FIREブームは日本でも定着するのか?

2021年8月11日 07:50

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●FIREが日本でもブームに!?

 日本の書店でも「FIRE」に関する書籍が多く出版され、その名称は広く知られるようになっている。

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 欧米では20代~30代の若者の間でも、FIREを実現した人が増えており、新しい生き方として注目されている。

 会社に縛られず、お金から解放されたい。マイホームやマイカーへの憧れを持たず、消費への意欲は低めな現代の若者の価値観の変化による世界的な流れが、FIREブームを後押ししている。

 昨年から続く、コロナ禍による給付金バブル、株式相場・仮想通貨の上昇、テレワークの普及などが、早期退職・お金に縛られない悠々自適な生活への憧れを加速させたのかもしれない。

●FIREとは?達成するためのルールも?

 FIREとは、Financial Independence Retire Early の略で、経済的な自立と早期退職した生活スタイルとを実現することである。

 単に投資で成功してお金がある人ではなく、早期退職するため計画的に投資へ回すための資金を貯蓄し、退職金をもらえない想定で、老後までの資金計画を立てる。

 そのために必要なルールや資金の目安なども、書籍等で様々に紹介されている。中でもよく知られたものは、年間支出の25倍の資金を貯め、それを年利4%で運用すれば、資産が減ること無く生活出来るという「4%ルール」と呼ばれるものである。

●日本で定着するのか?危険性も?

 まず安定的に4%の利回りを得ることは決して容易ではない。日本にも2013年以降“億り人”と呼ばれる人が増えたが、その手法はリスクが高く、多額の投資をしているケースが多く、FIREのルールと相容れない。

 FIREでは不動産収入や、株式・ETFの配当金収入(インカムゲイン)を頼りにしているが、世界情勢や地政学リスクで得られなくなることもある。

 かと言って、売却益(キャピタルゲイン)を狙うなら、安定して4%の収入の前提は崩れる。

 そもそも、日米の投資にかかる税金は異なっており、米国は配当・分配金は10%で売却益は0%なのに対し、日本ではいずれも20.315%も課税される。

 日本では、低金利政策が今後も長く続くと考えられ、投資への比重に重きを置かざるを得ない。投資で勝ち続ける人というのはプロでも難しい。

 早期退職による年金が減額されるリスクや、もしもの時の保障が減らされるリスク、国民健康保険料などのコストの増大も見逃せない。退職金をもらえないリスクも大きい。

 長生き大国の日本では「25年、4%」というルールが適切なのかも怪しい。

 FIREの華やかな部分だけを見て、すぐに実践することは危険だ。まずはしっかりと自分に合ったプランを考えることが大切だろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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