決算数字を分析しても出て来ない、トヨタの強さの源泉は「現場力」? (3)

2020年11月21日 17:09

印刷

 現在、「トヨタかんばん方式(欧米名:リーン生産方式)」は世界の製造業で取り入れられており、キヤノンが成功した「屋台(セル生産方式)」の応用も進んでいる。そのため日本経済の切り札にならずに優位性が保てないとなると、GAFAなどのIT産業との競争力を持つことは容易ではない。しかし、自動車がスマホに替わって電子化が進んでいくことは、トヨタにとっても日本経済にとってもチャンスと言える。

【前回は】決算数字を分析しても出て来ない、トヨタの強さの源泉は「現場力」? (2)

 それは、「機械仕掛け」と「制御ソフト」のつなぎが、テスラが苦戦したように問題点として存在し、制御ソフトのプログラム通りに機械仕掛け部分を作動させるには、日本が得意とする高度な加工技術と生産技術が必要となってくるからだ。

 インダストリー4.0(第4次産業革命)が進んでいくと、受注窓口としてのソフトの関与が主体であると勘違いしやすい。だが、「生産手配」においてはAIを使った「混流生産・多種少量生産」は当然として、世界の生産拠点を結んで「スイング生産」や「順序生産」が必要となってくる。

 そのとき必要なのが、サプライヤーも含めた開発体制であるのだ。そこで、トヨタの「下請け制度」と、欧米が基本とする「サプライヤー体制」とどちらが有利であるのかが問われてくる。現在のところ、日本式「下請け制度」に軍配が上がっている。

 だが、下請け制度を見ていると、「親分」の親会社が下請けをいじめて利益を独り占めしている実態が見受けられる。そうした実体の中で筆者も仕事してきたが、一方、楽な面として「営業努力」が省けることがある。

 メーカーの営業施策に比較すると、極めて少ない範囲で営業が成り立つことが下請けのメリットであり、営業職をかなり省けるメリットでもある。こうした間接員の少なさが下請けのメリットであり、コストが低い原因でもある。

 しかし親分子分の関係で無理な要求もあるのが事実だ。だがそれは、全産業共通であろう。「筆頭株主」「主たる取引先」を持つと「パワーハラスメント」は避けられず、その代わり「安定する」確約がある。

 したがって、『トヨタの強さの源泉は「現場力」のみ』とすることには疑問が生じる。現場力が強いことは確かなのだが、現場力だけで成り立つ強さではありえない。トヨタが「スマートシティ(ウーブンシティ)」を計画しているが、こうした戦略的な長期ストーリーを描ける「創業家経営」の強さも見逃せない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事