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イギリスのオープンアクセス科学誌BMCで、国際宇宙ステーション(ISS)で展開されているたんぽぽ計画の活動成果のひとつとして、非常に耐性のある細菌デイノコッカス・ラジオデュランスを、ISSの外で1年間暴露した実験の結果が公開された。
【こちらも】ISS外側に微生物を3年晒す実験、数%が生存 宇宙空間を生命が移動する説補強
たんぽぽ計画とは、生命の起源は地球外にあるとするパンスペルミア説を検証するためのミッション。ISSの日本実験棟「きぼう」の船外に「エアロゲル」という寒天状の捕集材を設置し、宇宙空間で漂うアミノ酸を始めとした有機物などの生命の「種」を、地球上で浮遊するたんぽぽの種に例え、それを探索することが目的だ。
今回公開された論文によれば、宇宙空間に1年間暴露された細菌の細胞には、形態学的損傷は見られなかったという。だが多数の外膜関連小胞の蓄積が観察されており、これは宇宙空間に曝されたことによる細胞ストレスを軽減するための反応であるという。
外膜関連小胞とは、細胞での合成産物の貯蓄、細胞外への物質輸送、物質の消化などの機能を持つ小胞が、細胞膜と融合したもの。この蓄積は、放射線によって損傷を受けたDNAを修復する反応の表れであるとしている。
デイノコッカス・ラジオデュランスの宇宙放射線に対抗する生命反応は、200ナノメートル未満の放射線が存在しない宇宙空間において、少なくとも1年間は生き延びられることを証明して見せた。この事実は火星の表面において、大気の主成分である炭酸ガスが、190ナノメートル未満の放射線をシールドする効果をもたらすため、この細菌が生き延びられる可能性があることをも示唆している。
ただし、地球上で脱水状態の環境下に1年間曝された場合の生存率と、宇宙空間に暴露された生存率には明らかに有意差があり、地球上で脱水状態の環境下に曝された場合の生存率が90%もあったのに対して、宇宙空間での生存率は数%にしか及ばなかった。つまり耐性の強い細菌であっても、大気が存在せず、宇宙放射線に曝される宇宙空間で生き延びられるのは、生命力の強い数%の個体に限られるというわけだ。
この研究の結果は宇宙空間でも生命が生き延びられる可能性を示唆し、パンスペルミア説を条件付きで肯定する証拠を提供してくれたが、肝心の生命の起源が地球以外のどこかにあり、それが宇宙から地球に飛来したと結論付けるためには、まだまだ証拠が足りない。ただ宇宙から生命の種が飛来した可能性が否定できないことは、紛れもない事実である。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
関連キーワード国際宇宙ステーション(ISS)、細菌
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