市民科学者が2つの太陽系外惑星の発見に貢献 NASAのプロジェクト

2021年6月21日 16:03

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「Planet HuntersTESS」により市民科学者によって発見された2つのガス状の惑星が、HD152843を周回しているイメージ。(Credits: NASA/Scott Wiessinger)

「Planet HuntersTESS」により市民科学者によって発見された2つのガス状の惑星が、HD152843を周回しているイメージ。(Credits: NASA/Scott Wiessinger)[写真拡大]

 NASAが広く市民に宇宙探査プロジェクトへの参加を呼び掛けていることを知っているだろうか。NASAのホームページでは、合計23の市民参加が可能なプロジェクトの情報が公開されている。今回はそれらのプロジェクトの中から、太陽系外惑星探査プロジェクトであるプラネットハンターズTESSにおいて、市民科学者が2つの太陽系外惑星発見に貢献したニュースについて紹介する。

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 NASAが6月11日に公開した情報によれば、約352光年離れた場所にあるHD152843と呼ばれる星の周りを回る2つの惑星が、市民科学者の協力によって発見されたと言う。

 そのうちの1つは海王星とほぼ同じ、つまり地球の約3.4倍の大きさで、約12日で母星の周りを周回している。もう1つはその外側を周回しており、地球の約5.8倍の大きさで、公転周期は19日から35日の間であることが判明している。太陽系のスケールで言えば、これらの惑星は両方とも、公転周期が約88日である水星の公転軌道内に収まるほど母性に近い公転軌道にある。

 TESSは、2018年4月に打ち上げられたNASAのトランジット系外惑星探査衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite)の略称だが、2018年12月に活動を開始し、世界中で2万9,000人以上の一般市民が参加している。

 太陽系外惑星を見つける手段としてこのプロジェクトではトランジット法を用いるわけだが、この方法は恒星の光度の非常に微妙な時間的変化を捉え、恒星の前を惑星が通過したことを根気よく検知してゆくものだ。この時間的な変化に周期性が見られれば、恒星の光度変化をもたらしている原因は惑星の可能性が高く、その変化量を捉えることによって惑星の大きさも推定が可能となる。

 だがこの微妙な光度変化をコンピュータで捉えるのはまだまだ困難であり、人間の目に頼ったほうが確実なため、その役割を時間に追われる科学者の代わりに市民が担っているというわけだ。

 HD152843は、質量は太陽と同等でその直径は太陽の1.5倍とのことで、今回発見された2つの惑星では、生命がいる可能性はないものと考えられるが、一般市民が太陽系外惑星の発見に貢献できることが実例として示された意義は大きい。なお、この発見については、arXivに論文が投稿され、発見者の1人として市民科学者の名前も著者に連ねられ、その情報は世界中で閲覧が可能となっている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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