テーパリングを控えコロナバブルの最終局面を象徴する3つの不可思議な値動き

2021年8月25日 07:53

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 8月18日に公開された、FRB(米連邦準備制度理事会・アメリカにおける中央銀行としての組織)によるFOMC(金融政策決定会合)の議事要旨を受け、いよいよコロナ対策としての大規模緩和を縮小する議論に入ったことが明確となった。

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 コロナバブルの終焉ともなりうるこのテーパリング公表の前から、アメリカダウ平均株価は調整を続けて下落していたが、その内容が想定内であったことから、23日現在株価は復調し、下落幅の半分程度を回復している状況だ。

 そして27日(日本時間23時)に行われる、パウエルFRB議長のジャクソンホール講演には俄然注目が集まる。議事録ではなく、パウエル議長から直接、テーパリングについての考えを知ることができる大きな機会であるからだ。(今回はコロナ禍の影響もあり、3日間の開催予定が1日間に短縮され、さらにオンライン形式となった。)

 しかしながら、リーマンショック後のQE(量的緩和政策)終了時に、バーナンキ・ショックのトラウマを経験したFRBにとっては、市場との対話には十分に留意しているはずだ。大きなショックもなくテーパリングを進めることに成功したイエレン前FRB議長(現在の財務長官)の成功事例をもとに、辛抱強く市場との対話を続けるに違いない。つまりは、市場にショックを与えない程度の発言にとどめるはずだ。

 そんな楽観的な見通しのもとで、株式市場や原油に関してはリスクオンの様相を呈しているともいえるが、一概にそうとはいえない不可思議な相場となっていることにお気づきだろうか。注目すべきは、「ゴールド」「仮想通貨」「国債」の3つの値動きである。

 「ゴールド」は「有事の金」ともいわれ、リスクオフの無国籍通貨として、リスクオンの株式市場とは逆相関の値動きとなりやすい。だが2021年の年初から年度末の3月までの逆相関の値動きとは異なり、4月から現在までの値動きはおおむね相関関係となっている。

 続いて、「仮想通貨」はコロナバブルとの象徴ともいわれているが、おおむねリスクオンの無国籍通貨という認知が高いといえよう。そんな仮想通貨も、5月の大暴落から、ビットコインを中心として半値を戻している展開である。

 そして、「米国債」であるが、「米国債」は「ゴールド」と同じく、リスクオフの代表的な資産だ。そんな「米国債」が購入され続けているため、経済過熱感によるインフレ懸念があるなかで10年債金利が上昇しないという不可思議も生じている。もっとも、大規模緩和によって金利を意図的に抑えるため、中央銀行が国債を購入している状況下であるとしても、10年債金利の動きは不可思議だ。

 つまり、リスクオンの株式市場と仮想通貨、リスクオフのゴールドと米国債がすべて購入されるという、非合理的な現状がそこにある。この状況が、まさに資金が湯水のように湧き出るコロナバブルの最終局面が作り出している状況だとすればどうだろうか。

 経済の発展を背景としたごく自然発生的で合理的な相場ではなく、人工的に作り出さされた不可思議で非合理的な相場は、例えるならば無造作に積み上げられたジェンガなのかもしれない。そこからテーパリングというピースが抜けるとするならば、積み上げられたジェンガはあっという間にバランスを失い、脆く、崩れていくのではないだろうか。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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