ミロク情報サービスは売られ過ぎ感、22年3月期収益拡大期待

2021年4月27日 09:07

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売・サービスを展開し、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月期は特需の反動などで営業・経常減益予想としているが、再上振れの可能性が高いだろう。さらにDXの流れも背景として22年3月期の収益拡大を期待したい。株価は安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。なお5月13日に21年3月期決算発表を予定している。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービスが主力

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。

 クラウドサービス・サブスクリプションモデルへの変革を推進するとともに、企業の売上拡大・企業価値向上を支援するため、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームの構築を目指している。21年3月には中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」の販売を開始した。AI機能を拡充し、業務のDX推進をサポートする。

 20年3月期の売上高構成比は、システム導入契約売上高が63%(システム導入契約時のハードウェア14%、ソフトウェア35%、システム導入支援サービスなどのユースウェア14%)、サービス収入が31%(会計事務所向け総合保守サービスTVS7%、ソフト使用料5%、企業向けソフトウェア運用支援サービス14%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入4%、サプライ・オフィス用品など継続的な役務の対価2%)、その他が6%だった。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、20年3月期の新規企業向け売上高は19年3月期比32.3%増加、新規企業向け売上高比率は4.7ポイント上昇して28.8%となった。

 またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 2025年度に向けた経営戦略のポイントとして、既存ERP事業におけるビジネスモデル変革(クラウドサービス・サブスクリプションモデルへ)、第2の柱となる新規事業の確立(M&Aによる事業領域拡大とグループシナジー発揮)、価値創造とイノベーションへの挑戦、サステナブルな社会の実現を掲げている。

 重点施策として、会計事務所・金融機関との強固なネットワークを通して中小企業に総合的なクラウドソリューションを提供する「bizskyプラットフォーム」事業の拡大、会計事務所が中小企業のCFOの役割を担って資金繰りBPOサービスを提供できる仕組み(ファイナンス・サービス)の構築、地方創生・地域経済活性化に向けた地域金融機関とのパートナーシップ強化、事業承継支援サービスの体制強化、資本提携・M&Aなどを積極展開している。

■M&A・アライアンスを積極活用

 20年4月には組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にはフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTが、セントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化した。

 20年10月には送金アプリ「pring(プリン)」を展開するpring社と資本業務提携、20年11月にはリーガルテック企業であるリセと資本業務提携した。20年12月にはデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化した。

 21年1月には信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画した。またゼロ知識照明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。次世代ビジネス・プラットフォームの構築を目指す。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

■21年3月期利益は再上振れの可能性

 21年3月期連結業績予想(10月30日に売上高を下方、利益を上方修正)は、売上高が20年3月期比5.6%減の335億円、営業利益が15.8%減の44億円、経常利益が18.1%減の43億50百万円、親会社株主帰属当期純利益がソフトウェア評価損の一巡で39.7%増の25億70百万円としている。配当予想は、20年3月期と同額の38円(期末一括)である。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比8.5%減の249億61百万円、営業利益が30.0%減の36億05百万円、経常利益が31.1%減の36億02百万円、四半期純利益が43.1%減の19億84百万円だった。

 前年のWindows7サポート終了に伴うPC入れ替え特需の反動減に加えて、新型コロナウイルスの影響で営業・システム導入支援活動が制約を受けたため減収減益だった。なお売上減少に伴う売上総利益の減少、および販管費の増加で営業減益だが、サブスクリプションモデルの推進でストック型のサービス収入が増加したため、売上総利益率は2.6ポイント上昇した。

 システム導入契約売上高は18.0%減の144億28百万円だった。ハードウェアが25.3%減収、ソフトウェアが15.4%減収、ユースウェアが17.5%減収と、いずれも落ち込んだ。

 サービス収入は9.9%増の89億92百万円だった。サブスクリプションモデルの増加や新規顧客の保守契約の増加などで順調だった。内訳は、会計事務所向け総合保守サービスTVSが8.1%増収、ソフト使用料収入が25.3%増収、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が8.7%増収、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが5.7%増収、サプライ・オフィス用品が5.8%減収だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高79億32百万円で営業利益9億92百万円、第2四半期は売上高85億90百万円で営業利益14億97百万円、第3四半期は売上高84億39百万円で営業利益11億16百万円だった。

 第3四半期累計の進捗率は、売上高が74.5%、営業利益が81.9%、経常利益が82.8%、純利益が77.2%だった。利益進捗率が高水準であり、通期利益予想は再上振れの可能性が高いだろう。さらにDXの流れも背景として22年3月期の収益拡大を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は年初来安値を更新して下値支持線を割り込んだ形だが、売られ過ぎ感を強めている。出直りを期待したい。4月26日の終値は1911円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS83円78銭で算出)は約23倍、前期推定配当利回り(会社予想の38円で算出)は約2.0%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS615円97銭で算出)は約3.1倍、時価総額は約665億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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