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宇宙での救急医療に必要な3Dバイオプリント技術 欧州宇宙機関
3Dバイオプリンティングで試作された人工骨サンプル (c) ESA-Remedia[写真拡大]
アルテミス計画での人間による月面探査ミッションは、コロナ禍の影響もあり、その進捗に大きな遅延が生じており、最短でも再び人類が月に立てるのは2026年以降の見通しだ。このミッションの延長線上には、人間による火星探査という壮大な野望が秘められており、おそらく20年後の世界はその話題で持ちきりになっていることだろう。
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火星探査のような長期間にわたるミッションで無視できない問題は、宇宙飛行士の健康管理だ。無重力あるいは低重力環境下では骨密度が低下し、骨折を起こしやすくなる。またやけどなどを起こした際には、皮膚移植が必要になる場合もある。このようなケースに宇宙船内で見舞われた際の対処手段として有力視されているのが、3Dバイオプリント技術だ。
欧州宇宙機関(ESA)は、3Dバイオプリント技術で試作された人工骨のサンプル写真を公開した。これまでにESAのR&D機関では、宇宙飛行士の骨や皮膚あるいは内臓移植に必要な「スペアパーツ」を宇宙船内で準備するための、バイオプリンティング技術の開発に取り組んできた。
ESAによると、宇宙飛行士の血液から採取した血漿(けっしょう)が、3Dバイオプリントに用いるインクの役割を果たし、宇宙船内での救急医療に活用できる可能性が高いという。
実はこの3Dバイオプリント技術は、最近ようやく地球上で実用化が始まったばかりのテクノロジーである。それを宇宙のミッションで直ちに応用していかなければ、人間による火星探査ミッションの実現を21世紀前半に達成させることは不可能なのだ。
人間による月面探査ミッションも今から50年以上前の真空管をメインとしたテクノロジーをフル活用して、大急ぎで1960年代の終了間際に間に合わせることができた偉業であった。人類という生き物は切羽詰まった時の火事場の馬鹿力的な取り回しで、偉大なるイノベーションを実現し続けてきたのかもしれない。とは言え、人類が火星に立つ日ももう夢ではない時代に我々が生きているのは、間違いない事実なのだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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