かつて存在した火星の磁場の詳細を明らかに ブリティッシュコロンビア大の研究

2020年5月5日 08:13

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 火星は以前から、地球以外で生命の存在が期待される最有力候補であったが、火星表面での生命の存在については絶望視している科学者も多い。その理由は、地球ほど強い磁場が火星には存在していないからだ。

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 磁場は、太陽風や宇宙からの放射線の影響から、大気や海水を守る作用がある。地球では磁場がずっと存在し続けているために、現在も様々な生命が生きていくのに十分な大気と水が地表に維持されている。

 いっぽう火星では、地球ほどの磁場が存在しておらず、気体分子も液体分子も太陽風や放射線の影響を受けて分子が破壊され、徐々にそれらが宇宙空間に飛散。現在の大気は非常に希薄で、表面に液体としての水分は存在せず、かろうじて氷が残っているに過ぎない。

 だが、かつて火星にも強い磁場が存在していた時期があったらしい。5月1日にアメリカのサイエンスアドバンス誌で公開された、ブリティッシュコロンビア大学の研究者たちの論文によれば、今から45億年前と37億年前の2つの時代に強い磁場が存在していたのだという。

 惑星の磁場が発生するメカニズムは、惑星内部に存在する高温の液体化した金属が流動することによる。自転車のダイナモ発電機では、磁石が回転して電気が発生するが、電荷を帯びた金属が惑星内部を回転することで磁場が発生することを、ダイナモ効果と科学者たちは呼んでいる。

 地球ではこのダイナモ効果が今も作用し、磁場が存在し続けているが、火星ではこのダイナモ効果が現在はほとんど消失してしまっている。

 火星の磁場の歴史を解明するには、磁場が存在していたころに磁化された岩石を調べ、その形成時期を明らかにすればよい。2013年に打ち上げられたNASAの探査衛星MAVENが火星の135km上空を周回しており、火星表面のあらゆる微弱な磁気データを収集している。今回、このデータを詳細に分析したところ、45億年前と37億年前の2つの時代に磁場が存在していたことを突き止めたのだ。

 従来は火星の上空400kmを周回する衛星のデータしかなく、そのデータでは39億年前には火星の磁場は消失し、それ以降、磁場が存在した痕跡は確認できなかったため、火星は誕生して間もなく磁場が消失したと考えられてきた。だがMAVENによる、より精密なデータで37億年前にも磁場が存在していたことが明らかになったのだ。

 火星表面は生命にとって過酷すぎるため、その存在については絶望視する科学者は確かに多い。だが、火星表面から少し内部に目を転じれば、氷として水が大量に存在し、太陽風や放射線からの悪影響を免れて、生命が進化し続けてきた可能性に期待をかけている科学者が多いことも事実である。今回の発見が火星における生命の誕生と進化を後押しする強力な説明材料となることに期待したいものだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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