加齢による記憶力低下、ソフトウェアプログラムの理解を遅らせる 近大の研究

2020年9月18日 06:56

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ソフトウエア技術者の能力と加齢との関係(画像:近畿大学の発表資料より)

ソフトウエア技術者の能力と加齢との関係(画像:近畿大学の発表資料より)[写真拡大]

 経済産業省が2016年にまとめた「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、大型のIT関連投資の伸びや情報セキュリティなどへの需要の増大などから、IT人材の不足にわが国が直面しているという。2015年の段階でIT人材が約17万人不足しているが、この不足規模が拡大するだけでなく、IT人材の高齢化が予想されている。近畿大学は17日、ソフトウェア技術者は加齢により記憶力が低下することで、プログラムの理解が遅くなることを明らかにしたと発表した。

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■喫緊の課題であるソフトウェア技術者の人材確保

 ソフトウェア開発の人員不足により、技術者の確保が喫緊の課題になっている。少子高齢化が進むなか、中高年の技術者を活用することがひとつの解決法となりうる。その一方で、加齢による認知能力の低下が中高年技術者活用の障害となる。

 近畿大学の研究グループは、ソフトウェア技術者の能力と加齢との関係を調査するために、記憶力に注目。加齢による記憶力の低下が特定のプログラムを理解する時間に与える影響を調査した。プログラムの理解と大きく関連する「保守」と呼ばれるプログラム修正作業について、研究グループは実験を実施。

■記憶力低下を補うソフトウェア開発に期待

 22歳から24歳までの若年グループ24名と、33歳から64歳までの中高年グループ8名の2つのグループに対し、「記憶力の違いが理解する時間に影響しやすいプログラム」と「記憶力の違いが理解する時間に影響しにくいプログラム」を使い、理解するのにかかる時間が計測された。その結果、中高年の技術者は、記憶力の違いが理解する時間に影響しやすいプログラムの理解に時間がかかったことが判明した。これは、記憶力を必要とする場合だけ理解する時間が延びることを示唆するという。

 本研究成果により今後、記憶すべき事柄を自動的に記録するなど、中高年のソフトウェア技術者の記憶力低下を補足するソフトウェアの開発が必要だろうとしている。

 研究の詳細は、電子情報通信学会の英文論文誌IEICE Transactions on Information and Systemsにて17日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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