太陽系は銀河同士の衝突の産物だった? 欧州宇宙機関の研究

2020年5月26日 08:03

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いて座の矮小銀河の銀河系への衝突事件のイメージ図 (c) 欧州宇宙機関(ESA)

いて座の矮小銀河の銀河系への衝突事件のイメージ図 (c) 欧州宇宙機関(ESA)[写真拡大]

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 欧州宇宙機関の研究者たちによって、私たちの故郷である太陽系が実は銀河系とそれ以外の別の銀河が衝突した結果、誕生したのではないかという仮説が、5月25日に英国Nature Astronomyで発表された。

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 一般的にはあまり知られていないことだが、この宇宙において恒星の密集度と比較すれば、銀河同士の密集度は桁違いに高い。したがって、これまでの130数億年に及ぶ宇宙の歴史の中では、銀河同士の衝突は日常茶飯事のように繰り返されてきた。また、最終的に宇宙はすべての銀河が衝突を繰り返した結果、たった1つの銀河だけになってしまうと主張する科学者さえいるのだ。

 今回、太陽系を誕生させるきっかけになった張本人は、いて座にある矮小銀河だ。いて座と言えば夏の夜空に輝く、銀河系の中心方向にある星座で、夏の明るい天の川にどっぷりとつかっている存在である。つまり太陽系から見て銀河系の中心方向に、銀河系とは別の矮小銀河が存在していることが確認できるのだそうだ。

 矮小銀河とは小さな銀河を意味する言葉だが、銀河系には伴銀河(銀河系の周りを公転している小さな銀河)がいくつか存在し、有名な大小マゼラン雲もこれに含まれている。いて座矮小銀河は、銀河系の千分の1の質量で、半径5万光年の公転軌道を持ちながら銀河系の周りを周回している。

 この銀河は、かつては我々の銀河系とは独立した存在であったことだろう。それが時間の経過によって銀河系の重力に捉えられ現在の状況がもたらされたのだ。

 銀河系の直径は10万光年、いて座の矮小銀河の直径は1万光年で、銀河系から見ればこの矮小銀河のスケールは小さく、衝突を受けたとしても粉々になってしまうことはなかったわけだ。欧州宇宙機関では宇宙探査機ガイアによって、これまでに約10億個の恒星の距離や固有運動について調査してきた。それによれば、いて座矮小銀河はこれまで3度にわたって銀河系との衝突を起こしていたことが判明しているという。

 これらの衝突は今から57億年前、19億年前、10億年前の出来事であったが、57億年前の衝突事件が、今から50億年前の太陽系誕生のきっかけになったのかもしれないという。矮小銀河の衝突は銀河の星間物質の濃淡を引き起こし、星間物質濃度の濃い領域で太陽系誕生したのではないかという仮説は説得力がある。

 それにしても宇宙で起こっているドラマには、まだまだ私たちが知らないシナリオがたくさん隠されている。現在私たちは新型コロナウィルスに振り回されて生きているが、これもまた宇宙のシナリオのごく一部である。だが、太陽系がもしも誕生していなかったならば、私たちが現在経験しているドラマも存在しなかったわけである。人類も新型コロナウィルスも皆、57億年前の矮小銀河の衝突がなかったら、歴史に名を刻むことはなかったわけだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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