小惑星帯で太陽系外延部から飛来した可能性ある小惑星発見 JAXA

2021年8月2日 07:55

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 203ポンペヤと269ユスティティアのスペクトル スペクトル波長が長くなればなるほど赤く見える。 203ポンペヤと269ユスティティアはともに太陽系外縁天体が示すスペクトルに近いスペクトルを示す。 (c) JAXA、Hasegawa et al. 2021より改変

203ポンペヤと269ユスティティアのスペクトル スペクトル波長が長くなればなるほど赤く見える。 203ポンペヤと269ユスティティアはともに太陽系外縁天体が示すスペクトルに近いスペクトルを示す。 (c) JAXA、Hasegawa et al. 2021より改変[写真拡大]

 アステロイドベルトとは、火星の公転軌道と木星の公転軌道の間に位置している小惑星が多数周回している領域を指し示す言葉で、日本語では小惑星帯とも呼ばれている。この領域において、珍しい2つの小惑星が発見されたというニュースをJAXAが報じている。

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 この2つの小惑星は、非常に赤いスペクトルを持ち、その起源が太陽系のもっとも外側の領域である可能性が高いのではないかと見られている。そのうちの1つが直径110kmの203ポンペヤで、もう1つは直径55kmの269ユスティティアと呼ばれる小惑星である。

 小惑星はS型、C型、D型などに分類される。S型小惑星は小惑星帯の内周寄りに多く存在し、C型小惑星は小惑星帯の外周寄りに多く存在する。D型小惑星は小惑星帯の外側を周回しているものが多いとされる。

 また、D型小惑星は彗星とスペクトルが似ており、水や二酸化炭素などの揮発成分を多く含有。赤っぽいスペクトルを呈するとされている。このことはD型小惑星が、二酸化炭素が固体化する温度領域で形成されたことを意味し、太陽系でもより温度が低い外周寄りの場所を起源としているものと考えられている。

 今回発見された2つの小惑星は、このD型小惑星よりもさらに赤いスペクトルを示しており、D型小惑星が形成された領域よりもさらに外縁部で形成された可能性が高いと考えられる。現に太陽系外縁部を周回する小惑星が示すスペクトルに、203ポンペヤや269ユスティティアのスペクトルは近い。そのような天体が小惑星帯で発見されたのは、太陽系の進化の歴史を探る上でも非常に興味深い出来事である。

 今回の発見は、太陽系外縁部の小惑星に関する情報収集のために、わざわざそこまで出向かなくとも、小惑星帯に存在しているより赤いスペクトルを示す小惑星を詳細に調査すれば、同様の情報が得られる可能性があることを示唆している。

 ボイジャー1号、2号が太陽圏外に到達するのに40年以上の歳月を要したことを考えれば、太陽系外縁部の天体から直接情報収集することの大変さは、素人にも容易に想像がつく。今後はそこまでしなくても、小惑星帯を辛抱強く探せば、太陽系外縁部出身の格好の生き証人がたくさん見つかるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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