原油急落! 今後の行方は?

2022年3月11日 17:58

印刷

●急騰していた原油が急落

 ロシアのウクライナ侵攻以来、急騰が続いていたWTI原油先物は、一時1バレル=130ドルを記録したが、3月10日に約10%下落した。

【こちらも】イラン産原油が原油高に歯止めをかけるか!?

 好調だった石油関連株も下落したが、逆に日経平均は一時1000円超上昇し、値動きの激しい展開となっている。

 ロイター通信によると、UAE(アラブ首長国連邦)が石油増産を支持しているとし、OPEC(石油輸出国機構)に働きかけるという報道が下落の原因とみられている。

 イラクにも増産の動きがあるという報道もあり、石油危機を解消すべく各国が増産に動けば、供給面が改善し、原油価格の安定につながるという楽観論が働いたようだ。だが果たして事態は好転しているのか?

●米国がロシア産原油を禁輸に

 9日には米国・バイデン政権がロシア産の原油などのエネルギー輸入を全面的に禁止する大統領令に署名した。今のところ、本格的に禁輸した国はないが、今後も追随する国もあるかもしれない。

 バイデンフレーションと言われているくらい、インフレが深刻な米国にとっては、原油の高騰を招きかねない。ただし、米国のロシア産原油の輸入量は全体の約1%に過ぎず、その面では欧州とは事情が違う。

 今回の措置は、米国民の多くが支持しているとみられており、今年行われる米国中間選挙にも大きな影響が出る可能性もある。

●今後の原油価格は?

 その後、UAEのエネルギー相がOPECで減産合意している月ごとの生産量は守ると発言すると、再び原油価格は約10%近く上昇した。

 仮に増産したところで、インフレ傾向に変わりはなく、ロシアとウクライナの紛争に加えて、脱炭素化の流れもある。2年前のコロナショックのような需要激減でもないと、原油価格が下がることはあまり期待できないだろう。

 日本を含め、各国が協調して石油備蓄放出するくらいしか、今は原油価格の高騰を抑える手段はない。

 ロシアとウクライナの停戦交渉にも進展は見られず、この問題もゴールが見えない。

 目先のニュースで、高騰したり急落したりするが、あくまでそれを口実にした一時的な利益確定にしか過ぎず、慎重な投資が求められる。
(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事