関連記事
火星[写真拡大]
地球の自転軸はチャンドラー・ウォブルと呼ばれるごくわずかな揺らぎがある。これは約433日で0.7秒、距離に換算すると3ないし6mという非常に微小な不規則変動である。この現象は1891年にアメリカの天文学者セス・チャンドラーによって発見されたものだが、どうやら地球だけが持っている特別な性質ではないらしい。
【こちらも】かつて存在した火星の磁場の詳細を明らかに ブリティッシュコロンビア大の研究
アメリカ地球物理学連合AGUの会報EOSに公開された情報によれば、火星にも同じような自転軸の揺らぎがあることが、世界で初めて発見されたという。しかも、その揺らぎの量はたったの10cmという非常に微小なものだ。
研究は、カリフォルニア工科大学やベルギー王立天文台により行われ、火星探査機による18年に及ぶ観測データの分析で判明したものだ。火星の極は、表面上では約207日の周期で、平均回転軸から最大10cm揺らいでいることが明らかになった。チャンドラー・ウォブルという現象は、回転する物体が完全な球体ではない場合に生じる現象で、質量分布の不均衡が原因となっている。
チャンドラー・ウォブルは、理論上は時間の経過に連れて減衰してゆくはずの現象であるが、地球の場合、海水と大気圧の変動による影響により、誕生から46億年が経過した現在でも残っているのである。だが、火星のそれは惑星の形状と内部状態に起因するもので、地球における海水や大気などの運動によってもたらされるものではないことが判明している。地球に比べて火星の自転軸の揺らぎが極めて小さいのもそのためだろう。
火星のチャンドラー・ウォブル現象は、回転体のサイズから見れば非常に微小なものだが、地球のそれとは発生メカニズムには明らかな違いがある。これは火星の内部のマントル特性によってもたらされていると科学者たちは推論しているが、この自転軸の揺らぎを研究していくことで、火星のマントルの温度や組成に関する新しい情報が得られるかもしれない。
コマ回しで回転速度が落ちてくると回転軸が揺らぎ、やがて回転が止まってしまうという一連の動きを私たちは経験的に知っている。コマではだんだん揺らぎ量が大きくなって、回転を維持できなくなり停止してしまうが、地球も火星も自転軸の揺らぎ量は惑星の直径と比較すれば極めて微小で無視できるほど小さい。したがって自転がいつか止まってしまうのではという心配は杞憂に近いのだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
関連キーワード火星
スポンサードリンク
スポンサードリンク
- 国際宇宙ステーションに太陽電池パネルを増設、打ち上げは2021年から 1/22 18:41
- NASAの超大型ロケット「SLS」、エンジン燃焼試験に挑むも予定時間に達せず停止 1/21 09:11
- 早大ら、きぼう実験棟の「CALET」で高精度のスペクトル硬化を観測
1/20 17:38
- 明らかにされた火星の氷河の形成メカニズム カリフォルニア大学の研究
1/20 09:04
- 太陽系外で木星や土星よりもはるかに低密度の惑星を発見 モントリオール大
1/19 15:36
広告
広告
広告