ソフトバンクGが経営方針を転換? 群戦略よりも投資会社か?

2020年11月13日 16:39

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 ソフトバンクグループ(SBG)が9日に公表した20年4~9月期の中間決算は、連結最終利益が1兆8832億円と前年同期比で4.4倍になる好調なものだった。それを受けた9日の株価は、終値で361円高の7081円をつけ、いよいよ反転かと期待を抱かせたが、翌10日には利益確定と思われる売りが膨らみ、終値で335円安の6748円となった。9日の上昇分の90%が1日で萎んだことになる。

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 SBGの決算は振幅が激しい。つい半年前の20年3月期の決算では巨額の最終赤字を計上する苦境に陥ったため、手元資金を厚くする目的で資産売却を進めていた。結果、米携帯大手のTモバイルUS、通信大手のソフトバンク、虎の子のアリババ等の保有株式について一部を売却して、目標とする4兆5000億円を大きく上回る5兆6000億円を調達した。

 孫正義社長は「群戦略」を遂行することが信念であるかのように、かねがね公言して来た。SBGのHPには「群戦略」を説明するコーナーがあり、翻訳すると「一定の分野で優秀な技術やビジネスモデルを有する様々な企業が、それぞれ独自に意思決定しながらも、資本関係と同志的な結合によりシナジー効果を発揮しながら、共に進化し成長続けようとすること」と綴られ、300年継続する企業を目指すとしている。

 確かに10兆円ファンドとして度肝を抜いたソフトバンク・ヴィジョン・ファンド(SVF)には、群戦略を思わせる投資傾向が見られる。今後の成長が見込める同一業種の複数の企業に投資すれば、成長企業を捕まえる確率が向上する。今までの投資会社にはなかった発想だから、斬新な印象を与えてもいた反面、やや節操がないと見る向きもあった。

 ところが、8月には米大手IT企業の株式を積極的に取得していることが報じられ、さらに英半導体設計大手のアームを売却することが伝えられた。SBGがアームを買収したのは16年だ。孫正義代表が、アームを長年焦がれる恋人に例え、SBGのグループにとっての「未来を見通す水晶玉」とまで表現して獲得した。

 それが一転して、「ここまで良い条件なら、売却を検討しなければならない」との心変りがあった。売却を決意させたのは最大400億ドル(約4兆2000億円)という売却金額だったというが、16年に購入した時の金額が約3兆3000億円だから、差引9000億円の儲けということになる。

 並みの会社なら、売却益に目がくらんでしまう気持ちも分かるが、アリババで膨大な含み益を抱えているとされるSBGには、いささか似つかわしくない判断と感じるのは、どうしてだろう。

 10日には「ペッパー」で知られるヒト型ロボットの開発会社で傘下の米ボストン・ダイナミクスを、売却することが報じられた。売却金額は1000億円を超えるようだが、SGBは公式のコメントをしておらず、真相はいずれ明らかになるだろう。

 ペッパーからソフトバンクを連想する我々のレベルでは、変転を続けるSBGを理解することは難しい。たとえ正解であろうとなかろうと、孫社長の一挙手一投足が注目を集めるのは、その言動が想定外だからだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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