,000万円となる見込みです。利益面では、営業利益は前期比1.4パーセント増の10億1,000万円、経常利益は前期比0.6パーセント増の13億7,000万円、当期純利益は前期比5.3パーセント増の10億円を見込んでいます。

商品・サービス別売上高(予想)

商品・サービス別の売上高予想については、「養命酒」全体で前期比2.0パーセント増の85億7,000万円、酒類は前期比4.8パーセント増の5億6,000万円、食品は2.0パーセント増の5億9,000万円、リテールは前期比18.2パーセント増の8億円、不動産賃貸・太陽光発電は前期比1.7パーセント増の3億9,000万円を見込んでいます。

2023年3月期の重点施策

2023年3月期の重点施策です。先ほど新中期経営計画の部分でお話ししたとおり、当社は今期より、養命酒関連の既存事業の「深化」と、「くらすわ」関連の新規事業の「探索」を同時に行う、両利きの経営を進めてまいります。

既存事業については、効率を重視し、収益力の強化を中心に取り組みます。組織再編により、一貫したマーケティング戦略立案部署として事業戦略部を設置し、生活者視点に基づくマーケティング戦略の展開強化を図ります。

新規事業については、「くらすわ」のブランド化に重点を置き、通信販売やギフト向け販売と一体となった事業化を図ってまいります。また、体験型施設の建設着手及びM&A、業務提携の検討を進めてまいります。

プロモーション(養命酒)

今期の「養命酒」のテレビCMは、引き続き草刈正雄さんにご出演いただきます。「暑くてだるくて夏を楽しめない」と悩む方に対して、「夏を乗りきってほしい」というメッセージを、「養命先生」を演じる草刈正雄さんを通してお伝えします。なお、「養命」は、当社の登録商標です。

配当方針

続いて、配当方針です。当社は、株主のみなさまへの利益還元を経営の重要課題の1つとして認識しています。財務健全性に留意し成長投資を行うことで資本効率を高めるとともに事業を拡大し、業績に応じて株主還元を強化するため、配当政策の基本方針の変更を行いました。

配当性向については、これまで30パーセント程度を目安に実施していたところ、新中期経営計画期間中は、各事業年度の業績を考慮して、当期純利益に対する配当性向60パーセント程度を目安に実施したいと考えています。

年間配当金の下限については、これまで36円としていましたところ、新中期経営計画期間中は原則として1株当たり年間配当金の下限を45円とします。今期の配当については、期末配当金として1株当たり45円を行う予定です。

今後も業績の拡大に応じた利益配分を基本としながら安定的な配当を継続することにも配慮するとともに、内部留保金については、新中期経営計画の基本方針に沿った新規事業への成長投資等のために活用してまいります。

塩澤氏からのご挨拶

最後に、一言述べさせていただきます。当社は来年創立100周年を迎えるにあたり、「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」を基本戦略として、新たな中期経営計画を策定しました。両利きの経営で、既存の養命酒事業の収益力強化と同時に、新規事業として「養命酒」に続くセカンドブランドとして「くらすわ」ブランドを構築し、新たな企業価値の創造に取り組んでまいります。

そのために、地域貢献も兼ねた体験型施設の建設等を計画しています。「中計最終年度で売上高200億円以上」と大きな目標を掲げていますが、次の100年に向けた成長戦略であり、事業構造を大きく変革する計画となりますが、全社一丸となって取り組んでまいる所存です。

みなさま方には、引き続きのご支援、ご協力をいただけますようお願い申し上げます。ご清聴いただき、ありがとうございました。

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