暗黒エネルギーは宇宙空間にまんべんなく浸透か ハワイ大学の研究

2020年9月3日 17:11

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 私たちの宇宙は過去20年間の観測により、現在も膨張を続け、しかもそれは加速度的に進行していることが明らかになっている。しかしながらこの加速度的膨張のメカニズムは、いまだに解明されていない。

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 科学者の多くは、観測網に引っかからない暗黒エネルギーの存在を仮定し、その質量の見積もりを行ってきた。その質量は、観測網で捉えることができる物質の質量をはるかに上回り、それが一体どんな形態で宇宙のどこに存在しているのかは、疑問のままであった。

 そんな状況の中で、米Astrophysical Journal誌に9月1日に公開されたハワイ大学の論文では、宇宙の加速度的な膨張を引き起こしている張本人である暗黒エネルギーの存在形態について、画期的な仮説が示された。

 もともとこの仮説を導き出すきっかけになったのは、従来のアインシュタイン方程式から宇宙の膨張モデルを導出する際に、誤りが存在していることをハワイ大学の研究者が見出したことに端を発している。

 宇宙が誕生して間もないころ(宇宙年齢の2%未満)に誕生した古い星の多くが、その寿命を全うした際に残骸としてGEODEを形成したという仮定の下で、アインシュタイン方程式を改めて解いた。GEODEとは、Generic Object of Dark Energyの略で、暗黒エネルギーからなる天体を意味する用語である。

 結果、GEODEは急速回転をはじめ、相互に反発し合い、銀河が存在しない空洞領域にまんべんなく散らばっていった可能性があることを見出したのだ。

 これまでは質量の大きな恒星が寿命を全うした後には、ブラックホールが形成されると考えられてきたのだが、実はすべてがブラックホールになるのではなく、一部はこのGEODEになるのだという。

 つまり宇宙が誕生して間もないころに存在していた無数の巨大恒星のなれの果てとして、GEODEが宇宙空間にまんべんなくばらまかれた。その残骸が銀河以外の宇宙空間に広がり、それが宇宙に大量に存在すると見積もられている暗黒エネルギーの正体ではないかというのである。

 また2016年に重力波が観測されたブラックホールどうしの衝突とみられていた現象も、数値解析シミュレーションで導出される質量と観測値が一致しない問題があった。これもGEODEの衝突と仮定すると、数値解析シミュレーション質量は観測値に一致し、このことがGEODE存在の間接的な証拠となっている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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