諸刃の剣を振りかざすアメリカとIT巨人GAFAM+Nとの戦い (3)

2021年6月16日 07:44

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 先日行われたG7の財務省会合にて、「法人税の最低下限税率制定」と「デジタル課税の対象範囲の拡大」が合意されたが、続いて6月11日には、アメリカ議会下院議員の超党派グループによって、反トラスト法・改正案として5つの法案が提出された。

【前回は】諸刃の剣を振りかざすアメリカとIT巨人GAFAM+Nとの戦い (2)

 反トラスト法とは、日本における独占禁止法であり、もちろん、GAFAM+Nを名指しして規制の対象としているわけではないが、その内容から見れば巨大IT企業をターゲットとしていることは明らかである。

 具体的には「支配的なプラットフォームによる差別を禁止すること」、「競争上の脅威を抑えるための敵対的企業買収を禁止すること」、「自社製品を優遇することを禁じること」などであり、その対象企業の規模については、アメリカの月間利用者数が5000万人以上、時価総額が6000億ドル以上の企業だ。

 当然ながら対象企業に該当しているAmazonは、アメリカの老舗映画製作会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤーの買収に合意したばかりであり、通販サイトにおいても自社製品(Amazonベーシック)を上位に表示している。もちろん、アプリの販売価格に対して手数料を取りながら、自社製のアプリを販売するAppleも然りである。

 アメリカにおける反トラスト法の歴史は、スタンダード石油による石油市場独占に対して1890年に制定されたシャーマン法に始まった。そのシャーマン法の不備を補完するために1914年に制定されたのが、クレイトン法と連邦取引委員会法であり、これら3つの法律をまとめて反トラスト法と呼んでいる。

 しかしながら、反トラスト法が制定からすでに100年以上も経つ極めて古い法律である上、実際に反トラスト法違反として巨大IT企業が提訴された大規模な事例も、現在紛争中のきGoogle訴訟を除けば、実に約20年以上前なのである。それが、1998年にアメリカ司法省によって起こされた、Microsoftに対する提訴であった。

 提訴の内容は、PC市場において圧倒的なシェアを誇るようになったMicrosoftのWindows OSに、自社製のインターネットブラウザ「Internet Explorer」を標準ブラウザとして搭載するなどの行為が、独占的であり、消費者の利益を侵害しているというものだ。

 結果として「和解」となったこの提訴であるが、Microsoftは数年間に渡って多大なリソースを費やすことになった。その結果、Microsoftはクラウド事業において、Amazomに後塵を拝したともいわれているのだ。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

続きは: 諸刃の剣を振りかざすアメリカとIT巨人GAFAM+Nとの戦い (完)

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