「出前館」が向かう方向は不動!

2020年9月24日 16:58

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『出前館』のシェアリングデリバリー旗艦拠点となる大島新拠点の完成イメージ。(画像: 出前館の発表資料より)

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 9月8日の企業・産業欄に、『活況を呈する宅食事業の現状と今後』と題する一文を投稿した。中で出前館の今日を牽引した中村利江会長が「(加盟店数はコロナの影響もあり増えているが)肝要なのは、これを今後にどう生かすべきかかが課題だ」とし、実際に始めている新しい枠組み「出前館KUROMORI」が稼働していることに言及したと記した。

【こちらも】活況を呈する宅食事業の現状と今後

 実は私が中村氏と話をしたのは8月20日の午後4時からである。「いいタイミングで機会を得た」と踏んでの取材だった。

 8月18日、某TV局の電子版が「出前館、同業大手ウーバーイーツの買収を検討」と伝えた。対して出前館は、「事実無根の内容であり、当社が公表したものではない」とした。だが株価はこれを材料視した。出前館の17日の終値は1992円。それが18日には2070円/19日には2444円まで買われていた(20日の終値は2152円。ちなみに9月1日には年初来高値2880円をつけている)。

 勿論、中村氏から公式見解以上の言葉が聞かれるとは思っていなかった。そこで、こう問うてみた。「株価は市場が決めること。だが私は、株価は企業の通信簿だとも認識している。アナリストが算出するIFIS目標平均株価1800円にとどまっている。時価をどう捉えるのか」と。返ってきた答えは、興味深かった。「当社はベンチャー企業。時価は(投資家の)期待値だと認識している。応えるために何をやるかが大事」。

 周知の通り3月26日、LINEが出前館への追加出資を発表。筆頭大株主となり、代表取締役社長が送り込まれてきた(第2位株主は中村氏。6月に代表取締役会長に就任)。この折も660円(26日の終値)だったものが、31日には1060円に上昇している。投資家が出前館に「節目を感じている」と見るのが常套だと思う。

 が、取材を進めていくうちに、口にこそしなかったが中村氏の胸の内には「だからなに」という重い想いがあると感じた。今回の取材に当たり、諸々資料を繰った。某TV局で中村氏と論を交わした作家の村上龍氏が「取材後記」として、「LINE参入の話を振ったが、“なんでそんなこと聞くの”という顔で“投入された資金は設備投資に回す”とキッパリ。彼女は出前の申し子だ」と記していた。

 中村氏は出前館の推移を、読み切っている。LINEは来年3月を目途に、ソフトバンクグループ(SBG)傘下のZホールディングスと経営統合する予定だ。ウーバーイーツの米国本社ウーバー・テクノロジーズにはSBGが出資している。出前館・ウーバーイーツ・Zホールディングスは、SBG内の親戚関係となる。

 だが出前館が果たすべくは「宅配業者」としての拡充でしかありえない。中村氏の脳裏には、それしかない。かつて社長を引き受けた際に知略を巡らし、赤字企業の黒字転換を果たした。宅配の「申し子」は不動である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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