東証再編動向が注目される中、2点の「?」を呈したい

2021年7月22日 16:26

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 2022年4月に予定されている、東京証券取引所「再編」の動向が注目されている。7月9日には東証1部上場企業(約2200社)に対し、東証が最上位市場と位置付ける「プライム市場(仮称)」に移行可能か否かの第1次通達を行った。「約600社が該当しない」と各メディアが報じた。判断の主たる基準は、「時価総額100億円以上」「流通株比率35%以上」「コンプライアンスの観点から社外取締役3人以上」etc。

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 こうした報に接し、私は2つの「?」を感じた。

 1つは、「ノー」と伝えられたと想像される企業の姿勢である。「OK or NO」の結果を公開しない企業が少なくない。9日付けのITmediaビジネスオンラインは非公開企業として、「Zホールディングス」「アコム」「オリエントコーポレーション」「三菱食品」「チムニー」「近鉄百貨店」を報じた。

 「プライム移行、失格企業」とされても、東証では「改善計画が提出されれば当面の間、上場の経過措置を設ける」としている。

 私がこうした事由に「?」を抱いたのは、基準が明らかになり始めるのと同時に対応策を講じていた企業もあるからだ。例えば、ZOZO。5月24日の時点で流通株式比率を35%に高めるために、以下の様な施策を明らかにした。

★創業者で前社長の前沢友作氏に「持ち株の一部取得」を申請、前沢氏から「一部売却に応じる」との回答を得た。

★最大320億円を投じ既存株主から自己株式を取得した上で、新株予約権を発行。行使された場合は自己株式にあてる。

 結果は公にされていないが「プライム移行」を切望するなら、当然打たれて良い策と言える。ただZOZOに絡んで言えば、筆頭株主で中間持ち株会社:Zホールディングスが東証からの結果を公にしていないことが気になる。

 周知の通りZホールディングスはソフトバンクグループ傘下。ソフトバンクグループの孫正義代表は、東証再編の方向が示された段階で早々に、「当社のグループ企業は全社、最上位市場銘柄となる」と公言しているだけになおさらである。

 いま1つ「?」に思ったのは、東証が示している「プライム」「スタンダード(仮称)」「グロース(同)」と既存市場との関係だ。1部からは「プライム」「スタンダード」、2部からは「スタンダード」、ジャスダックからは「スタンダード」「グロース」、マザーズからは「グロース」という枠組みである。

 そもそも東証の再編:プライム市場創設の意図は、「投資家、とりわけ外国人投資家が日本の真の優良企業に積極的に資金を投じることをフォローするため」と理解している。ならば、ジャスダック企業からプライム市場に移行する企業が出て不思議ではない。

 例えば、半導体ウェハや半導体設備向け部品を製造するフェローテックホールディングス。真空シールでは世界シェア6割を保持している。本校作成中の時価総額990億円余。社外取締役3名。流通株比率(浮動株数÷発行済み株式数)こそ35%に及ばないが、外国人持ち株比率は30%超と海外投資家への人気ぶりを示している。

 形だけ整えて「魂入れず」とならないことを、切に望みたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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