日生もいよいよ少額短期保険に参入、その背景

2021年1月18日 16:03

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 7日付けの共同通信が『日本生命がミニ保険新会社設立へ 柔軟な商品設計で顧客開拓』と題し、日生が少額短期保険(ミニ保険)の新会社を設立の意向だと伝えた。改めるまでもないがミニ保険は、2006年の保険業法一部改正で登場した。契約(更新)1-2年、保険金額上限1000万円という枠組みの生損保である。

【こちらも】人気を集める少額短期保険 種類も豊富に さらに拡大か

 私は19年7月28日の企業・産業欄に、『人気を集める少額短期保険 種類豊富にさらに拡大か』という記事を投稿した。共同通信の配信で、日生の清水博社長は「長生きすればするほど多様な(保険:注筆者)ニーズがでてくる」としている。

 まさにその通りだ。従来の生損保商品では対応しきれない需要を満たす、ユニークな商品がミニ保険の世界では登場している。詳細は前記の拙稿にも記しているので参考にしてほしい。

 実は、ミニ保険新会社設立は日生が初めてではない。生保業界では既に昨年、第一生命が「若者の生保離れに対応するため、ネット完結の商品開発を進める」として設立している。

 異業種からの参入も少なくない。例えばHISの「お天気保険」。旅先での雨に所定の時間見舞われた時に、旅行代金を還元する(損害)ミニ保険。保険料は旅行会社が支払い、旅行会社は「割引」などの名目で旅行者に旅行代金を払う枠組み。

 日生が立ち上げる新会社がどんな商品をラインアップしてくるか注目したい。かつ他の大手・中堅生保の動向に着目したい。

 ところで、いわゆるミニ保険とは枠組みは異なるが12年1月に東京海上日動火災から「超ミニミニ保険」ともいえる商品が販売されている。その名も『ちょい乗り保険』。当時、元日生の広報室長でニッセイ同和火災の副社長に転じていた石村博氏の「(若者の自動車保険加入を促す入口として)そうか、その手があったか」という言葉が未だ耳に残っている。以下のような商品だ。

★24時間・保険料500円からの「1日」自動車保険。

★当該車の保険対象になっていない家族が家主名義の車を使用する際や、友人名義の車を借りて使う時に利用できる自動車保険。

★「対人賠償責任」「対物賠償責任」「ロードアシスト(故障時等の車両移動)」が担保されている。

★車を事故等で故障させた場合の復旧(修理)費用や、事故等に係る弁護士費用を特約としてつけることも可能。

 当時、東京海上日動では「車離れが進む若者層への対応策の入口になれば」とした。販売件数(保険料総額)は公にされていないが、「相応の実績を残した」とされている。

 既存の生損保が「少子高齢化」「保険離れ」という時流の中で、「泰然自若とはしていられない」事情が透けて見える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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