JAXA、光データ中継衛星を11月29日打ち上げへ 大容量・高速通信衛星システム実現

2020年11月2日 17:03

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月30日、光データ中継衛星を種子島宇宙センターから11月29日に打ち上げると発表した。

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■JAXAが開発する光衛星間通信システム

 JAXAが打ち上げ予定の衛星には、光衛星間通信システム(以下、LUCAS)が実装されている。地球観測衛星は地球の高度400~800キロメートルの低軌道から、電波や可視光、赤外線等を捉えるセンサーで観測を実施する。

 これに対し、光データ中継衛星は地球の高度36,000キロメートルの静止軌道上を維持する。LUCASでは、地球観測衛星と静止衛星間のデータ中継を、波長1.5マイクロメートルのレーザ光を用いて光通信を実現する。これにより、地球観測衛星が取得した観測データは光データ中継衛星を経由し、地上へと送信される。

 低軌道上の地球観測衛星から直接地上に観測データを送信する場合は、通信時間が地球を1周する約90分のうち10分程度しか割り当てられないが、静止軌道上の光データ中継衛星を経由することで、通信時間を大幅に伸ばすことができるという。

■Society5.0時代の光通信技術

 データ中継衛星の歴史は古い。最初に実用化されたのが、米航空宇宙局(NASA)が1983年に打ち上げたデータ中継衛星TDRSだ。データ通信には波長の長い電波が用いられている。JAXAもまた電波を用いたデータ中継技術衛星「こだま」を開発し、運用した実績がある。

 光衛星通信技術は電波によるデータ通信に代わる技術だ。2009年まで運用された光衛星間通信実験衛星「きらり」を経て、今回光衛星通信技術の実用化にこぎ着けた。こだまの通信速度は240Mbpsだったが、LUCASは1.8Gbpsの通信容量をもち、通信速度は7倍以上に高速化されるという。これにより、日本政府が提唱するスマート化社会「Society5.0」時代の高速通信衛星システムの実現が期待される。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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