30億年前に天の川銀河へ矮小銀河が衝突 痕跡を発見 米レンセラー工科大

2020年10月22日 15:16

印刷

おとめ座付近にある多数の恒星によるシェル状構造 (c) レンセラー工科大学

おとめ座付近にある多数の恒星によるシェル状構造 (c) レンセラー工科大学[写真拡大]

 米ニューヨーク州トロイにあるレンセラー工科大学は20日、30億年前に、私たちの天の川へ矮小銀河が衝突した痕跡を見出したと発表した。レンセラー工科大学は日本ではあまり聞きなれない名前だが、1824年に英語圏で最初に設立された由緒ある技術系大学である。

【こちらも】太陽系は銀河同士の衝突の産物だった? 欧州宇宙機関の研究

 2020年5月、欧州宇宙機関(ESA)は、太陽系の起源が57億年前に起きた、いて座の矮小銀河の衝突によることを示唆する情報を発表している。

 この時に報じられたのは、太陽を中心とした半径6500光年の宇宙空間内にある星の光度、距離、色を調べた結果、57億年前、19億年前、10億年前の3度にわたり、星形成が促進されていた時期があることが判明したという事実である。さらにこれとほぼ同じタイミングで、いて座の矮小銀河の衝突があり、57億年前の衝突が私たちの太陽系の形成と深いかかわりがあるのではないかと報じられていた。

 レンセラー工科大学の今回の発表では、矮小銀河の衝突時期は約30億年前であり、太陽系の起源となった衝突とは全く別の事象だ。だがこのことは、銀河どうしの衝突が、宇宙の歴史の中では比較的頻繁に起きていたという事実を物語っている。

 またこの矮小銀河の衝突は、銀河系中心付近で起きており、20年前におとめ座近くの宇宙空間で発見された、多数の恒星によるシェル状構造が形成された原因であるとしている。

 このシェル状構造を構成する恒星には、奇妙な特徴がある。というのも一般的に星団を形成する恒星は協調して移動することがわかっているが、このシェル状構造では、あるものは地球に接近する方向に移動し、あるものは遠ざかる方向に移動しており、これらの星たちの移動速度は様々な様相を呈している。

 このような奇妙な事象を引き起こした原因が、約30億年前に起きていた銀河系中心部での矮小銀河の衝突だったと言うのだ。矮小銀河は銀河系の中心を通過したが、その直後、銀河系の重力によって引き戻され減速し、再び自身の慣性によって銀河系から遠ざかり、また同様に銀河系の重力によって引き戻されるという動きの繰り返しが、シェル状構造を構成している星々の奇妙な動きを生み出したのである。

 銀河系でのこのような奇妙な動きをする恒星のシェル状構造は、これまでに複数の存在が特定されている。これらを構成している星々の多くは銀河系が起源ではなく、銀河系外の矮小銀河を起源としている可能性が高い。その意味では、私たちの天の川は移民であふれているとも言えよう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事